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明日への轍

齢五十を過ぎて、ある日大腸がんが見つかる。
手術から回復したと思った一年後、肝臓と肺へがんが転移。
更に続くがんとの付き合いを記録します。

今日から治験が始まる。 ニボルマブ(オプジーボ)が自分に効果があるのかどうか。

 

以前の抗がん剤は、何時間も掛かることがあった。

標準的な大腸がんの抗がん剤で、三日間50時間程も点滴に繋がれていたことがあった。

そのために、三日間入院していたこともある。

病院を変えてからは一日だけ病院で点滴を受けて、後の二日は携帯用の入れ物に抗がん剤を入れて家で生活しながら治療をしたこともあった。

 

今回の治験薬は薬の投入時間は10分程だそうで、以前の抗がん剤とは違う。但し、検温と採血そして心電図の検査がやたらとある。

どういう具合を調べたいのかは何も分からない。そんな事はどうでもいいけども。

効果がある薬かどうかが最大の関心事。

 

仮に効果が無かったと判断されても、それっきり今後の治験が受けられないということではないようだ。

でも、次々に色んな治験を受けられるというわけでもないらしい。

効果のある薬に出会えるまで、次々に試せれば可能性も膨らむのに。

 

 

検査漬けである。

 

一日目は 採血、レントゲン

二日目は、バリウムを飲んでのCT、超音波診断

三日目は、生研。

 

この生研というのは初めてだった。要は腫瘍の採取である。

部分麻酔を掛けて腫瘍のある部分に注射器のようなものを刺して腫瘍を採取するようである。

飽くまでも治験であり、どういう種類の腫瘍があって今回の治験にどういう効果があったのか、無かったのかを調べるためのものである。

通常は、現在腫瘍がある部分(内臓)に直接刺して採取するようだ。

但し、自分の場合は通常と違っている。

肝臓の腫瘍が原因で、背中と脇腹の中間あたりの皮膚に少々瘤の様に盛り上がりがある。その中にも勿論腫瘍がある。

触って痛いものではないが、その部分から採取しましょうと云うことになった。

直接に内臓部分に針状のものを刺すことを考えれば、相当安全である。医師もそう言っていた。

 

午前中から手術着のようなものを着せられ、紙の帽子を被った。 見た目は手術の患者そのもの。

しかも、ストレッチャーで運ばれた。 

時間はほんの一時間弱程度。  部分麻酔をするときに少しちくっとするぐらいで特に痛くもなかった。

 

これで、一通りの検査は終了のようである。

あとは、これまでの検査等を総合的に勘案して治験のGOサインがでるかどうからしい。

 

 

7月にブログを書いてから四カ月が経ってしまった。  色々あって更新する気になれなかった。

 

一番大きな原因は、効果のある抗がん剤がこれ以上ないので、新たには抗がん剤を処方できないと言われたことである。

九月の事だった。

 

私:抗がん剤が出せないってどういうことですか。

医師:効果がないと判断された以上、これ以上出せないんですよ。

私:だって、確かにCTの画像上は進んでいるように見えますが、縮小までいかなくてもある程度の現状維持に効果があると言う見方もできるんじゃないですか。

医師:現状では効果がないとしか判断できません。効果がない以上、継続して投与することはできないんです。

私:出せないって、それじゃあどうすればいいんですか。このまま何もしなくても進まないならいいけど、そういうことはないんでしょう。

医師:少しづつでも進行するかもしれませんね。

私:癌が無くなるほどの効果を期待できなくても、少しでも現状維持ができればと期待しますよね。

  それでも処方できないっていうんですか。

医師:現状では効果のある抗がん剤がないので、これ以上出せません。

私:治療もしないで、どうするっていうんですか。

医師:自然に任せるということになりますね。

 

冷たい言葉である。この時は本当にそう思った。

自然に任せて、病気が進むのをただ見守る? そんなことはしたくなかった。

 

担当医師に、別の病院でのセカンドオピニオンを受けるための紹介状を依頼した。

病院は有明にあるがん専門の病院だった。

 

結論から言えば、同じ答えだった。

でも、せめて以前の経口薬を継続して処方してくれることを密かに期待していたが、やはり無理だった。

その医師からは年末にも新しい抗がん剤が承認される見込みであるので検査をしてもらって処方が可能かを調べて貰ったらと言われた。

 

一週間後、再度、元の主治医にセカンドオピニオンの結果を説明した。

病院と主治医との関わりを断つわけにはいかない。継続的な診察とCTを撮って状況を把握していかなければならないのだ。

 

11月の診察の時に治験をお願いした。治験に関しては何の知識もなかった。とにかく可能性だけだった。

主治医からは治験について、過度な期待を持たないようにと推測されるような説明があった。

海のものとも山のものとも分からないような、薬とは呼べないようなものを、ある意味人間で実験するような説明だった。

しかも、治験のためには一カ月程の入院も必要であると聞いた。

 

その説明を聞いたときに、残された時間を病院で過ごすことに意味があるのかを考えてしまった。

治療を諦めるならば、どうせ効かない薬のためにだとすれば、無駄な時間の使い方だと思った。

悩んだ。

 

