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明日への轍

齢五十を過ぎて、ある日大腸がんが見つかる。
手術から回復したと思った一年後、肝臓と肺へがんが転移。
更に続くがんとの付き合いを記録します。

今朝は夕べより気分は回復した。朝食もパンなので完食できた。
但し、イリノテカンの影響で下痢をするらしくて、シーツを汚してしまった。まあ、抗がん剤が効いているのだろうと考えている。
明日まではこのままの携帯用抗がん剤を付けて治療となる。でも、やはり抗がん剤の影響からか気分は悪い。
吐き気まではいかないが、どうもすっきりしない。

昼食は温麺にしてもらった。しかし、やはり匂いが駄目みたいだった。
夕食はパンにしてもらったが、副食は通常通りで煮魚のようなものも出たが、食えなかった。
ジョアもでたが、味も香りもきつくてやはり飲めなかった。
それでコンビニで牛乳とサンドイッチそれからバナナを買ってきた。美味しかった。どうも匂いがしなくてサッパリしたものが良いようだ。それに好きなものを選んでいるのだから食えるのも当然だ。
まあ、食事のカロリー制限をされているわけではないので、大丈夫だろう。

午後にインフューザーポンプ(携帯用の抗がん剤注入器)の使用方法をカミさんと聞いた。
注入器の針の挿入は医師が行うが、自宅での管理と終了後の針の抜去は自分ですることになるため、その点の説明と注意がDVDと模型で実地の練習伴ってなされた。
それ程難しい処置ではないが、抗がん剤が直接皮膚等に触れないようにゴム手袋までして対応するようだ。
全て自分で行う予定ではあるが、不測の事態も想定している。

11時位から抗がん剤治療が始まった。
最初は2時間ほどかけて吐き気止めやイリノテカン、5FUなどを注入した。
従来のように点滴で輸液ポンプを使うのだが、腕ではなく鎖骨部分に設置したポートからの注入だった。
それから長時間かけて、携帯用のポンプを使って5FUを注入している。
そこからはスタンドを引き連れての治療ではないので自由に動ける。これは煩わしさがない分非常に良い。

放射線科医師から直接に話を聞いた。
主治医にも放射線の治療の話を効いてはいるが、やはり放射線科の医師から直接に聞いて見たかった。
主治医を信用していないわけではないが、なんとなくやはり担当が違えば別の話を聞けるのではないかという淡い期待もあった。
癌の三大治療であると言われながらも放射線治療は日本では外国ほどは利用されていないと言う記事を読んだ事もあって、直接に聞いてみたいと思った。
しかしながら、期待したような話は聞けなかった。複数の転移と他の臓器への影響などがあり、難しいとの事だった。それにどちらかと言えば、緩和治療の方が放射線治療では多いような話であった。
今の段階では、抗がん剤治療と出来れば手術での除去が望ましいとの事だった。
自分としては放射線治療の可能性を出来るだけ知りたいと思っていたので、その点では残念な結果だった。

今回の抗がん剤治療でもやはり副作用は出ている。
夕食のご飯の匂いが駄目になって食えなくなった。代わりに牛乳とバナナを買ってきた。
ご飯が食えなくなると言うのは以前にも経験した事だ。パンや麺ならいいけれどご飯の匂いが駄目になるとは。
9時になってもなかなか眠れなかった。 
 

当初は、一泊二日で帰れるものと勝手に思っていた。そのため、準備もあまりしてなかった。
それが四泊五日と言われ、実際は六日になった。 

以前は腕の静脈に点滴の針を刺して行っていた。そこから三日間で抗がん剤を入れていた。
でも、ここでは全てではないが、携帯用の輸液ポンプ(風船方式)を使うようだ。

 

初日は病院で処置するが日帰り。そして2日目3日目は自宅で治療ができるようだ。

3日間点滴に繋がれ輸液ポンプのスタンドと共に過ごす日々から解放されるのである。

さて、最初は抗がん剤の治療に使うポートの設置からだった。
部分麻酔で埋め込むようだ。数センチ切ってチューブのようなものを静脈に埋め込んで、同時に五百円玉状の針の受け皿も埋め込むようだ。
要は度々腕の血管から刺して点滴しないで常にそこから輸液を流し込む元を作る作業らしい。
CTの検査室のような場所で30分位で終了した。それ程痛くなかったが、麻酔の針や傷を付けるときは少々痛かった。麻酔が切れたら痛むかと思ったが、そうでもなかった。

今日はこれだけだった。抗がん剤は明日から。

 

セカンドオピニオン制度を利用してKGC病院の呼吸器外科の医師の意見を聞いた。

結論から言えば、T病院の呼吸器外科の医師の意見と同様であると説明された。

一時間に及ぶ医師の説明を聞くのは非常に良かった。結果は残念ではあったが、結構色々な事を聞くことができた。

現段階では癌の進行速度が収まってないことから、見える腫瘍を取る手術よりも、見えない腫瘍まで含めて全体に効果を及ぼす治療を優先した方が良いと説明された。その点では化学療法が有効であると。

