ツイッター買収、大物企業が「そっぽ」を向いたワケ

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同社の第3四半期決算が発表となる10月27日を期限とする身売りの可能性が報じられて以来、エンタメの巨人ウォルト・ディズニー・カンパニー、IT界の怪物グーグルやマイクロソフト、通信大手ベライゾン、業務情報システム大手のセールスフォースなどの「大物企業」が買収に関心を示していると伝えられたが、結局すべての候補が慎重姿勢に転換した。

それに合わせて、9月23日に身売り話が報じられてから35%も上げたツイッター株も、グーグルの撤退が10月6日に伝えられると、一日で20%急落した。その理由を一言で要約するなら、「噂される200~300億ドルの価値はなく、投資効果はせいぜい77億ドルにとどまる」に尽きる。

ツイッターは、現在でも3億1300万を超える月間アクティブユーザー数を誇る企業であり、企業の市場調査やマーケティングに果たす役割も大きい。それなりの利用価値はあるのだが、抱える負債がかなり大きく、また他のソーシャルメディアに比べて、ターゲット層がぼやけ、明確なソリューションを提供しずらい体質であることがわかる。それが、敬遠される原因だ。

■ なぜ買収に名乗りを上げた企業の株価が下がったのか

セールスフォースはツイッターの有力な買い手候補だ。顧客管理ソフトウェアで知られる同社は、マーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)が、「ツイッターのデータベースは貴重な宝石のようであり、我が社のビジネスに欠かせない資産になる」と述べていた。

ところが、投資家や市場はこれに否定的に反応し、同社株は10月5日に8%も下落してしまった。あわてたベニオフCEOが「私はツイッターを買うとは言っていないし、買わないとも言っていない」と言明すると、セールスフォース株が回復を始める有様だ。

投資家たちが売りを浴びせたのは、ニューヨークを拠点とする米国みずほ証券のアナリストたちが、「もしセールスフォースがツイッターを買収した場合、セールスフォースの企業価値の25%に相当する170億ドルが損なわれるだろう」との爆弾分析を公表したからである。

米国みずほのアナリストたちは、「短期的にツイッター買収で収益は上がらない。それどころか、ツイッターの既存のストックオプションに対する支払い義務などで、セールスフォースの手持ちの現金が吹き飛ぶ」との見解を明らかにした。

米国みずほ証券はさらに、「たとえ買収が成功しても、セールスフォースの企業価値をもとのレベルに回復させるには2~3年かかる」との悲観的な見方も示している。

セールスフォースの株価の動きを見たディズニー、グーグルやマイクロソフトは、撤退表明や慎重姿勢を取らざるを得なくなった。

ロイター通信は、こうまとめている。「ツイッターは来年、2億7000万ドル程度の赤字を出すと見込まれている。ここに約1億ドルの金利を足し戻し、研究開発およびマーケティング費約17億ドルの半分を買い手企業が削減すると想定すると、営業利益は7億ドル近くとなる計算だ。モーニングスターによると、ツイッターの加重平均資本コストは約9%であり、これに匹敵する投資収益を生み出そうとすれば、税率をゼロと甘く見積もっても、77億ドル以上の買収額は支払えない。これは現在の時価総額の半分程度だ」。

■ ビジネスモデル自体が問題

ツイッターは多くの問題を抱えている。同社に忠実に投資してきたクリス・サッカ氏でさえ、「新しい息吹を吹き込まない限り、今後2年間で実質的な改善が得られるとは思えない」と述べている。

2014年6月までツイッターの元最高執行責任者(COO)を務めたアリ・ロウガニ氏は米CNBCテレビのインタビューで、「ツイッターは基本的にソーシャルメディアではなく、つぶやきデータ収集のプラットフォームだ」と断言。そして、「現在のツイッターの売上第1位は(ツイッター利用者がクリックする)広告収入だが、本来の強みであるデータ加工や売上を強化しなければならない」とした。

また、テッククランチのコラムニスト、キース・ティーアー氏は、「ツイッターが、つぶやきの内容の検索やインデックスをブロックしてしまったことで、自らの発展の可能性を摘んでしまった」と批判する。同氏は、「経営陣の迷走や内紛を終わらせ、自社株買戻しで非公開企業に戻り、ビジネスモデルを再構築するのも一策だ」と提言している。

さらに、ツイッターの買い主候補として名前の挙がったディズニーの子会社ABCニュースは10月7日、「ツイッターは同業者が成長を続けるなか、業績が伸び悩む会社であり、利益が上がるようにするのは難しい。そのため、買収候補たちが大きすぎるチャレンジだと見ている」と伝えた。

確かに、20歳前後の顧客ベースに特化したスナップチャットに比べ、ツイッターの顧客層は広すぎる。また、スナップチャットのユーザーは、広告をしっかり見ることが報告されているが、ツイッターはまねができない。

ツイッターは身売りを先延ばしにして、初心に戻ってその強みであるデータ販売に力を注ぎ、同時にビジネスモデルを再構築する時期に来ているといえよう。それはひとえに、経営陣の迷走を止めることであり、大胆な改革者の出現が待たれる。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)引用で魅力がない企業なのだろうか。

