幕末を生きた下級武士の一家にスポットを当てた映画「武士の家計簿」が話題を呼んでいる。加賀藩で代々御算用者(ごさんようもの)を務める猪山家。

▼8代目直之は実直な生き方を曲げない「そろばん侍」と評判で、膨らんだ一家の借金返済のため大なたを振るう。「苦労と思わず工夫と思えば」と支える妻ら家族の絆が描かれている。

▼つましい暮らしの中にある幸せとそれを守ることの難しさ。「武士は食わねど高ようじ」を地でいくホームドラマを見ているようで、家計のやりくりに苦労している主婦層に人気があるのもうなずける。

▼北國新聞社が企画・制作した特集によると、猪山家の年収は現代の価値に換算して1230万円あったが、借金は2504万円と収入の2倍。親類付き合いなど交際費が家計を圧迫したという。

▼来年度の予算編成が大詰めだ。菅政権の家計簿では予算規模を92兆円台半ばとはじくが、収入は41兆円台しか見込めず、不足は新たに借金(国債発行)するしかない。足りなければ借金という意識は今も昔も変わらない。

▼猪山家は家財道具や刀などを売り払い、身を削って家を守った。「事業仕分け」で無駄を一掃し、財源を生み出すと大見えを切った民主党政権だが成果は見えない。国会議員削減の話もどこかに吹き飛んだ。今の時代にこそ直之のような人材が必要なのだが。岩手日報より

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