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15:任務

僕はジェラルと話し合いの場を設け、この屋敷にやってきた本来の目的を果たす事が出来た。
そう、先日のスラム街の出来事を含め、以前レッドバルト家の別荘で巻き込まれた妖精密猟事件について、色々と言いたい事、聞きたい事がある。


「これを見てくれ」

僕は、虫かごに入れて持って来ていた丸頭の妖精を、ジェラルの前に出した。

「ほお……妖精じゃないか。妖精を捕まえたのか?」

「違う。これは、二日前の夜にスラム街で暴漢に襲われた後、家に戻ってベルルのドレスにくっ付いていたもmcm バッグ 激安
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のを見つけたんだ。その時は酷く怯えていて、ベルルに対し何か必死になって訴えていた。ベルルは妖精の申し子だからな……」

「………なるほど。その妖精はスラム街から付いて来たと言う訳か。いったい奥方を頼って、何を訴えていたと言うんだ」

「………」

僕は昨日の朝、レーンに通訳してもらった言葉のメモを取り出した。


『暗いよ怖いよ。真っ黒の四角い箱の中に詰め込まれるよ。ミキサーにかけられて保存料をもみ込まれるよ。丸い黄色いゼリーにされるよ。お助け下さいお助け下さい妖精の申し子』


レーンは確かにこう訳した。

「うちの庭師による訳だ。どこまで合っているか分からないが、僕はとても気になる部分がある」

「………なるほど、真っ黒の四角い箱……か」

「そうだ。以前、レッドバルトの別荘に滞在した時、密猟者の件があっただろう。奴らは妖精を黒い箱の様なものに閉じ込めていた」

「………」

「僕が思うに、この丸頭の妖精は密猟者の輩から逃げて来たんじゃないだろうか。そして……密猟者とスラム街は、何か関係があるんじゃないだろうか」

「なるほど」

ジェラルはどこか落ち着いた様子で、優雅に紅茶を飲みながら頷いた。

「なんだ……そのくらい騎士団にも情報があると言いたげだな」

「……まあな。君たち夫妻を一日ここに留めたのも、実は理由があったり無かったり……」

「………?」

「これを用意していたんだ」

ジェラルが指をパチンと鳴らし、側に控えていたカルメンさんに合図する。
するとカルメンさんは隣の部屋に向かい、何か小瓶の様なものを銀の盆に乗せてやってきた。

小瓶の中にはキラキラした、黄色いゼラチン質のものが。

「これ……何だと思うかい?」

「………何だ? 見た事が無いな……」

「ははは。これは“妖精”だよ」

「……!?」

僕が驚いたのと同時に、さっきまでかごの中でゴロンと転がって自堕落にしていた妖精が、その小瓶に気がつきガタガタ震えだした。
そして「シギーシギー」と鳴き喚きだす。

「どういう事だ。それが妖精だって!?」

「……君の所の優秀な庭師君の訳の中にもあっただろう? 妖精はこのような黄色いゼリー状のものに加工されているんだ。昨日やっと、この現物を手に入れる事が出来た」

「信じられない……いったいなぜこんな事を!! そもそも……こんな事が可能なのか……っ」

そしてこれは、許される事なのか。
妖精は、自然界の恩恵の具現化だ。
自然界の恵と言える、エネルギーが意志を持った存在。それは生命体なのかと言われるととても難しいが、僕ら人間にどうこう出来る存在ではない。

「まあこれだけ見せられても信じられないだろうが……。そうだな、少しだけ試してみるか……」

ジェラルはその小瓶の蓋を空け、細い金属のスプーンでゼリー状のものをわずかに掬う。
カルメンがいつの間にか持って来ていた枯れた苗の鉢に、それを僅かに落とす。

すると、枯れたはずの苗がみるみるうちに、生気を取り戻したのだ。

「何だと……」

「妖精の恩恵を凝縮したのものが、この黄色いゼリーだ。妖精に死と言う概念は存在せず、これは単に姿形を変えたものと捉えた方が良いだろうが、こうする事で普通なら人間が操作する事の出来ない妖精の恩恵を、意図的に利用する事が出来るようになる。妖精の……自然界の“意志”という部分を完全に取り除いてしまってな」

