漏斗胸はどうしてなるのか。その原因は様々でよくわかっていないと言われていますが、漏斗胸が現れる病、原因として考えられているものを調べてまとめてみました。これらを解決したら、もしかしたら漏斗胸はなくなるのかもしれませんが、どうなのでしょうか。

■ターナー症候群
 女性に発症。X染色体の短腕末端近傍にはSHOXと呼ばれる遺伝子が存在し身長や骨格形成を制御している。ターナー症候群にみられる低身長や外反肘、高口蓋、楯状胸、漏斗胸、中手骨短縮などの骨格異常はこの部の欠失による。

■ヌーナン症候群
 低身長、先天性心疾患、幅広あるいは翼状頚、鎧状胸(上胸部が突出、下胸部が陥凹し、乳首が一見低位に見える)、種々の程度の発達遅滞、停留睾丸、特徴的顔貌などを主症状とする。12q24に局在するPTPN11遺伝子の変異による常染色体優性遺伝病。

■マルファン症候群
 体の骨組みである結合組織に異常をきたす疾患。多くの患者で15番染色体の上にあるフィブリリン1の遺伝子異常がある。症頻度は5千から1万人に1人。高身長、長い手足、指趾、高度の近視、漏斗胸や鳩胸といった胸郭の変形、側弯症、心臓・血管の病変が起こる。他の遺伝子異常として3番染色体のTGFBR遺伝子の異常、それ以外の遺伝子異常もあるのではないかと考えられている。

■ロイス・ディーツ症候群
 TGFBR遺伝子変異による遺伝性結合織疾患。血管系症状(脳動脈、胸部動脈、腹部動脈の動脈瘤・解離)と骨格系所見(漏斗胸または鳩胸、側彎、弛緩性関節、クモ状指趾、先天性内反足)が特徴。肋骨の過形成により、胸骨が陥凹したり、突出したりする。漏斗胸は重症化しうる。

■シュプリンツェン・ゴールドバーグ症候群
 遺伝子座15q21.1に存在するフィブリリン1遺伝子(FBN1)の変異が原因。しかしながら、原因となる遺伝子の変異は不明であるとの記述もある。マルファン症候群の骨格系や心臓の特徴と連想される頭蓋骨癒合や神経発達上の異常が症状。多様で異なる病態がこの疾患群に含まれていて、遺伝的異質性がある。

■くる病
 骨基質の石灰化不全によっておこる病態の総称で、骨変形と成長障害を主徴とする小児期の代表的骨疾患。カルシウムやリンの低下、ビタミンDの作用欠乏や、リン排泄の増加による。ビタミンD欠乏性くる病、ビタミンD依存性くる病I型・Ⅱ型、低リン血症性くる病、肝性くる病、腎性くる病、未熟児くる病、薬剤性くる病(抗けいれん薬等)などがある。骨の縦方向への伸長障害による成長障害、類骨の横方向への拡大による関節部の膨隆や肋骨念珠、歩行開始後は骨強度の低下によるO脚など下肢の変形がみられる。その他、横隔膜付着部の肋骨の陥凹(Harrison溝)、頭蓋骨の変形(craniotabes)、歯のエナメル質形成不全など。成人後は、骨軟化症となり、骨の疼痛、齲歯などの症状がある。X染色体優性遺伝を示すX連鎖性低リン血症性くる病は、一般に症状は女児より男児が重症である。

■横隔膜形成異常
 先天的な横隔膜の形成異常が漏斗胸の原因であるとも考えられている。漏斗胸患者の横隔膜は一般に正常に比して低位にあることが多い。

■扁桃腺・アデノイド肥大
 扁桃腺やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大による呼吸器症状が漏斗胸の凹みを増大させている可能性がある。扁桃腺を治療したら凹みが改善したという報告もある。

■努力性呼吸/吸気胸郭陥凹
 努力性呼吸による胸郭の引き込みによるとする説がある。呼吸不全時には横隔膜、肋問筋やその他の呼吸補助筋が疲労するために、胸郭運動に対する協調性が悪くなる。結果、吸気時の横隔膜の収縮に対して肋間筋収縮が遅れるために、腹が膨らみ胸が陥凹するパターンとなる(奇異呼吸)。上気道閉塞時などの急性呼吸不全時に、強い努力性呼吸のために下気道に強い陰圧が生じ、肋間や胸骨切痕上などの部位が体の内方に向かって陥没する(陥没呼吸)。

■物理的外圧による
 靴工は、陥凹するほど胸を圧迫し作業するらしい。

※各種インターネット検索結果よりまとめ


 漏斗胸の原因は、どうやら多岐に渡っています。ざっと次の4つにまとめられるといえます。

1.染色体異常による胸郭異常のひとつとして現れる
2.骨の成長の仕方の異常のひとつとして現れる
3.呼吸がうまくできない結果現れる
4.外圧

 この際4は問題としないことにして、つまりは「骨関連」か「呼吸関連」の問題と考えられるのですが、私的な見解として、「骨全体に異常をきたす病」1,2の中で、特に肋軟骨が長くならざるをえなかった原因は「呼吸」にあって(努力性呼吸より推察できる)、すなわちさらにまとめると、漏斗胸の根本的な原因は次の3つに集約されるのではと考えます。

A.正常な骨が陥凹してしまうほど呼吸器官に異常がある(呼吸性漏斗胸)
B.正常な呼吸なのに陥凹してしまうほど骨に異常がある(骨性漏斗胸)
C.呼吸器官にも骨にも異常がある(複合性漏斗胸)

 呼吸性、骨性、複合性と勝手に命名してみましたが、漏斗胸患者はABCどれかに当てはまるのではないでしょうか。これによれば、それぞれに治療法が違ってくるし、単に漏斗胸を治しても術後の成績が変わってくるはずです。一方で、的確な予防法や軽度漏斗胸のための回復トレーニング法も提唱できそうな気がするのですが、実際の医療の現場では私の意見は否とみるでしょうか。