私としては期待以上のおもしろさでした。
予告からしてホラーな雰囲気で、監督がフェデ・アルバレスとあって前から期待感はあったのですが、かつてのリドリー・スコット監督作品の世界観を踏襲しつつ新しさもある見事なバランスです。
フェデ・アルバレス監督というと『ドント・ブリーズ』の名が挙げられますか、個人的には『死霊のはらわた』のリメイクが好きですね。
いずれにしてもホラーを手掛けてきている監督だけに、今回のエイリアンの新作が1作目にあるホラー路線に回帰しているところでマッチしていたのかもしれません。
しかし同時に疑問が残るところもあります。
今回は『エイリアン:ロムルス』の良さについて語りつつ、その疑問点についても語りたいと思います。
☆前日譚2作の違和感の払拭
ここ近年で製作された『エイリアン』シリーズは2012年の『プロメテウス』と2017年の『エイリアン:コヴェナント』があります。
この2作は1979年のシリーズ1作目『エイリアン』の前日譚を描いた物語です。
この前日譚2作で感じた違和感として、時系列が1作目より前であるにも関わらず1作目よりハイテク感がありすぎる舞台セットです。
何しろ宇宙船内の操作盤のモニターからしてどう見ても前日譚のほうが新しいんですね。
しかもホログラム技術まで披露してしまっています。
これは製作された年代が新しいだけに仕方がないことではあるし、さほど気にすることでもない問題でもあります。
そもそも未来を描いたSF映画なんですが、前日譚に登場するメカニックは結局のところ描き方が現代的なんですね。
VFXも圧倒的に進歩していて、そらそうなるわけです。
1作目の『エイリアン』は70年代の作品で、いくら未来っぽく描写しようとしてもブラウン管テレビみたいな湾曲した画面のモニターにオレンジ色のデジタルの文字が表示されるという、今の感覚からすればレトロな未来描写に映ります。
しかし今度の最新作『エイリアン:ロムルス』はなんとあの70年代テイストのレトロな未来描写をやってのけているではありませんか。
おかげで1作目と比べて見たときの違和感が払拭されてしまっているのです。
これはある意味挑戦的だったのではないでしょうか?
そして単に違和感がないだけでなく、その画面から伝わるワクワク感。
レトロフューチャーといえば表現がズレていますが、この古い未来描写が妙に観ていて楽しいんですよね。
往年の特撮映画が好きな者としては本作の一番の見どころです。
1作目のホラーへの回帰のみならず、舞台セットの描写まで回帰させてしまっていることに感動を覚えました。
今作の制作陣よ、あなたたちは偉い!
★単体としてはおもしろいけど残る疑問点
ここからは本作の疑問点に触れます。
以下、ネタバレを含みますのでまだ観ていない方は注意してください。
1.ウェイランド・ユタニの目的の相違
このシリーズに登場する企業・ウェイランド・ユタニの目的は、1作目ではゼノモーフ(エイリアン)を生物兵器として利用するために宇宙船ノストロモ号の乗組員たちに生きたまま回収させることだったはずです。
しかし今作に登場するアンドロイドのルークによれば、地球外の星に入植するにあたって人間が弱すぎて環境に適応できないため、ゼノモーフのゲノムを人間に投与して強化するためにサンプルを持ち帰るのが目的とのこと。
もとからこれら複数の目的があったか、人間にゼノモーフのゲノムを投与して強化し、兵器としても利用するという意味だったのかもしれませんが、1作目のアッシュと今作のルークとで言ってることが違うような気がします。※
今回の制作陣が新たに独自に作り上げた設定なのでしょうか?
2.『エイリアン:コヴェナント』の続きはどうなる?
今作『エイリアン:ロムルス』に対する疑問ではなくシリーズに対する疑問になります。
今作は時系列としては『エイリアン』と『エイリアン2』の間に位置します。
内容としてもおもしろいし、『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』を観ていなくても楽しめる内容でもあります。
その点で文句はないのですが、それ故気になるのはこれら前日譚2作の続きはどうなっているかです。
『エイリアン:コヴェナント』の、あのもどかしいラストは続きをやってもらわないと納得できません。
なかったことにせず、あちらはあちらで続編を求めます。
https://twitter.com/ongaku_eiga
※【追記】改めて1作目の『エイリアン』を観たのですが、劇中でアッシュはゼノモーフの回収を生物兵器として利用するためとは一言も言ってませんでした。
誤りをお詫びいたします。
同時に、なぜ生物兵器として利用するという記憶が私の中でできてしまったのか、新たな疑問が後になって残ってしまいました。