エピローグ ① ハデスの作品を大切そうに抱えながら キリーの頬に優しいキスをするフィン。 「フィン、 あなたの嬉しそうな顔とか 子供みたいにきらきらした瞳が大好きだわ。 でもあまり無理をしないでね」 フィンの頬に優しく両手を添えて瞳を覗き込み その額に祝福のキスをするキリー。 「キリー、幸せになるんだよ」 キリーの柔らかな髪を片手で優しく撫でると 名残惜しそうに背中を向けるフィン。 見守るキリーの視線を背中に感じながら 振り向くことなくその場を後にした。 大好きなフィンの後ろ姿が見えなくなると、 キリーはバッグを手にとり歩きだしながら、 アレックスに電話をかける。 「アレックス?やっぱりお迎えはいらないわ。 ちょっと実家に用を思い出したから……」 お店を出てすぐに人にぶつかりそうになって 立ち止まるキリー。 鼻先数センチの場所にたくましい胸が迫っていた。 仕立ての良いスーツも色も見覚えがある。 恐る恐る顔をあげると アレックスが携帯を耳に当てたまま立っていた。 次の瞬間、 頭の上でアレックスの携帯の閉まる音がして その腕に捕らえられるキリー。 「それで?」 にやりと唇の端を吊り上げ キリーに挑戦するように笑うアレックス。 「あいつが作品を大事そうに抱えて一人で去ったということは、 結婚が嫌で僕から逃げるつもりはないんだな?」 両手を上げて白旗を揚げるキリー。 「ずっと見ていたのなら席を外さず傍にいたらいいのに……」 キリーを抱すくめながら アレックスは怒ったように言う。