Ⅹ ③ 自分の選択が間違っていなかったことに フィンは安堵しつつはっとして周りを見回す。 「フィン?」 キリーが心配そうにフィンの顔を覗き込む。 「あいつは?」 フィンの質問に一瞬きょとんとするキリー、 ちょっと考えて、 「アレックスのこと?」 うなずくフィンに苦笑するキリー。 「さっきまで一緒にいたのよ。 でも、フィンにあわせる顔がないから 終わった頃に迎えに来るって言っていたわ」 肩をすくめて不思議そうな顔で続けるキリー。 「終わった頃って、どうやってわかるのかしら? それになんだかお腹をさすっていたわ」 幾つもの疑問を頭にのせながら、 きっとフィンが知っているに違いないと言う 好奇心に満ちた顔でフィンを見つめるキリー。 フィンが首を横に振ると、 「男同士の秘密なのね?」 と嫌な誤解をしていたがあきらめてくれたのでほっとする。 キリーに会ったら尋ねたい事が色々あったのだが 優先順位の高いほうを先に訊くことにした。 おもむろにスーツの胸ポケットから招待状をだしキリーに渡す。 「キリー、きみは来週結婚することになっているけど?」 キリーの瞳が驚きで丸くなる。 「そうなの?初耳だわ。 どうりでアレックスのご機嫌が良いわけだわ……」 そう言ってフィンに渡された 自分たちの結婚式の招待状を開いて眺めるキリー。 やっぱりキリーは知らなかったのだ。 フィンはキリーが何の相談も報告もなく 結婚を決めたのではないことを知って嬉しかった。 キリーが落ち着いているのを見る限り 丸っきりそういう話が出ていなかったわけではないようだが、 アレックスの奴もう一発殴ってやればよかったと フィンは後悔した。