俺達、まだ死ぬには若いんで 前編
ラダックの感想を書く前にもうひとつ、道中のトンデモエピソードをご紹介させていただきたいわ。
当然、前回の記事「写真76:いいから止まってくれ!」 で来た道をそのまま帰ったんですが、冗談のようなひどい目にあったんです。
それは帰り道。
※ ※ ※
出発は夜中の2時。
満点の星の元、ジープ乗り場にちらちらと乗客は集まり、やはりスシ詰めとなってラダックのレーをマナリーに向けて出発。
んが・・・・!
なんかおかしい。どうにもおかしい。明らかに、おかしい。
私達のドライバーが明らかにおかしいんです。パーガル(キチガイ、バカ)なのだ。
真っ暗な道を、飛ばす飛ばすブっ飛ばす!
その飛ばし方がすでに正気じゃない。
最初にビビリを表現したのは、オリッサ州から来たという労働者風のいかにも気の小さそうな男スニール。
「だ、だんな~っ。人生、先を急ぐ理由はこれっぽちもねぇんだ。いいから安全に走ってくれ!」
っ、とそれを聞くや否やドライバー、「やかましゃ~!このひよっこがぁ!」みたいな事を叫び、嬉々としてますます飛ばし、不気味にニヤニヤニヤニヤ。
そして5分に一回は、ックカ~ッ!ペッ!!っと痰を窓から最高に下品に外へ吐き出し、そのたびに暴走している車が左右に揺らぎまくる。
小男スニールとドライバーの間には、ノッポの男。彼も、左側のスニールをなだめつつも、10秒に一回は右側のドライバーの顔をマジマジと見る。
その顔は明らかに「こ、こいつ・・・・・大丈夫か?(ヤバくねぇ?)」と言っている。
後列の私達8人は、ドライバーの運転だけで既に明らかにヤバさを感じつつも、ノッポの男の真顔&無言の、右人物へのまなざしを見て更に緊張が増す。
「やっぱヤバんだよな。ぜってぇ、ヤバいぜこのドライバー・・・・」私達、無言の会話を交わす。
だがドライバーはますますハイパーになり、前方の車やトラックを抜かすたびに「抜かしてやったぜ、このやろー!」とかなんとか何か叫び、目がランラン。こわっ!
が、しばらく走り今度は山道へ突入したころから、異常なノロノロ運転へ変わった。
だが、そのノロノロなんだが、やはりおかしい。明らかにおかしい。
どう考えても、「寝てる?ねぇ、寝てるの!?」って様子。
リズムがウトウトしている感じだし、いちいち不必要な箇所で車が止まりそうになるのだ。かと思うと、いきなり一瞬、意識が戻るようで、グィ~インッ!とスピードを出したり。
そして意識が戻ったと同時に何か罵倒を叫ぶのだが、またすぐに止まりそうになったり・・・・。
あのさぁ、山道なの。崖なの。悪路なの。
ズルっといったらもう、奈落の底へまっさかさまですよ、アナタ。イチコロ。
世界の屋根ヒマラヤの崖ですからね。めっぽう高いんだから。谷はめっぽう深いんだから。
真っ暗な車内はもはや、深刻にブラックジョークな世界。
小男スニールなんて背もたれに背中もくっつけていられないビビリ具合。真ん中のノッポも、車が奇妙な動きをする度に、右の男を見ずにはいられない。
後列8人の私達も、無言のままテレパシーで何かを語り合っているかのような空気「死にたくないっすよね・・・まだ」。
そのうち、とうとう空がうっすら青くなり始め、神々しいまでの雪山が最初の太陽を浴びて輝きだした。
あぁ、なんだか普段より更に、山が美しく心にしみるのはなぜ・・・・(死ぬの?)。
善良な我らが子羊10人の運命やいかに・・・・・(大汗)。
~後半へつづく~
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