男性も強姦罪の被害者に?女性も強姦罪の加害者に? | 福岡の弁護士による、身近な法律、その他時事ネタについてのブログ。

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福岡の 弁護士 朝雲 秀 のブログです。身近な法律、その他、自分の興味のおもむいたこと(金融、経済など)について、書いています。

 2015.10.12のブログで、性犯罪の刑法改正について、法務大臣が法制審議会に諮問した話を書きましたが(諮問したのは10.9)、諮問に対して、法制審議会の答申が出たようです(9.12)。内容は、諮問した時とあまり変わっておらず、強姦罪の非親告罪化、強姦罪そのほかの厳罰化(法定刑を重くすること)、強盗を行った者が強姦を行った場合(強盗強姦罪)は厳罰化されていますが、強姦を行った者が強盗を行った場合にも同罪とすること(2015.10.12のブログ参照してください。)、強姦罪に性別の差をつけなくすることなどです。諮問の時には、教師と生徒、雇用主と従業員と言った支配的な地位を利用した性行為の強要も犯罪化する内容がありましたが(2015.10.12ブログ参照してください。)、今回は見当たりません。ただ、親などの監護者の地位を利用して子供に性犯罪をすることも犯罪化する内容になっています。
 親告罪とは、起訴をするのに被害者の告訴が必要な罪のことで、強姦罪のほか器物損壊罪なども親告罪です。強姦の際に被害者がけがをしたような強姦致傷などは、現在でも非親告罪で、告訴は不要です。
 強姦罪は、現在加害者である男性が被害者である女性に姦淫行為をする罪、と決まっていますが、性別の差をなくすようなので、男性が男性に、女性が女性に、女性が男性に、というものも犯罪化され、それに伴い、当然ながら、行為も姦淫に限らなくなります。しかし、現在でも、強制わいせつ罪(姦淫行為を伴わずに、わいせつな行為をする罪)は、加害者も被害者も男女を問わない形になっているので、改正される強姦罪の行為の内容が、姦淫行為に限定されないとなると、強制わいせつの行為とどこがどう違ってくるのか、疑問です。強姦罪は現在3年以上の懲役(答申の内容は5年以上)で、強制わいせつ(6か月以上10年以下)に比べ、だいぶ重くなっていますが、違いは姦淫行為の有無です。つまり、現在の刑法は、姦淫行為(またはその意思)があったかなかったかで刑罰の重さを大きく変えています。しかし強姦罪の行為の内容を姦淫行為から広げるとなると、行為の内容を余程はっきり定義しないと、強制わいせつ罪との差があいまいになり、強姦を強制わいせつより重く罰する理由もはっきりしなくなる恐れがあります。

2015.10.12ブログ「セクハラが犯罪に?」