「じゃあ秘密を教えるよ。とても簡単なことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
星の王子さま サン=テグジュペリ 河野万里子 訳
刊行後六十年以上たった今も愛される星の王子さまのあまりにも有名な一節。
女優の中嶋朋子さんはワタシの一行として
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」を挙げて
このように語っています。
まだ幼かった頃、この言葉に触れて心にぽかりと穴があいた。
たいせつなことは、ちいさな王子さまのように
消えてしまうんだ・・・・・・と。
思春期をむかえ、再びこの言葉に触れた時、それは光に変わっていた。たいせつなことは、目に見えなくとも確かにあるんだと。たいせつなことで、世界は満ちている。それに気づきさえすれば、、この手に包み込むことができるのだと。私は「たいせつなこと」を自分に問うとき、この物語を読みかえす。
人はあたかも目に見えるものだけがこの世の全てだと思いがちです。
目に見えるものだけがこの世に存在するのだと。
それが大きな誤りだということに一体どれだけの人が
気づいているのでしょうか。
中嶋朋子さんが言うようにたいせつなことで世界が満ちていることに、そしてそれは目に見えないことに気づけば、この世界の中で目に見えるものなどほんの一握りだということにおのずと気づくはずです。
しかし人は目に見えるものばかりを求めてしまいます。やがてそれはいくら手に入れても決して満足することはなく
求め続ける強欲さへと繋がります。
目に見えないたいせつなこと。
私は遺言行政書士として、この目に見えたいせつなことを
「目に見えないたいせつなもの」と置き換えて
そのたいせつなものをひとつ残らず愛する人に遺すことが
遺言書の大事な役割だと考え、
遺言書の作成のお手伝いをしています。
では目に見えないものとは具体的に何か?
それは「愛する者への想いや愛」に
他なりません。
愛する者への想いを言葉にして遺言書に遺す。
そこには遺言者の想いが詰め込まれています。
遺言書は財産を遺すもの、そう思われがちです。
決して間違ってはいませんが正しいとも言えない。私はそう思うのです。
財産とはすなわちお金、不動産などの「目に見えるもの」
しかし遺言書は「想い」や「愛」といった「目に見えないもの」も
遺すことができます。
遺言書は目に見えるものを遺すことばかりが
クローズアップされがちですが、
私はむしろ遺言書は目に見えないものを
遺すことの方がメインだと考えます。
「遺言書は財産を遺す為の書類に過ぎないよ。その事だけを考えて遺言書は作れば良い」
もしこう反論されたとしても私はこう答えるでしょう。
「私は目に見えるえるものだけで幸せになった人を見たことがないので」
遺言書を書く目的。それは財産を遺す為だけではありません。依頼人と依頼人が愛する全ての人が幸せになるのが目的なのです。遺言書はそのためのひとつの手段。
人はガソリンを入れれば走る自動車でもなければ電気があれば動く家電製品でもありません。財産があるだけでは
生きてはゆけないのです。
いや、生きてはいゆけるのかも知れませんが
幸せには生きてはゆけない。
なぜならば人には「心」があるから。
幸せに生きること、それはつまり目に見えないたいせつなものと常に共にあること。
そのためには財産を遺す為だけの遺言書など作る訳には
いかないのです。
「財産を遺す為だけの書類」の遺言書と
「愛する人も、自分も幸せになる」遺言書。
ここまで読んで下さったあなたは
どちらの遺言書を愛する人に遺したいでしょうか?
出典 星の王子さま サン=テグジュペリ 河野万里子 訳 新潮社 新潮文庫
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