だって、どうしようもなかったんだもん。。。


今私が出ている映画の宣伝だってプロデューサーは言うし、事務所は全面的にOKを出すし・・・

私に拒否権なんてあるわけもなくこの話をOKした。


私も20歳を超えたことだし、こんな話の一つや二つあったところでおかしくもない年齢だし。

私のつまらない作り物の恋愛報道にこんなに周りがアツくなるなんて思いもよらなくて。


驚く私は、ラブミー部室で自分の映るTVを見ていた。


そこに映し出されているのは・・・

酔った私をお姫様抱きにして一緒のタクシーに乗り込む主演俳優の彼。


なんで!?なんでその部分だけなの!?

明らかに怪しいじゃない!!


本当は映画の共演メンバーとそのマネージャーの皆さん、ほかにもいーっぱい関連者が集った打ち上げで・・・

あのタクシーにだって、彼のマネージャーさんや一緒の方向に帰る共演者が乗っていてやましいことなんて何もないのに!!!


『京子熱愛!?闇に消えた2人!?この後は・・・』


過激すぎる私の熱愛報道に顔が青ざめる。

もっと普通の・・ランチを一緒に取っているところとかが仲がいい・・ひょっとしたら??というようなライトな報道と聞いていたのに!?


この情けない私の姿を敬愛する先輩俳優のあの人に見られたら・・・

今後の自分よりそんな事を先に考えてしまうあたり・・・もう、すでに箱は開かれているのかもしれない。

敬愛・・の言葉でごまかしきれなくなっている想いから、わたしは慌ててあの人に電話をかけた。

仕事中なのは重々承知。

でも・・それでも、自分の口から真実を伝えたかったから。


ぷるるるる・・・ぷるるるる・・・


コールを繰り返すだけのむなしい機械音が私の不安を大きくする。

早く伝えたいのに!!

そして、無常にも留守番電話につながることもなくいきなり切れる機械音。


つー・・・つー・・・


背中に嫌な汗が流れる。

慌ててかけなおすと・・・


『お客様のお掛けになった電話番号は電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないのでおつなぎできません・・・お客様のお掛けになった』


とうとうどうしようもない後輩は、あの人に呆れられたんだ・・・

私は誰もいないこの部屋で落ちてくる涙をぬぐうこともせず、ただ、そのループするアナウンスを聞いていた。

絶望感で・・・もういっぱい・・・

こんなことになるなら、あんな話、きちんと断ればよかった。。。

後悔しても遅いけれど・・・


そしてその後、何度かけなおしても敦賀さんに電話がつながることはなかった。


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敦賀さんはおろか、社さんにも連絡は全くとれず、気が付けば2週間が経過していた。

社長に聞いても煙に巻かれるばかりで一向に情報は貰えない。


こんな事ははじめてで、私は・・・最悪の気分だった。

TV局の控室で、追い打ちをかけるかのような雑誌の記事が目に入った。

それは・・・私をさらに打ちのめすのに充分な破壊力を持った記事。


『敦賀蓮、恋人発覚!』


目の前が真っ暗になる。


敦賀さんに恋人?

そんなの・・知らない。聞いてない。


恐る恐る、手にしたその雑誌には女性なら誰でも憧れる有名なモデルと仲良く2人で指輪を選ぶ姿が掲載されていた。

記事には<結婚秒読みか!?>の文字も・・・


その記事によると2人が宝石店に行ったのは私の報道がTVで流れた日の近辺で・・・


こんな素敵な恋人ができたのなら、、一後輩の私のつまらないスキャンダルなんて、どうでもいいと思うよね。。。

ひょっとすると電話をしたあの時近くに彼女がいたのかもしれない。

だから、電話の電源を切ったのかも!


これは・・・仕方がないことなんだよね。

もともと、敦賀さんの恋人でもなんでもない一後輩の私が、あんなに仲良くしてもらえていたこと自体が異常だったわけで。。。

これが本当の敦賀さんと私の距離なんだと思い知らされる。


そう・・・正常に戻っただけ・・・

これが、本来の姿なんだから・・・


もし、次に敦賀さんに会うことができたら、、

後輩として笑って『おめでとうございます』と言えるように・・・しなくちゃ。


そんな時に私の決心を打ち砕くようなメールが入ってきた。

ディスプレイには見たことのない電話番号。

そこには・・・


『君に会いたい。』


どう考えても見たことのない番号で本来であればすごく怪しくて・・・

なのに、私にはあの人からのメッセージに見えた。

確証は全くない。なのになぜかそれが、敦賀さんからのメッセ―ジに見えたの。


ドキドキしてきた。


もう一度震える携帯。

そこには私の予感を裏付ける一言が。


『詳しくは社さんに』


間違いなく、敦賀さんからのメッセージ。



そこに扉をノックする音が響き、私はドアを開けた。

そこには、全く連絡が取れなかった社さんの姿が。


「久しぶり。キョーコちゃん。今日はあまり時間がないから詳しいことは説明できないんだけれど・・」


そう言いながら、控室に入るや否や、社さんは敦賀さんからのメモと1枚のカードキーを渡してくれた。


「蓮のヤツ、キョーコちゃんの件と今回の騒動でかなりまいってて・・ここの所ほとんど食べていないんだ。ここにいるから、だから、たのむね。」


「え??」


「詳しくは本人から聞いてね」


そう言ってあっという間に控室から出て行ってしまった。

敦賀さんの今回の報道の処理で忙しいんだろう。


私の手に残ったものは時間とホテルの名前、部屋番号が書かれたメモとカードキー。

そして・・・

膨れ上がった、あの人への気持ち。



敦賀さんに会える!

まだ、嫌われたわけじゃなかったんだ!!


逸る気持ちをおさえながら私は、指定された時間にその場所へ向かった。



そこに待っていたのは!?





<NEXT>

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