春の花粉が舞う季節が近づく今日この頃、花粉症やアレルギーに悩まされる方々もおられることだろう。花粉症はどのようなメカニズムにてくしゃみや目のかゆみなどの様々な症状が出るのだろうか?
≪アレルギー反応と免疫反応≫
ここで、アレルギー反応と免疫反応との違いについて述べておこう。
ざっくりと言うと、花粉やハウスダストなどの大きい分子が体の中に入り込んで来たときは“アレルギー反応”である。大きい異物であるから、体の中で消滅させるのが苦労するため、その大きい異物を排除する(出す)ように働く、そのため、くしゃみや鼻水、皮膚のかゆみなどの反応が起きる。
免疫反応はというと、細菌やウイルスなどの小さい分子が体の中に入り込んで来た時には“免疫”である。小さい分子なので、体の中でやっつけてしまうことができる。そのため、発熱、関節痛といった体の中での炎症という形で症状が出るのである。
アレルギー反応は異物を排除する働きは大事な機能であることは間違いないが、それが過剰な反応となると“アレルギー症状”という病気となる。
≪アレルギーはどのようにして起こるのか?≫
では、アレルギー反応は具体的にどのような機序で起こるのか?
➀まず、花粉やハウスダストが体の中に入ってくる
(※花粉やハウスダストなどはふつう体の中に入らないようにバリアー機能が働いているが、そのバリアー機能が様々な理由で破綻するときがあり、そんな時に体内に侵入する。)
➁体に入ってきた大きな異物はマスト細胞の膜上に存在するIgE抗体に結合する。
➂そして、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンという物質が分泌される。
➃ヒスタミンやロイコトリエンがヒスタミン受容体やロイコトリエン受容体に結合し、
知覚神経を刺激し、くしゃみなどの症状がでる。
という機序で起こる。
≪抗アレルギー薬の中の抗ヒスタミン薬≫
アレルギーを抑制する機序として、どのようなものがあるのか?
抗ヒスタミン薬はマスト細胞から放出されたヒスタミンがのどや鼻のヒスタミン受容体に結合することを防ぎ、知覚神経を刺激しないようにする機序を持つモノである。アレルギー症状に対して最も使われている薬剤と言ってもいい。入院中の処方からドラッグストアで変える薬(OTC)に至るまで広く使われている。
≪抗ヒスタミン薬の副作用≫
抗ヒスタミン薬の副作用として最も問題になるのは、眠気や注意力の低下、作業効率の低下(インペアード・パフォーマンス)である。H1受容体は脳にもあり、脳のH1受容体を遮断されることによって眠気が引き起こされる。
ってことは、眠気が強い抗ヒスタミン薬が良く効く?ってこと?
とお思いだろうが、眠気と効果については相関が無い。
つまりは眠気を我慢して服用継続することが、抗アレルギー効果を存分に発揮する手段化と言えば、それは間違いである。
抗ヒスタミン薬の違いについてよく引き合いに出されるのが“脳内H1受容体占拠率”というものである。
しかし、この脳内H1受容体占拠率に関して、眠気との相関はあまりない。しかし、インペアード・パフォーマンスとの相関はあり、広い意味での“脳の抑制”とは相関があるものと考える。(脳の抑制が強く出ている方は眠気という表現形として出現しているのではないか?)
花粉症治療薬としての抗ヒスタミン薬は比較的社会生活を営まれている方が服用する事が多いため、抗ヒスタミン薬の“脳の抑制”という副作用では、車の運転というところが問題となる。
≪抗ヒスタミン薬の服薬指導の時の留意点≫
薬剤師の我々にとって抗ヒスタミン薬を服薬指導する際に、最も難しいのはこの“車の運転”の問題である。
眠気などの副作用の無い患者では、“車の運転をする際は気を付けてください”などの表現に留めている薬剤師の先生もおられるかもしれないが、車の運転では歩行者が飛び出して来た時のとっさの判断などが必要となり、インペアード・パフォーマンスがある場合は運転をすることは非常に危険な行為となる。 抗ヒスタミン薬の“脳の抑制”は自覚できていないものもある。
かといって、どれでもかれでも禁止というのは実地臨床においては現実離れしている。
各抗ヒスタミン薬の添付文書の文面が異なることがこの問題に役立つかもしれない。
タイプ1:「自動車運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分に注意させる」
レスタミンコーワ、ピレチア、ポララミン、ペリアクチン、ザジテンカプセル、アゼプチン、
ジルテック、アレロック、ザイザルがこのタイプにあたる。
このタイプは“させないように注意させる”という文面があるため、車の運転については
禁止である。
タイプ2:「自動車運転等危険を伴う機械の操作には注意させる」
タリオン、エバステル、アレジオンがこのタイプにあたる。
このタイプは注意するということで、車の運転が禁止というわけではない。
タイプ3:記載なし
アレグラとクラリチンがこのタイプにあたる。
このタイプは自動車の運転についての記載がないため、医療従事者側の裁量に任せられるということである。
あくまで法的な分け方であるが、ひとつ参考までになれば幸いである。