同社の第3四半期決算が発表となる10月27日を期限とする身売りの可能性が報じられて以来、エンタメの巨人ウォルト・ディズニー・カンパニー、IT界の怪物グーグルやマイクロソフト、通信大手ベライゾン、業務情報システム大手のセールスフォースなどの「大物企業」が買収に関心を示していると伝えられたが、結局すべての候補が慎重姿勢に転換した。

それに合わせて、9月23日に身売り話が報じられてから35%も上げたツイッター株も、グーグルの撤退が10月6日に伝えられると、一日で20%急落した。その理由を一言で要約するなら、「噂される200~300億ドルの価値はなく、投資効果はせいぜい77億ドルにとどまる」に尽きる。

ツイッターは、現在でも3億1300万を超える月間アクティブユーザー数を誇る企業であり、企業の市場調査やマーケティングに果たす役割も大きい。それなりの利用価値はあるのだが、抱える負債がかなり大きく、また他のソーシャルメディアに比べて、ターゲット層がぼやけ、明確なソリューションを提供しずらい体質であることがわかる。それが、敬遠される原因だ。

■ なぜ買収に名乗りを上げた企業の株価が下がったのか

セールスフォースはツイッターの有力な買い手候補だ。顧客管理ソフトウェアで知られる同社は、マーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)が、「ツイッターのデータベースは貴重な宝石のようであり、我が社のビジネスに欠かせない資産になる」と述べていた。

ところが、投資家や市場はこれに否定的に反応し、同社株は10月5日に8%も下落してしまった。あわてたベニオフCEOが「私はツイッターを買うとは言っていないし、買わないとも言っていない」と言明すると、セールスフォース株が回復を始める有様だ。

投資家たちが売りを浴びせたのは、ニューヨークを拠点とする米国みずほ証券のアナリストたちが、「もしセールスフォースがツイッターを買収した場合、セールスフォースの企業価値の25%に相当する170億ドルが損なわれるだろう」との爆弾分析を公表したからである。

米国みずほのアナリストたちは、「短期的にツイッター買収で収益は上がらない。それどころか、ツイッターの既存のストックオプションに対する支払い義務などで、セールスフォースの手持ちの現金が吹き飛ぶ」との見解を明らかにした。

米国みずほ証券はさらに、「たとえ買収が成功しても、セールスフォースの企業価値をもとのレベルに回復させるには2~3年かかる」との悲観的な見方も示している。

セールスフォースの株価の動きを見たディズニー、グーグルやマイクロソフトは、撤退表明や慎重姿勢を取らざるを得なくなった。

ロイター通信は、こうまとめている。「ツイッターは来年、2億7000万ドル程度の赤字を出すと見込まれている。ここに約1億ドルの金利を足し戻し、研究開発およびマーケティング費約17億ドルの半分を買い手企業が削減すると想定すると、営業利益は7億ドル近くとなる計算だ。モーニングスターによると、ツイッターの加重平均資本コストは約9%であり、これに匹敵する投資収益を生み出そうとすれば、税率をゼロと甘く見積もっても、77億ドル以上の買収額は支払えない。これは現在の時価総額の半分程度だ」。

■ ビジネスモデル自体が問題

ツイッターは多くの問題を抱えている。同社に忠実に投資してきたクリス・サッカ氏でさえ、「新しい息吹を吹き込まない限り、今後2年間で実質的な改善が得られるとは思えない」と述べている。

2014年6月までツイッターの元最高執行責任者(COO)を務めたアリ・ロウガニ氏は米CNBCテレビのインタビューで、「ツイッターは基本的にソーシャルメディアではなく、つぶやきデータ収集のプラットフォームだ」と断言。そして、「現在のツイッターの売上第1位は(ツイッター利用者がクリックする)広告収入だが、本来の強みであるデータ加工や売上を強化しなければならない」とした。

また、テッククランチのコラムニスト、キース・ティーアー氏は、「ツイッターが、つぶやきの内容の検索やインデックスをブロックしてしまったことで、自らの発展の可能性を摘んでしまった」と批判する。同氏は、「経営陣の迷走や内紛を終わらせ、自社株買戻しで非公開企業に戻り、ビジネスモデルを再構築するのも一策だ」と提言している。

さらに、ツイッターの買い主候補として名前の挙がったディズニーの子会社ABCニュースは10月7日、「ツイッターは同業者が成長を続けるなか、業績が伸び悩む会社であり、利益が上がるようにするのは難しい。そのため、買収候補たちが大きすぎるチャレンジだと見ている」と伝えた。

確かに、20歳前後の顧客ベースに特化したスナップチャットに比べ、ツイッターの顧客層は広すぎる。また、スナップチャットのユーザーは、広告をしっかり見ることが報告されているが、ツイッターはまねができない。

ツイッターは身売りを先延ばしにして、初心に戻ってその強みであるデータ販売に力を注ぎ、同時にビジネスモデルを再構築する時期に来ているといえよう。それはひとえに、経営陣の迷走を止めることであり、大胆な改革者の出現が待たれる。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)引用