プロローグ1-2
「ボス。」
破壊されたはずの僕の耳に音が響いた。
短く端的に僕を呼ぶ声。
いいや。
俺を呼ぶ声。
彼女はいつもそうだ。気づいたときには俺の斜め後ろに立っていた。
気づけばいつも同じ場所に居る。
俺がやめろと言うまで。
「ボス。」
彼女はもう一度俺を呼んだ。
「行くぞ。」
「はい。」
俺も短く端的に答える。
そして彼女はそれ以上に。
俺はいつ自分のことを俺と呼ぶようになったのだろう?
プロローグ1-1
信号が青に変わった。
一斉に立ち止まっていた足達が動き出す。
「ガシャコーン。ガシャコーン。」
僕はそんな効果音を口ずさむ。
「ガシャコーン。ガシャコーン。」
不意に無音が訪れる。
この街には似合わない、それどころかこの街にはありえない、存在しないはずの静寂。
「キーン。」
僕の耳にうっすらと響き始める。
「キーン。」
その音は徐々に大きくなる。
「キーン。」
そしてとてつもなく大きくなる。大きくなって僕の耳を破壊する。そして耳だけじゃなく、僕を、僕自身を破壊する。
破壊した。
続く。