人工知能を描く小説や漫画続々…人間らしさとは?を問う「未来の隣人」について | 「365日の言の葉」

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AIを治療する人間の医師を主人公にした漫画『AIの遺電子』(c)山田 胡瓜



【今日テレビ東京で放送された、「ウソかホントかわからない やりすぎ都市伝説スペシャル2016夏」。毎年恒例の大人気番組で、都市伝説テラーが色々と都市伝説を語る内容である。中でも、関 暁夫さんが語る世界規模の都市伝説は、秀逸とも言えます。そんな中、度々語られるのが「AIと人々の関係性」。それに関する興味深い内容について書いてみました】




囲碁の世界トップ棋士を破り、入試問題さえも解き、はたまた小説も書く。人工知能(AI)の目覚ましい進歩が報じられる中、人とAIが共生する未来を描いた小説や漫画が続々と刊行されている。鋭い現実認識と奔放な想像力で紡がれた物語は、「人間らしさとは?」という古くも新しい問いを投げ掛けている。



◇「自由」へと希求
「常識に揺さぶりをかけられるのがSFの魅力。今の技術の延長戦であり得そうなアイテムはたくさん導入した」作家の奥泉 光さん(60)は、今月22日に出版した長編小説『ビビビ・ビ・バップ』(講談社)の執筆をそう振り返る。



舞台は、AIが生活に溶け込んだ21世紀末。僕の葬式で、ピアノを弾いて…。天才ロボット開発者から、奇妙な依頼を受けた主人公の女性ジャズピアニストが、不可思議な"事件"に巻き込まれる。やがて世界中のコンピューターがウイルス感染し、人類を危機に追い込む"大感染(パンデミック)"再来の予兆も囁かれ、物語は波乱の展開を見せる。作中では、AIに歯が立たなくなった将棋界は、伝統芸能として息をつないでいる。片や人型ロボットのアンドロイドは、ジャズの高度な即興演奏にも挑む。人とAIの境界線がぼやけ、既存の価値観が揺さぶられる未来が広がる。



「囲碁のプロ棋士を破ったAIの衝撃は、人間固有の能力と思われてきた感覚的な判断で、人間をしのいだことにある」と、奥泉さんは語る。「すると、芸術的な創造性も計算可能かも…という見方もできる。AIとの対比で、私たちがリアルと呼んできたものは何なのか?が問われるようになる」一方で、変わらないものもある。物語では、個人の健康状態や行動が徹底管理された社会に風穴を開けるように、政治的・文化的な熱気に包まれた1960年代の東京・新宿の光景が挿入され、電脳網を遮蔽できる"電磁波遮断(ウェーブカット)"区画も度々登場する。「どちらも『自由』のイメージですよね。情報の嵐や管理社会の息苦しさから逃れたいという気持ちは、今後更に出てくると思う」



◇今や身近な存在
今、見通しがたい未来への関心を、多くの作家が共有している。松浦 寿輝さん(62)が、今月刊行した短編集『BB/PP』(講談社)の表題作は、最高品質のAIを搭載した"美しい女"を伴侶にした男の奇譚(キタン)。川上 弘美さん(58)の新刊『大きな鳥にさらわれないよう』(講談社)も、AIがいる近未来の人類史を紡いでいる。見た目は人間と同じで、感情も持つヒューマノイドが国民の1割を占める近未来で、人間の医者がAIが抱える心や体の病を治療する。4月に単行本の第1巻が出た、山田 胡瓜(キュウリ)さん(31)の漫画『AI(アイ)の遺電子』(秋田書店)は、"近未来版ブラックジャック"と謳う作品である。



作者の山田さんは、数年前までウェブ媒体の記者としてIT業界を取材した。「人間が感情移入できるような、"ウェットな人工知能"を研究する人もいた。面白くて共感を呼ぶフィクションが書けるはず」と筆をとった。描かれる症例は多岐にわたる。頭脳を拡張して完璧な記憶を手にした結果、妻を失った凄惨な光景を忘れられずに苦しむ富豪。また、ヒューマノイドの恋人との家族観の違いに悩む男子学生。AIが"隣人"となった日常に、迫り来る倫理問題が見える。「今やAIは、SFではなく身近な存在になりつつある。未来の生活を考えるきっかけになれば…」と、山田さんは話している。



◇技術の進化反映
機械との共生は長くSFの題材の一つであり、仏(フランス)ヴィリエ・ド・リラダンの小説『未来のイヴ』(1886年)には、既に人造人間が登場した。チェコのカレル・チャペックによる戯曲『ロボット(R.U.R)』(1920年)では、人間の労働を肩代わりするロボットが反乱を起こす。機械が人の脅威となるイメージは、その後も繰り返し変奏された。「人間の雇用に与える影響など、AIの導入による社会的な問題が現実感を持って迫ってきていることが大きい」。『戦後SF事件史』の著者・長山 靖生さんは、最近の"AI作品"隆盛の背景をそう分析しており、「技術の進化を反映して、機械などの細かな描写が増えているのも特徴」と話す。



AIやロボットといった異質な存在との交流は、自然と「人間性とは何かを考えさせる」と、長山さんは語る。普遍的な問いを原動力に、想像の翼を大胆に広げた意欲作が今後も生まれそうである。




(参考資料:産経新聞ニュース 生活編 6月20日付)