「そ、そんなの……世界の理に反する事だ!! 恐ろしい。どんな災いが起こるか分かったものじゃないぞ!!」

「その通り。確かに我々は、人間ではどうしようもない部分を妖精に助けられながら生きて来た。しかし、その救いの手は妖精の気まぐれや、妖精自ら行う事でなければならない。このような事はあってはならない事だ」

「奴らはこれを作り、いったいどうしようとしているのだろうか……」

「勿論、売り物にするのさ。何にだって役に立つ。……既に、闇市では僅かばかり出回っている。しかしどうやら、奴らが商売の相手にしているのは異国の様だ」

「……異国?」

「ああ。我が国は妖精に愛された国だが、世界を見てみれば妖精にそっぽ向かれた国など沢山ある。特に東に行けば行くほど……。スラム街に異国の者が多くなっただろう? ほとんどは難民だが、それに紛れて外国の商人もやってきている」

「そこまで分かっているのか……」

僕は、いつもよりよほど真面目な顔をして説明するジェラルの、その言葉の一つ一つに驚きつつ、妙に納得出来る部分もあった。

僕だって日頃から、どうしたら畑や庭に、妖精が沢山やってくるだろうかと考える。
妖精は住み良い場所を求め、移動したり、居心地の良い場所に住み着いたり、そうかと思ったらいきなり居なくなったり、かなり気ままなものたちだ。最近はベルルのお菓子のおかげで、随分集まって来たが……。
ただ、彼らを無理矢理閉じ込めたり、強制的に居座らせようなどとは考えた事も無かった。

「……意志を、取り除いたのか……」

そこで、彼らが勝手を出来ない様、ゼリー状の固形物にしてしまった訳か。

丸頭の妖精は、ゼリーを見てしくしく泣いていた。
仲間がこのようになると、妖精も悲しいのだろうか。

ジェラルはふうとため息をついて、一口紅茶を飲んだ。
僕もつられて飲む。色々と考えながらではあるが。

「そこで、この件を担当する我々第七騎士団としては、魔法薬学に精通している王宮魔術師の第三研究室より数名の力を借り、この妖精ゼリーを“もとの妖精に戻す薬”を研究して欲しい。ただ、この研究は極秘で行わなければならない。できれば………リノ、君をリーダーとして研究チームを作りたいと思っている」

「……え?」

僕は思わず眉を寄せた。
そのように大事な案件であれば、第三研究室の、もっと頼もしい偉い先生方もいるだろうに。

ジェラルは僕の戸惑う様子を見て、何度か頷き困った様子で笑う。

「リノ……君は特別だ。魔法薬を代表する一族の生まれであり、大きな薬草の庭を持ち、知識も技術も申し分無い。第三研究室の室長も、君なら問題ないだろうと言っておられたし、こちらの研究にかかり切りになる事も了承済みだ。君はこの事件と何度も関わりを持っている。何と言っても……君の奥方は妖精の申し子じゃないか」

「………それが、何か関係でもあるのか」

「妖精の申し子がどれほど貴重な存在か分かっているだろう? 君と、君の奥方は、何だろうな………関わるべくしてこの事件に関わっている気もするよ」

「………?」

ニヤリと、意味深に笑うジェラル。いつもはあんなに陽気で適当な態度を取っているのに、やはりこう言う時はあの伯爵の息子だなと思う。
ぎゅっと膝の衣服を握って、ゆっくり頷く。

「そうだな……その話は引き受けなければ、ベルルがまた悲しむな……」

妖精ゼリーなどと言う人間の都合に合わせた残酷なものを作り出し、妖精の意志を排除する事は、決して許される事ではない。

何より、この妖精ゼリーの話を聞いたら、ベルルがどれほどショックを受けるだろう。
僕は、この研究チームの話を引き受ける事にした。
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