その説明は理がかなっており説得力もあるものだった。

 

しかし、一方で縦郭にある腫瘍がどんどん大きくなる事は懸念される。

確実に化学療法で小さくなる等の見込みがあれば多少なりとも安心するものの、その保証はない。

手術では負担が大きいのであれば、放射線治療によってその部分を消すなり小さくするなり出来ないものかと考えている。

 

KGS病院のセカンドオピニオン制度を利用するためには現在の主治医の紹介状が必要であった。

その結果として転院する場合も現在の主治医の紹介状が必要となると説明された。

昔と違ってセカンドオピニオン制度は一般的になったと言え、やはりまだ抵抗を感じるのは私だけではないと思う。

主治医に対する遠慮もあるし、何より治療をする立場と、治療してもらう立場では全く対等ではないものである。主治医に紹介状を書いてくれと言う事は、あなたの治療に満足してないと言っているようなものだ。

 

私としては主治医の腕や信頼性は十分で特に不満もなかった。

だが、大学病院であるが故なのか次の点については不安があった。

〇放射線治療に対して積極的とは言えないなと感じた事

〇化学療法(抗がん剤治療)を外部の病院に委託しているが、その治療期間における患者のチェックは委託先に任せっぱなしである。

〇大学病院である故か、手術偏重だなと感じることがある。

 

自分としては、三本柱であると言われている手術、化学治療、放射線治療を必要に応じて実施することで総合的に治療してほしい。

大学附属病院は総合病院的な機能もあるわけで、癌専門医療機関の方が症例も多く実績も多いだろうと考えるとどうしても後者の方が良いと思えるのである。

 

そんな訳で、今回がん専門の病院であるKGS病院に転院することとなった。

大いに悩んだが、病院選びは大事であると考えて思い切った。

 

病院を変えたからと言っても癌に関してなんら解決していないが、漠然とした不安感を少しでも取り除いて、期待感を持って治療の望めることは、少しでも前に進んだ気がする。

CTの結果、両方とも影があるとの判断で急遽診察の予定を入れてもらってその診断結果を聞きに行った。

結論から言えば、肝臓に関しては、画像判断ではあるが再発であるとは判断できないとの事である。

怪しいと判断した場所が昨年の五月に手術した箇所であり、その場所は手術で切り取った関係上どうしても綺麗には治らない部分があるので他の担当医がそう判断したのかもしれない。

PET検査をすればもっと確実に判断できるが、現段階では経過観察で良いのではないかととの事である。この件に関しては多少なりともホッとした。

 

問題は肺の部分である。

一か所は右肺の下の部分で、これに関しては以前の手術のように削除可能であるようだ。

しかし、もう一か所が問題で、縦郭と呼ばれる部分に腫れがあるとの事だった。

右肺と左肺とに挟まれた部分で、血管やリンパ節などが集まった部分である。

実は、五月の手術でもこの縦郭の一部を切除ししている。

その同じ場所に今度は2~3センチ程の腫瘍が出来ていると言う事らしい。

CT画像を見せてもらったが、確かにはっきりと映っている。

 

縦郭のリンパ節にできた部分は所謂「数珠繋ぎ」のように繋がっていると言う事である。

この部分を全部取るにはリンパ節を切除することになるが、一掃して切除することが難しいらしい。

また、手術も開胸手術で負担も大きく、危険性も高い。また、仮に手術で切除できても再発する可能性が高く得策ではないと考えていると言われた。

 

それでは他にどういう治療法があるかと言えば、化学療法(抗がん剤)らしい。

放射線治療についても聞いてみたが、あることはあるが、化学療法の方がお勧めと言う事だった。

 

どうも、自分としては化学療法を否定するつもりはないが、今年の一月から5~6回の抗がん剤治療を受けても肺の腫瘍は小さくなったわけではないことから懐疑的な考えを持っている。

抗がん剤の種類を変えていくと思うと言われたが、納得できなかった。

外科手術のように腫瘍に直接的に影響を及ぼす放射線の治療も同時に実施できないものかと考えている。

現在の病院の医師の考えが放射線治療にあまり積極的ではないと感じたのは以前にも書いた。

手術偏重の流れがあるのではないかと思う時がある。

それと、色々な分野の手術実績を比較するサイトを見たときに、病院によって得手不得手があるような気がする。

そのサイトによれば、当病院の呼吸器外科の手術実績は少ない。半面、大腸がんや肝臓がんでは目覚ましい実績があり、素晴らしい面もある。

それと、所謂総合病院であるため患者数は多いが、癌の専門病院ではない事が以前から残念だった。

呼吸器外科に関してやはり国立がんセンター中央病院や癌研有明が有名である。

 

明日は主治医のN医師の診察がある。

以前のように放射線治療に対してあまり積極的でなければ、セカンドオピニオン制度を利用して国立がんセンターの医師に話を聞く機会を得てみたいと考えている。

 

肺に関しては想定通りであり、今後の治療を考えなくてはならないが、肝臓に関しては自分としては嬉しい結果であり、それだけでも気持ちが多少なりとも軽く思えた事が良かった。