【MHF】私とボクの思い出【小説】第二十六話 | チョコっとMHブログ♪

【MHF】私とボクの思い出【小説】第二十六話

フローラはかけ声と共に両手を天に突き出した!


しかし何かが変わったような気配は無く、試しに剣を抜こうとしてみるも、抜けるわけはない…。


「くぅ~ん」

しょんぼり中のリリアンからも残念そうな声が漏れる。

「うっ…もう一回!もう一回やってみるから待っててねリリアン!」

(おじいちゃんの動きを思い出そう…
足はこれくらい開いて…
手は…そうだクロスしていたわっ!
よぉし次こそやってみせる!)

頭の中を空っぽにして精神を集中させる…!



「くぅ~ん…くぅ~ん…」


何かの予兆でも感じたかのようにリリアンは怯えだした。

そしてこの時こそが、この哀しい物語の幕開けなのだったッ!






「はぁーッ!!」





―発声するとともに思考は停止した―

意識はあるが頭の中に何かがいるような感覚。
無気力にも関わらず身体は動き出す。

力強く…!

目に映るものに抗うことは出来ず、ただその光景を映画でも見るときのように見ていることしか出来ない。

そう、彼女は“鬼神化ではなく鬼人化”したのだ…!
そしてその未完成な覚醒がどんな悲劇を起こそうとも、彼女に抗う術はなかった…。




ルドルフが帰宅し、その光景を目にした時、自分の不注意を嘆いた。
そしてフローラを抱きよせる。腕の中で泣きじゃくるフローラを強く抱きしめた…。
泣き疲れそのまま寝てしまったフローラの頭を撫でながら、ルドルフはこう呟いた。


「血は争えんのう…。」


次の日、目が覚めたフローラは再び泣いた。
昨日の記憶は無いものの、残酷な現実は刃となり彼女の心に突き刺さる。





愛犬リリアンは死んだ。





彼女にも原因はなんとなく理解出来た。

(おじいちゃんの言っている事は正しかった。
私にはまだ早かった。
けれども手に入れてしまったこの力。
もう二度と間違いを起こさぬように…。

昨日とは違った意味を込めて…
おじいちゃんにお願いしよう…。)







フローラ
「おじいちゃん。
片手剣術を…教えて下さいっ!」


そこにはいつものかわいい孫ではなく、決意を瞳に宿した…
ルドルフ家の宿命を背負った一人の戦士の姿があった。



<フローラ幼少期編 -完->



第二十七話へつづく―