平成28年度の診療報酬改正について厚生労働省から告示がなされた。


二年に一度の定例改正で、今回も歯科矯正が健康保険適用となる例外的な疾患の範囲について見直しが行われた。

今回の見直し後に適用される疾患の範囲は、以下に掲示されるもの。


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療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部改正-H28厚生労働省告示第51号


◎療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成十八年厚生労働省告示第百七号)


第十一 療担規則第二十一条第九号ただし書の矯正に係る厚生労働大臣が定める場合

一 (略)

二 歯科点数表第2章第13部区分番号N000に掲げる歯科矯正診断料規定により別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているもの規定により別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行うゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)、鎖骨・頭蓋骨異形成、トリーチャーコリンズ症候群、ピエールロバン症候群、ダウン症候群、ラッセルシルバー症候群、ターナー症候群、ベックウィズ・ヴィードマン症候群、ロンベルグ症候群、先天性ミオパチー(先天性筋ジストロフィーを含む。)、顔面半側肥大症、エリス・ヴァン・クレベルド症候群、軟骨形成不全症、外胚葉異形成症、神経線維症、基底細胞母斑症候群、ヌーナン症候群、マルファン症候群、プラダーウィリー症候群、顔面裂、大理石骨病、色素失調症、口・顔・指症候群、メービウス症候群、カブキ症候群、クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群、ウィリアムズ症候群、ビンダー症候群、スティックラー症候群、小舌症、頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)、骨形成不全症、口笛顔貌症候群、ルビンスタイン―ティビ症候群、常染色体欠失症候群、ラーセン症候群、濃化異骨症、六歯以上の先天性部分(性)無歯症、チャージ症候群、マーシャル症候群、成長ホルモン分泌不全性低身長症、ポリエックス症候群、リング18症候群、リンパ管腫、全前脳(胞)症、クラインフェルター症候群、偽性低アルドステロン症(ゴードン症候群)、ソトス症候群又はグリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)に起因した咬合異常における療養であって歯科矯正の必要が認められる場合


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太字でハイライトされた部分が今回の改正で新たに健康保険適用となる疾患。

これらの疾患を持つ患者さん、ご家族の皆さんおめでとうございます。

レット症候群は今回も組み入れられなかった。残念!

(新しい論文)
Disruption of MeCP2 attenuates circadian rhythm in CRISPR/Cas9-based Rett syndrome model mouse.
Tsuchiya Y et al., Gene to Cells (2015) in Press (http://dx.doi.org/10.1111/gtc.12305 )


 レット症候群の患者は睡眠障害の症状を伴うことが多いとされる。日中に傾眠傾向を示したり、夜間の不眠や睡眠の中断を示したりする。睡眠-覚醒リズムの乱れはそれ自体がQOLの低下の原因となる上に、てんかん発作を引き起こし易くするとも言われており、好ましいものではない。また、夜間の覚醒や深夜の叫び、笑いといった症状は、患者を介護する者にとってもかなりの負担であると言える。


 レット症候群の睡眠障害に関係する研究として、レット症候群の主たる責任遺伝子であるMECP2遺伝子と概日リズム(体内時計)との関係を示す新たな知見が発表された。


 上記の論文は、京都府立医科大を中心とする研究グループの研究成果で、日本分子生物学会の学会誌であるGenes to Cellsのオンライン版に10月15日に公開されたもの(冊子体の刊行はまだなので、in Pressと表記されている)。


 論文の技術的背景、内容、及び展望などは、京都府立医科大学のプレスリリースで丁寧に記載されている。


「Rett症候群患者の睡眠障害の治療法の確立に光」(京都府立医科大学 平成27年10月15日付けプレスリリース)
http://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2015/20151015.html
http://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2015/files/10788.pdf


 プレスリリースに盛り込まれていない技術的内容や感想については次項に書いてみたい。

重症度の指標となるClinical Severity Scoreの3つめの項目、頭囲の成長(Head growth)についてのつづき。


 日本人の体格の成長に関する調査結果は、厚生労働省から公表されている。
 平成22年乳幼児身体発育調査の概況について(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042861.html )


 このうち、表4には「一般調査及び病院調査による頭囲の身体発育値(3、10、25、50、75、90及び97パーセンタイル値) 年・月・日齢別、性別」と題した結果が纏められている。


 3パーセンタイル値(以下、同)、10、25、50、75、90及び97となる頭囲の長さ(cm)は、


女子(1年11月~1年12月未満)だと、順に、
44.5 cm, 45.4 cm, 46.2 cm, 47.2 cm(中央値), 48.1 cm, 48.9 cm, 及び49.7 cm となる。


女子(2年0月~2年6月未満)だと、順に、
44.9cm, 45.7 cm, 46.6 cm, 47.5 cm(中央値), 48.5 cm, 49.3 cm, 及び50.2 cm となる。


 CSSのスコアを得るには、まずは生後24月のデータ、特に2パーセンタイルと10パーセンタイルの値が知りたいところだ。

 しかし、残念ながら2歳0月というぴったりの計測値はなく、(1年11月~1年12月未満)か(2年0月~2年6月未満)を使うことになる。


 後者は年齢幅が6月と広いから、24月ちょうどの幼児のデータも含むのかもしれないが、おおざっぱに言えば27月程度の測定値となってしまう。これを用いるよりは、24月より若干前の年齢での計測値だが、前者を用いるのが適当だと思われる。


 また、2パーセンタイルの値が公表されていないが、3パーセンタイルの値ならばそれと大差はなかろう。


 そうすると、CSSのスコアを出すための一応の指標としては、24月(仮)の頭囲として、
44.5 cm (3パーセンタイル値)、及び45.4 cm (10パーセンタイル値)が使えるだろう。


 また、「頭囲成長の抑制が全く認められない」というカテゴリーには、中央値である47.2 cmを目安として使うことができそうだ。


 本表4に記載されるように、乳幼児身体発育調査の調査対象は、「6年0月~6年6月未満」の幼児まで。これを超える年齢の児童、生徒等の計測値は含まれていないので、6歳半超の子の頭囲を測定しても成長抑制があるのかどうか、どの程度の抑制なのかを察することが困難と言えよう。