エピローグ ② 「そんなのごめんだね。 僕は勝ち目のない戦いはしないことにしているんだ。 特に向こうに返せそうもない借りがある場合はね」 アレックスの言葉に今の自分の立場を忘れて反応するキリー。 「借りって?」 抱すくめられながら瞳を輝かせて尋ねるキリーに、 首を横に振るアレックス。 「そう、また男同士の秘密なのね……」 嫌な誤解をしながらとても残念そうなキリーに アレックスは苦笑しながら話を戻す。 「実家に用って?」 きょとんとするキリーはとてもかわいい。 「わたし、 来週結婚するんだって思ったら急に父と母に会いたくなって……」 アレックスの背中に手を回して抱きしめるキリー。 「驚いたんだね」 うなずくキリーに微笑みながら尋ねるアレックス。 「送っていくよ。僕が一緒にいたら嫌かい?」 首を横に振りアレックスを見上げるキリー。 「とても嬉しいわ。父と母も喜ぶと思うし」 キリーの瞳やその表情に何の迷いもないことを確認して アレックスはほっとした。 門をくぐりアーモンドの森をぬけるとキリーの家が見えてくる。 歴史を感じられるその屋敷を見た時、 アレックスはキリーがボディーガードや 運転手付きの車で移動しないのが信じられなかった。 キリーが前もって連絡をしていたので、 ご両親が玄関先で出迎えてくれる。 「まあ、キリー。お仕事は終わったの?」 キリーの元気そうな顔にキスをするキリーの母アンジェラ。 父のアーサーも心なしか嬉しそうだ。 「昨日仕上げて、 さっきフィンに渡したらほっとしちゃって、 そうしたらなんだか二人の顔がとても見たくなって」 アンジェラを抱きしめてキスをすると、 恰幅のいいアーサーを抱きしめるキリー。