写真76:いいから止まってくれ! | 心の暴風警報 in INDIA

写真76:いいから止まってくれ!



マナリーからラダックのレーへ向かう道中の2番目の峠である、

バララチャ・ラ(Baralacha-la、バララチャ峠。標高5045m)を

超えて少し行った所にある休憩ポイント。

超乾燥地帯のラダックエリアはまだ先。


※   ※   ※


ラダックへは実は飛行機でも行ける。

だが、わざわざ大変な陸路で行った理由は、まずは貧乏。

だけど、もうひとつの理由はやはり、

「道中の景色は見逃すにはあまりにもったいないから」ですよね。



いやー、しかしやはり大変でしたんです。

ジープはスシ詰めですからね。

一番前の列は運転手合わせて3人。

真ん中の列に4人。一番後ろの地獄のようなシートに4人。

それは日本の感覚からいうと、コメディのように「詰めすぎ」なんです。

隣の人とはくっつくどころか、もう、骨盤同士が圧迫し合っちゃって

そのまま20時間ガタガタ揺れまくるもんだから、

私のモモ、やや擦りむけたみたいになっちゃって、

いまだにザラっとしている程。


そしてラダックエリアに入ったあたりから、とんでもなく細かい、

パウダー状の砂が絶え間なく入ってきて、

顔は砂粉のファンデを極上に厚塗りしたような感じになってカピカピ。

鼻ん中は、もう女じゃない、ってくらいの状況。

もし上半身だけの写真を撮ったとしたら

足には当然、地下足袋とか履いてると思われそうな土っぽさ。

着ていたセーターの目地に砂が詰まっちゃって詰まっちゃって、

はたくと野良犬をはたいたみたいに、バフーっと砂埃が。
(目地のない、ナイロンのものなどを着るに限ります・・)



だいたい11~12時間くらいまでは、それでもまぁ、楽しめるんです。

なんたって絶景は常に見えてますから、ガッタンガッタン揺れまくっているのに

傾きながら窓から必死の形相で、無理矢理写真撮りまくったりで、

自分で自分がコントやってるかのような滑稽さなんだけど、

でも楽しめる。

でも、12時間くらいを過ぎたあたりから・・・・

なんか・・・、もうよく分かんなくなってくるんでして・・、

もうどうにでもして、って感じで意識も朦朧。

だーれも何も言葉を発さず、抜け殻みたいになりながら、

ひたすら揺られてる感じで、誰も時計すら見なくなるというか・・。


それでも私は、峠に差し掛かるたびに

一人躍起になってシャッターを押しまくっていたんですが、

ふと後ろを向くとみんなゾンビのようになっていて。

なぜそこまで狭い場所で突っ伏せるのか分からないんだけど、

2つ折か、ってくらいの勢いで数人が突っ伏していたりして。

なぜって、やっぱり半数は高山病にかかってるんでありまして。



つまらなかったですよ!ほんっとーに。だって、

5000m以上の峠だけで3つ越す(最高で標高5328m)んですが、

やっぱり峠のてっぺんで、10分でも、いや5分でも、いやいや、

1億歩譲って、1分でもいいから私は止まりたい訳ですよ。

止まって、外に出てしっかり体験したいわけ!

だって、向こうには遥か彼方までの山並みが見えてるんです。

まるで飛行機から見ている感じで。



それに、いっちばん高い場所の空気のピュアなことといったら、

もう、格別なんだから。

峠には必ずタルチョ(チベットの、お経が書かれたカラフルな旗)

がはためいていて、石が積まれていて。

やっぱり、そこが特別に神聖な場所だからですよね。

どう考えても、外へでてしっかりと、

その場所というものを感じ取りたい場所なんです。


なのに必ず数人が高山病で、連れが「早く下ってくれ」とか

わめいていたりで1分どころか1秒も止まらず、

それどころかむしろ大急ぎでシャ~っと通り過ぎてみるみる下っちゃう。

こんな口惜しい事はめったにあるもんじゃないっ、ってくらい

ひっじょーに口惜しかったです!峠のたびに。



って、高所に弱い人にとっては、それどころではないのだろうけれど。

重々承知なんだけれど・・・・。

けれど。けれど・・・・。けれどー。けれどーー。

ちぇ~っ!でした。

(ちなみに高度5500mで、気圧は海抜0m地点
のほぼ50%だそうです。)



でもまぁ、こういう場合にやはり、

呪うべきは最終的には己のビンボーなわけなのかしら。

自分だけのジープをチャーターすれば、峠と言わず、好きな場所で

存分に止まれるわけだからねぇ。

(ちなみに、自分だけのジープチャーターは飛行機より高くつきます)


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