一部加筆して再掲載したものです。
2015年3月13日(金)日本テレビ系列「金曜ロードSHOW!」にて
「かぐや姫の物語」が放送予定です。
放送時間は19:56~22:54 ノーカット・テレビ初登場です。
この機会にぜひご覧ください。
作品について金曜ロードSHOW!公式ウェブサイト内
作品ラインナップのページが設けられていますので
詳細についてはそちらをご確認ください。
金曜ロードSHOW! 作品ラインナップ かくや姫の物語
https://kinro.jointv.jp/lineup/150313
φ(.. ) どもです。
今回は先日お伝えしていた高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」を観た
感想について記そうと思います。
何故「かぐや姫の物語」なのかといいますと
お正月元旦に観るアニメは純和風のアニメでも・・ということで視聴したからです。
高畑勲監督と言えば昭和のアニメ成長期を支えた重鎮のお一人で
アニメーションの世界観を魅せる緻密で巧みな視点と演出、
キャラクターの心の内を人物だけの描写に定めず、
そのシーンに描き出されるものにも表現するといった繊細な感性によって
生み出された作品はアニメ描写が観た人に与える印象のクオリティーを
底上げしたといっても過言ではないと思います。
私個人として高畑勲監督映画作品で思い出されるのは「平成狸合戦ぽんぽこ」や
「おもひでぽろぽろ」、「火垂るの墓」ですが、
今回視聴した「かぐや姫の物語」は映画公開前、前作の「ホーホケキョ となりの山田くん」と
似た手描きタッチが印象に残っていました。
「かぐや姫の物語」でもいわゆる「塗り残し」の表現手法を踏襲し、
それ以外は新たな試みで作られていると思われます。
塗り残し・・・敢えて世界を緻密に描くのではなく、
塗り残すことで観る者の想像力を働かせるというイマジネーションを活性化させる演出法。


ストーリーについては原作が日本最古の物語といわれている「竹取物語」で
物語の本筋は変更なく、登場人物の心理を高畑氏が得意とする深みのある演出描写で
魅せています。
描写面では平安時代の絵巻物の描写タッチを細かく調べ、
その当時の描き具合をアニメで表現するという、一見ラフな絵に見えそうで
実はとても手間のかかる作業を行っています。
下の絵巻物のような線の質感を鉛筆と筆を用いて全編描かれています。※
※一部の描写(水面や御簾など)にCGやデジタル合成を活用している箇所はあった
↓実際に参考に調べていた「信貴山縁起絵巻」の書籍を見るシーン


この特徴ある描き方は他の作品には無い労力が追加されています。
線が途切れている箇所が多くあり、
ペイントを施すと下の画像のように色漏れを起こしてしまいます。

そこで、別にしっかりと線をつないだ輪郭線を描くパート(塗線作画)を設けていました。
全編にわたって二重の作画パートで制作が進められているといっても過言ではないでしょうね。
色を塗った状態で塗線部分を消した状態。

特色ある演出法の模索から今作品の上映に至るまで8年の月日がかけられているとのこと。
このような線そのものの特徴を活かした描写を前面に出した背景には
これまでのアニメの映像表現では線の個性が整理されて
均一化され個性が失われてゆくことに難色を示しており
視聴者の想像力を奪いかねないことに懸念していたことが大きいです。

画像引用 2013年11月放送 NHK総合 「ニュースウォッチ9」より抜粋
上の制作シーンに近いシーンのカット。
主人公の姫の髪も繊細に描かれていて、
これが一コマ一コマ桜の花びらと共に動くのですから非常に見ごたえがあります。
花びらも一枚の作画用紙に記されていたはずですのでとても労力のかかる作業ですね。

線における表現は非常に見ごたえがありました。
感情表現も輪郭線の描き具合で存分に発揮されています。

その他印象的だったシーンです。
冒頭のシーンで翁が斬った竹を引き下ろす動作も
リアルなSEと共に非常に見ごたえがありました。
こういった絵画のようなキャラクターでツボを得た動作を見せること自体、
初めて見ると新鮮な印象を与えます。

その人間の動作をよく心得ているだけあって、赤ん坊の動きは非常に見ごたえがありました。
赤ん坊の柔らかさまでも伝わるような描写です。

地元の子供と翁が赤ん坊への声掛け合戦を行い、たまらず駆け寄って抱き寄せるシーンは
涙腺が緩んでしまいますw。今は亡き俳優地井武男氏の演技力も大きいでしょうね。

当然ながら、横顔の口元描写はしっかりと輪郭線を動かして描写しています。

影の描写もシーンによって描き分けられていました。
比較的写実的な灯による人影。

和紙に薄い墨を塗ったような日差しによる影描写。
絵巻物的描写を踏襲してか、人物の影はリアルに描くことは無く、
シーンによっては差支えなければ省略していたと思われます。
炎の描写もCGではなく、まるで色鉛筆で描かれているような描写。
意外となかなか見られないかも。

キャラクターでは姫の女童(お世話係)がなかなか女性受けしそうな
コミカルな雰囲気漂う姿でした。声も特徴的で誰かな?と思ったら
女優の田畑智子さんでした。
ある程度キャラクターデザインはキャストの顔をイメージしてるかも?

庭の地面から眺め見る世界を楽しむ姫と媼。
こういった感受性を育むような演出はジブリならではですね。

他にもいろいろ見どころはありますが、高畑作品らしく?空を飛ぶシーンも。
各作品において実に気持が晴れやかな心地の良い心境を示すということはわかりますが
高畑氏なりにもっと人間の根源的な何か伝えたいものがあってのことなのでしょう。
「かぐや姫の物語」は派手なアクションは無いですが、
じっくりと作業を重ねてゆく高畑氏ならではの
まるで深煎り珈琲のように旨味がじっくり抽出されているかのような描写演出で
非常に見ごたえがあります。
NHKのニュース番組インタビューで高畑監督がおっしゃていた
背後にあるはずの本物=「よすが」を感じ取ってほしいという言葉は
3DCGアニメーション隆盛著しい昨今のアニメ―ション界に
忘れてはならないひとつの観方を示しているのではないかと思います。
それと同時に高畑監督は絵描きの気質が強いようにも思えました。
よかったらまだ見ていない方がおられればぜひ作品視聴してみてください。
私もメイキング映像が興味があるのでまた、発見などがあれば追記するかもです。
以上、映画 かぐや姫の物語と観た 感想でした。
読んでいただき、ありがとうございました。ではまた(^^)ノシ。
かぐや姫の物語 公式サイト
http://kaguyahime-monogatari.jp/
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