すぐにでも連絡があるのかと思ったが、一週間しても二週間しても連絡がなかった。

そして11月の20日に主治医から連絡があった。

 

ニボルマブ(オプジーボ)の改良型を投与する第1相試験だった。

日本でも数人。世界で数10人らしい。

この名前を聞いただけで効きそうな期待感を持ってしまうのも、無理からぬ話だろう。

あまり期待して、駄目だった時の落胆も大きいかもしれないが、希望を持たなければやっていけないものだ。

 

前回から半年近くもブログを書いていなかった。理由は特に思い当たらないが、何となく億劫になっていた。
でも、自分の記録であるから、出来る限り書いていこう。

抗がん剤治療は、点滴による治療から経口薬による抗がん剤治療になった。原因は、肺炎の危険性があると指摘されたからである。
CTの画像が何となくであるが、白っぽいものに変化しているとI医師から言われた。
自分には判らないような変化であるが、医師から見ればそうなのであろう。
薬剤性肺炎になれば呼吸器を付けた状態になる事も有り、重大なリスクであると説明された。

それを避けるために経口薬の抗がん剤が開発されたと言う事である。但し、やはりその効果は以前の点滴の抗がん剤に比べて低いと言う事でもある。それでも、肺炎になるリスクを考えると此方を選んだ方が良い。また、医師としてそれしか選択できないようである。

最初はロンサーフという経口薬だった。
これを二週間飲んで一週間旧薬する1クールを二回行った。副作用としては、顔に多少の赤っぽい斑点と血液検査で血小板の減少が見られた。
でも、CTを再度撮ってみて、あまり効果がないと判断された。

次に現在のスチバーガである。
この薬は副作用として手足症候群(特に足の圧力が掛かる部分が痛くなる)があった。
三週間目にこの症状が出た。最初は痛くても最後まで飲み続けようと飲み切った。症状は最悪だった。

歩くのが困難な程に痛みが強かった。トイレに行くにも痛くて何かに捕まらなくては歩けない状態になった。

会社を四日休んだ。そして一週間後に回復した。

 

二回目が始まった。今度は十日飲んで症状が出た。今回はこの段階で薬を止めて医師に相談した。

医師は、薬効を確認できないので、後一週間位飲んでそれからCTを撮ってから判断したいと説明された。

薬を止めて四日後の夜に別の副作用が出た。肝臓に炎症を起こす副作用である。

腹痛(肝臓なのであろう)がして、夜寝られない、寝返りも打てない。この症状が一晩中続く。キリキリ痛む状況ではないが、重くずっしりした状態が長く続く。尿も濃い黄色状態である。

余りの状態であったことから木曜日であったが、病院に電話してI医師に連絡して診察してもらった。 

CTも同時に撮った。自分の体がどうなっているのか心配になるほどだった。

 

結果的に原因は、副作用による、肝臓の炎症。

血液検査の結果、肝臓の数値が通常の10倍から20倍になっていた。

尿検査の結果も最悪だった。

医師からは、肝臓が弱っているが、安静にするしかないと言われた。入院するか自宅で安静にしているかと聞かれ、自宅で静養した。

五日後に再度診察を受けた。血液検査の結果は、γ-GTP以外は、通常の数値に戻っていた。

また、癌マーカーの数値も良好だった。更にCT検査の結果、肝臓の癌は、抗がん剤の効果が見え始めて来ていると言われた。

つまり、スチバーガは副作用はあるが、治療の効果もあるようだ。

これは、いままでの抗がん剤ではなかった程の目に見える効果であり、嬉しかった。

でも、副作用の手足症候群と肝臓の炎症による腹痛は辛いものだ。だが、これを何とか我慢出来れば癌の治療に光が見えてくるような気もする。

 

年明けて抗がん剤治療も八回目 二週間に一度の抗がん剤がである。

種類の違う別の抗がん剤(アービタックス)、もその間の週に行っていて、結果的に毎週の抗がん剤となっていた。

しかしながら、体中に発疹ができて最初の内は眠れない程だった。副作用として知られているものだったが、結構酷くて背中から手足まで皮膚の弱いところにすべて出たような感じだ。

それを医者に伝えると「それじゃあ一時お休みしましょう」と言う事だった。

 

その発疹はお休みしたせいか、ステロイドが効いたのか、大分ましになった。発疹の後はまだ残っているが、たぶんこれは皮膚が自然に更新されれば見えなくなるだろう。

 

昨日の抗がん剤の治療では直後から吐き気がでた。それほど強いものではなく、実際に吐くような気はしないものの、どうにも気分が悪い。

食事も受け付けなくなった。以前に感じたあのコメのご飯に「ウっ」とくる感じである。

夕方に家に着いたが、食事は勿論受付なかった。すぐに寝た。二度ほどトイレに起きたが、朝まで十二時間程寝た。

でも、抗がん剤が体から排出されるようになれば、こんどは便で出さなければならない。便秘では困るのだ。

だからやはり食事はちゃんと取らなければならない。辛いものだ。

 

次回の23日に再度CTを撮る予定である。果たして癌はどうなっているか。小さくなっていることを期待したいが、そうでなくても新たな腫瘍が出なければ良いものだが。