モヌ が村からデリーに来て、わが家で暮らし始めるようになり、
もうすぐ2ヶ月が経とうとしている。
この間、モヌは英語をみっちり勉強し、段々と基礎ができてきた。
最近は単語を発するだけでなく、きちんとした文法で文章を言えるようにもなってきた。
2ヶ月前はまったくと言っていいほど英語を話すことができなかった彼にとっては、
大きな進歩であると思う。
そんなモヌに、私たちの友人でもある家庭教師のアディティヤから
「せっかくだから、遊び感覚で日本語も習わせたら?」
と提案があった。
ちなみにアディティヤは、大学で日本語学科に通い、
日本で言語学の修士・博士号を取得し、日本で5年ほど働いた経験もあり、
日本語が流暢なのははもちろんのこと、
感覚や雰囲気も日本人そのものと言っていいくらい。
アディティヤの日本人の友人が日本語教師だったので、
週1回、彼女に日本語を教えてもらうことにした。
そしてこの前の日曜日(1日)、初めての授業。
モヌだけでなく、
「私に日本語を教えて!!」
と常々言っている、わが家の上階に住む大家の娘たち、
チャービー(11歳)とスマヤ(6歳)も授業に参加した。
・・・それが、見ていて超おもしろい!
さすが、金持ちの娘、チャービーはモヌと同い年であるが、
学ぶ意欲がとても高く、幼い頃から英才教育を受けていることもあり、
ノートのとり方が上手かったり、物覚えも早い。
そしてモヌも、日本語を勉強したい気持ちはとても強い。
この日の授業も心待ちにしていた。
が、勉強の仕方も、ノートのとり方も、まだよく分かっていない。
説明は英語なので、すぐには理解できないこともある。
さりげな~くチャービーのノートを覗き、自分もそれに習って書き写すのである。
しかし、モヌにも「日本人と生活している」というプライドがある。
日本語の簡単なあいさつなどは、私たちも彼に教えており、
生活の中で常用している。
そんな彼が、この女の子たちに負けたくない気持ちもあるのであろう。
先生が投げかける質問にいち早く答えようと、
必死に考え、大きな声で答えるのである。
6歳のスマヤもまだ幼いから、負けじと大きな声で答える。
チャービーはそんな収拾のつかない状況に若干、呆れ顔。
でも負けたくはない。
子供ながら、いろいろな背景や思いが交差し、
3人ともそれはそれは意欲的に授業に取り組んでいる。
それぞれのそんな思いが垣間見えるのが、
傍から見ていると本当に微笑ましく、おもろいのである。
さらにおもしろいのが、数字の勉強。
日本語の数字は、1~10を覚えて、
あとは規則さえ解れば、99まで数えることができる。
この日は100まで学んだ。
まずは1~10までを覚え、
あとは、10に1を足すと「11」、2を足すと「12」・・・
「19」までいったら、
2と10で「20」、3と10で「30」。
これは3人とも理解したのだが、
スマヤとモヌは
「・・・じゅーはち!じゅーきゅー!じゅーじゅー!」
「・・・にじゅーはち!にじゅーきゅー!にじゅーじゅー!」
と、つい言ってしまう
その辺チャービーはちゃんと理屈を理解しているから、
ちょっと考えて、正しく
「にじゅー」 「さんじゅー」
と答えられるのである。
約1時間の授業。
「イイもん見せてもらった~!」
という感じだったが、それ以上に収穫があったと思うのは、
モヌがチャービーやスマヤの物覚えの早さや、
すぐにノートにきちんと書いておく様子を見たこと、
またほかの子供に対して「負けたくない」という
対抗意識が芽生えたことであろう。
他人と比較する必要はないが、山奥の村から出てきたモヌが
都会のデリーっ子の勉強の仕方を、学校が始まる前に見ることができたのは
いい機会だったと思う。
(デリーの学校は今週末まで夏休み)
いろいろな意味で、次回の授業が楽しみである