エピローグ ⑥ 「ケインは遠縁でケインの木が どこにあるかまで知ってはいるけど…… フィンのことは父しか知らないの」 アレックスはもう一度確かめるようにキリーに尋ねる。 「フィンはお父さんに紹介されたと言っていたね?」 キリーはやっとアレックスが何を言おうとしているのか わかった気がした。 二人はキリーの花婿候補だったのではないかと アレックスは考えているのだ。 そうかもしれないし、 そうでないかもしれない。 父が意図しただけであって二人は知らない可能性もある。 どちらにしても二人はキリーにとって かけがえのない存在に違いないし、 父が意図したものだとしても感謝せずに入られない。 キリーは持って来た薄手の毛布を キリーの木の根元に広げて座り、 アレックスも座るようにうながした。 キリーの肩を抱き寄り添うように座るアレックス。 「ケインにはわたしと同じ年の妹が一人いて、 彼は小さい頃から一人っ子のわたしの面倒をよく見てくれる 兄のような存在で家族だわ。 フィンは……」 言いかけてキリーはアレックスの頬を 手の甲で優しく撫でながら 思い切ったように話し始める。 「あのね、アレックス。 わたしは子供の頃からよく夢を見ていたの。 満開の木の下で待っていると一人の男性がやってきて、 その人の姿は泣きたくなるような切なさと同時に 胸いっぱいの溢れそうな愛情をわたしに与えてくれる」 キリーの話を聞きながら、 アレックスは日本でキリーを見つけたときのことを 思い出していた。 満開の桜があたり一面を彩り、 その中でも立派な木の根元にいたキリーは桜の精のようだった。