「大人飲み」のすすめー下北沢 バー・ホリーのお酒のブログ

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 お酒やバーに、興味があるけれど
どこから知識を吸収すればいいかわからない若い方たちに、
その楽しみ方について、お話ししていくブログです。
カウンターの中から見た、男女の違いや、仕事や恋の悩みなど、
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 今日、11月19日(木)は、今年のボジョレー・ヌーヴォーの解禁日です。

 なぜ「今年の」がつくかというと、ボジョレーの新酒(ヌーヴォー)の解禁日は、フランス政府によって、11月の第3木曜日と決められていて、今年はその日が19日だから。
 
 日本でボジョレー・ヌーヴォーが知られるようになったのは、1980年代のバブル景気のころで、時差の関係で世界一早く飲めるというので、解禁日のカウントダウンがイベントとしてマスコミに取り上げられるようになったのが始まりでした。

 いまでは、一般の酒屋の店先で、スーパーのお酒のコーナーで、はたまたチェーンの居酒屋のpopで、11月が近くなると、ボジョレー・ヌーヴォー解禁、予約受付、などの文字を目にするようになりました。

 で、そもそも、ボジョレー・ヌーヴォーって、何?どうやらワインらしいんだけど、他のワインと何が違うの?で、解禁日って、何?

 この長引く不景気で、どんな材料でも売り上げの数字をつくるために使いたい小売業のおかげで、なんとペットボトルまで登場したボジョレー・ヌーヴォー。同じワインでも、オーストラリアやカリフォルニアの箱入りワイン=カスクワインは、まだ、デイリーワインのカジュアルな飲み方としてあるな、と思いますが、ペットのボジョレーは、もしそれを飲んでボジョレーはおいしくない、という人がいたら、糖類や酸味料まで使ったパック入りの日本酒を飲んだだけで日本酒はおいしくないという外国人(もしいたら、ですけど)と同じレベルだと思います。本物を飲んでから言ってよ、という…。

 ボジョレー・ヌーヴォーというのは、フランス中部のワインの2大産地のひとつ、ブルゴーニュ地方のボジョレー地域で作られる、その土地で昔から栽培されており最も早く収穫できる「ガメイ」という品種で作られる新酒のことです。ヌーヴォーnouveauは英語のnew、つまりボジョレー地域で作られる新酒という意味ですね。

 で、この新酒のできばえが、どうしてそんなに話題になるのかというと、日本酒と違い、ワイン、特に赤ワインは、基本的に熟成させて味わう酒であり、ワインが葡萄という農産物で作る酒である以上、その年ごとの出来は気温や雨の量などの気象条件に左右されるもので、条件のよい年のワインは、多くを買い占め熟成させれば多大な利益が出る、ということで、投機の対象にもなるようなのです。以前、何かのニュースで見たのですが(出典はっきりせずごめんなさい)、カリフォルニアだったかと思いますが、米国の年金生活者が、自宅の地下にワイン用のカーヴをつくり、できのよい年のボルドーとブルゴーニュのワインをケース買いする投資を行っているとありました。

 フランスの大統領府、エリゼ宮の厨房に入った記者の記録※にも、エリゼ宮のワイン担当者は出来のよい年のワインを買い付けるのが大事な仕事のひとつだと書かれています。
※「エリゼ宮の食卓」西川恵著。新潮文庫

 ということで、ボジョレー・ヌーヴォーには、1.日本酒のひやおろしのように、その年のフレッシュな新酒を楽しむ 2.買い付け、投機の対象としてのその年のワインの出来映えを見る、この2つの面があるのです。

 日本ではどういうわけか、宣伝文句のつもりで、「今年の出来映えは」などしたり顔で解説する業者がいますが、一般人にとって、それはあまり意味のないことで、それよりも、ワインは一にも二にも葡萄の酒、夏の太陽をたっぷり浴びて熟した葡萄からつくった今年の新酒には、フランスの夏の太陽、さんさんと降り注ぐ夏の陽射しがたっぷり詰まっていて、だからそれを口に含んだ瞬間、何とも言えない幸せな気持ちになり、ワインが喉を通るときには、まぶしい夏の太陽が体の中に入って行く、そんな豊かでほーっとする、他のワインでは味わえない体験ができるのです。

 Bar Hollyでは、2002年のオープン以来、ボジョレー・ヌーヴォーの季節には、ブルゴーニュの名門、ラブレ・ロア(王の領地という意味)のヌーヴォーを仕入れています。ここ数年は、v.v、vieilles vignes=古い(樹齢の高い)葡萄の木、というタイプが登場しているので、それを選んでいるのですが、それはそれはフレッシュな新酒の風味と古木ならではの懐の深さ=完熟味がマッチしていて、ちょっと感動的な味わいです。

日付がかわったので、2015年の1本目を開けました。
今年のヨーロッパは猛暑だと聞いていたので期待していましたが、すばらしい!

みなさまも、ぜひ、フランスの夏の太陽が喉を通って体に入っていく幸せな体験をお楽しみくださいね。