俺達、まだ死ぬには若いんで 後編 | 心の暴風警報 in INDIA

俺達、まだ死ぬには若いんで 後編

「俺達、まだ死ぬには若いんで 前編」 のつづき。




夜が明けると、あっという間に周りは真っ昼間の景色になった。


さっきまで暗かったはずが、ナンデスカ?このキツい日光!という程の、痛いほどの日差しと、呆れるほど青い空。


明るくなったと同時にドライバーの眠気もまた覚めたらしく、彼はまたもや、暴走運転@崖ップチを強行しまくっていた。



そして出発から5時間半ほどが経ったころ、とうとう、最初の休憩ポイントに到着。


ここは「荒野」の名にふさわしい、岩と砂地しかないような場所。日陰なんか、たたみ一畳もないような場所だ。


建物などがあるわけではなく、何件かのテントがあり、そこで休憩する。


どうやらここまでは死なずにたどり着いたらしい・・・・・・、うむ。




さて、休憩ポイントでも私は忙しい。


まずはトイレトイレ。もちろん青空トイレですよ。うまい具合に皆の目から逃れられるような場所を探して歩いて、そこらへんでしてくるんです。


次は、日焼け止め塗り直し。


どこまでアグレッシヴな太陽よ、ってな太陽ですから、こっちもアグレッシヴなまでに塗りたくり&塗りまくらねばならない。できれば数時間ごとに。


それが終わったら、今度は写真を撮りにあちらこちらウロウロ。


そんな事をしてようやく落ち着き、ふと気づくと何やらテント付近で騒ぎが起きている。



近づいてみると~!


おや!我らがアホドライバーが真ん中で真っ赤な顔して座っており、周りを皆が囲んでいるではないか。


なになに、どうした?


と、誰かが叫んだ。「酒なんか飲みやがって!コイツはよぅ」


な、なにぃ?酒を飲んだだとぉ!?


そう、我らがアホドライバー、なんといきなりテントの影で酒を飲んで、すっかりホロ酔いになっていたのである。



「こんなヤツに運転させるわけにはいかねぇ!」


「こんな危険な道をこんなヤツの運転する車に乗ってたら、永遠にマナリーには着かないで、まっすぐウーパル(上。ここでは、天国という意味)に行っちゃうぜ」


と、皆が口々に言っている・・。


わたし、ア然。どこまでフザけた国なんだよ、インド・・・・。


パーガル(キチガイ)ドライバー。ちょっとボヤけているけど・・。

ちなみに彼はネパーリー(ネパール人)。



誰かが続いてわめく「おい、オマエ、俺達をどこに届けるつもりだってんだ。ウーパル(上。ここでは、天国の意)か?」


言えてる・・・。


「ウーパルに行きたいなら、俺達をマナリーで下ろしてから、一人で勝手に行ってくれ」。


うんうん、その通りだ。



そうこうして、「こいつはここに置き去りちしちゃえ」とかなんとか、モメているうちに一番後ろの座席に座っていたある男が「俺が運転する」と言い出した。


ええ!?でも、彼はシロウトではないの?(山道だよー、崖だよー、悪路だよー)


だが、みるみるその案は採用され、ドライバーから鍵をもぎ取ると私達はすぐに、出発した。


出発したはずだった・・・・。が、ここでパンク判明~。


またすぐに車をとめてタイヤ交換。



この時点でもう、私達は変な連帯感に包まれ始めていた。


その連帯感の名は「俺達、まだ死ぬには若いんで」。


ホロ酔いで真っ赤な顔でニヤニヤするドライバーを尻目に、みんなでせっせとタイヤ交換(どこまで使えないドライバーなんだ・・・)。


みんな、妙にチームワークな気分。


あ、もちろん私は「女」なんで、手伝わなくたっていいのよ(インドってそういう国)。


女はこういう時は「ちょっと早くしてよねぇ~(ぶぅ)」って顔して休んでいればいい国なんです。


というわけで、私はせっせとタイヤ交換をする「俺達、まだ死ぬには若いんで」クラブの皆を遠巻きに眺めつつ、写真なんか撮ってました。


そしてふと、あちらに目をやると、ちょっと離れたところでニヤニヤ不気味に笑いながら揺れているドライバー・・・・・。オマエ・・・・。


タイヤ交換にいそしむ男達。

写真を撮る私の影が映ってますな・・・・・。

ちなみに、行きも一度パンクしました。

インドでの長距離移動とパンクはセットといって過言ではありません。


さて、ようやくタイヤ交換を終えて、パンクしたタイヤの修理も済ませ、私達は今度こそ出発。


まだ14時間近いドライブが残っている(ちなみにドライバーは後部座席に乗せられましたよ)。



心配していたシロウトドライバーも、まぁまぁの運転(というか、それまでがあまりに恐かったんで・・・)。


その後8時間くらいを彼が運転し、「あぁ、死ななくてよかった」と、それなりに平穏な雰囲気でやっとみんな、ウトウトし始めたのだった。


でも、車内は酒くさかった!



が、8時間もシロウトがパワステなしのジープを運転したらやっぱり疲れますよねぇ?


というわけで、最後の6時間はまた、アホドライバーが運転したのでしたよ!(一応、酔いが覚めたっぽいのを確認して)


その6時間、もう説明するまでもありません。


いったい何度、「ひえ~!!」っという場面があったことか・・・。


マナリーに無事到着した時は心底ほっとしました。



たいていは、20時間をともにした他の客とも、誰もあいさつらしきものも交わさずバラバラ~っと解散するもんなんですが、このときはやはり、皆、握手なんかしてましたよ(笑)。



あー、よかった。死ななくて。


というか、フザけてんよなー、インド・・。