奇怪な絵だけではなかった、正統的狩野派・四条円山派・浮世絵まで

 暁斎の多才ぶりが余すことなく詰め込まれた稀有な展覧会:

 「 ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展

 

 

近年その画業の再評価が進んでいる河鍋暁斎の展覧会が

Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷)で開催中だ。

 

 

かつて三菱一号館美術館の暁斎特別展へも行き、国立博物館で数点見たことがあり、

常識破りが暁斎の特色だと思っていた。

 

浮世絵師歌川や狩野派で学んだ後、既定路線では飽き足らず、

自由奔放に筆をすべらせた暁斎。

 

 

ただ、アカデミズムに反旗を翻したナビ派などとは異なり、

古典的・正統派の絵も決して捨て去ってはいなかった。

 

それを今回の幅広い画風を網羅した展覧会で、改めて実感したのだった。

 

 

*本エントリーの写真は全てブロガー内覧会の折りに特別な許可を得て撮影しています。

 

 

メインビジュアルにもなっている彩豪華な「地獄太夫と一休」は

別バージョンを見たことがある。

 

相変わらず、地獄図の着物の柄が画中画のようで楽しい。

 

美人画を描かせても素晴らしい力量なのに、

骸骨やおちゃらけキャラと組み合わせるなどして均衡を破っている。

なんたる大胆不敵!

 

 

「地獄太夫と一休」x2

 

 

 

ただ、こうした画風ばかりに目にしてきたせいで、

奇想ばかりを追求した画家、という印象を持っていたのだがー

 

今回は奇想以外の正統派の絵も数多く並び、

ひとりの絵師の個展とは思えないほどの

バリエーションだった。

 

 

その画風は狩野派や四条円山派なども含み、

生涯幅広く活動したことがうかがわれる。

 

本展覧会の元になるイスラエル・ゴールドマン氏のコレクションの幅広さ

ゆえなのだろう。

 

 

中でも下の写真の左は、まるでモダンアート!

と驚いた。

 

 

左:「雨中さぎ」

 

 

 

以下の画帖、「暁斎画談」右ページにも

この図柄が出ているけれど、上記の絵は、黒の背景に

雨模様が縦じま模様のように配されていて、どこか西洋風。

 

 

 

 

かと思えば同じ鷺を古典的手法でのびのびと描いている。

 

 

 

 

墨絵もあれば、南画風?の絵もある。

 

 

 

 

そしてサプライズは続く。

キリストの磔刑図まで目にすることになろうとは!

 

しかも西洋人が描いたことのないキリスト像。

 

足元には様々な神々。

古今東西の神たちを、和気あいあいと共存させている。

シリアスになることなく、調和を訴えかけるように。

 

 

左から2番目:「五聖奏楽図」

 

 

エスキモーを描いた絵もあり、

世界にも目を向けた視野の広さは独特だ。

 

 

(ある絵の中にエスキモーが描かれていたことは、

今回ブロガー内覧会の

Takさんxチバヒデトシさんx黒田和士学芸員のギャラリートークで披露された。

ポイントを抑えたトークをありがとうございました!)

 

 

 

内国勧業博覧会で賞を獲って以来トレードマークとなった

カラスの競演も。

 

 

 

 

魑魅魍魎を描いた自由闊達な筆さばきを見ると、暁斎は

”人間や世の中の本質は、きれいごとだけでは描ききれない”、

とでも言いたげだ。

 

 

でもその一方で、伝統にも立ち返り、

一か所にとどまらない。

 

淀みに浮かぶ うたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし・・。

 

「方上記」の一文を思い起こさせるような

とどまるところを知らない変幻自在な筆さばき・画業の幅を

改めて実感したのだった。

 

 

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「 ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展

開催期間: 開催中 ~ 4/16(日) ※会期中無休

開催場所: Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷)
開館時間: 10:00-19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

公式サイト: http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_kyosai/