それにしても…まだお酒を製造していて、真夏以外は稼働している3季醸造ですよね?ロングスパンになると、メンタルやモチベーションの維持が難しくなる。美味い酒を造りたい!という想いが後押しするのでしょうか。
「麹はこうしてます。麹は特に人の手が大事です。」
要所はやはり人の手が大事、他の作業行程も人力ではあるものの、負荷をかけずに済む工夫が随所にあり、コンパクトな蔵の中では移動距離も短くて済む。それでも長期間ですよね。仕込み蔵を見ると、
「間隔をつめて短期間でやろうとするよりも、750~1500キロの仕込みで、商品の在庫状況を見ながら造ります。いつでもフレッシュな状態で送り出せるようにしてます。」
「こちらが槽場です。」
冷蔵庫の中でのヤブタ搾り。室内は0℃です。
「あらゆる意味で清潔さを求めました。品温も同じ状態で搾ります。」
お酒の貯蔵庫は-7℃で管理されていました。長期熟成は考えていないものの、やろうと思えば出来てしまうものでした。ただ、貯蔵庫はさほど広くはないので、在庫状況を見ながら酒を造るの意味がわかりました。
宮寒梅さんの商品はお買い求めやすい価格設定です。これだけ設備に投資して震災からの復興、資金繰りも大変なはずなのに….
「米は全て私達が作っています。美山錦、愛国、ひよりと。足りないぶんは近所の契約農家さんのものですから、原料米調達コストはそこまで高くはありません。自社栽培米に関しては今年、新しくやってみる品種もあります。」
それにしても蔵の中は凄かった。
「今後の挑戦としては、今の至粋(しすい)より上のクラスを造ります。ただ、そこから先のクラスでは何で違いを出すのか悩んでいます。甘味だとしたらどうやって引き出せるのかな…私達も世界を目指していきたいと思っています。」
宮寒梅さんは宮城県限定商品もあり、地元販路には鶯咲(おうさき)がある。米、人、全て大崎市にこだわりぬいた純米酒。宮寒梅は更に米作りから始まる一貫造り。お買い求めやすい通年商品があり、世界を目指すカテゴリーとしてEXTRA CLASS がある。
また、本醸造を廃止してリキュールを造りました。宮城県山元町のイチゴを使用したイチゴと日本酒ベースのリキュールがまた美味しい。
陽のしずく イチゴリキュール、
高知県馬路村産のゆずを使用したリキュールもあります。こちらも日本酒ベースがあります。
ここまで商品構成を数年できっちり造り上げた…
圧倒されていた時に岩崎真奈さんが戻り、再びじっくり話を聞き、ひととおり感想をお伝えして、それにしてもお買い求めやすい価格設定についてたずねたら、
「私達が学生、20代の頃は飲みたくても買いたくても、純米吟醸や精米歩合50%クラスの商品は中々手に届かない価格でした。美味しいんだろうなあ、飲んでみたいなあ、と思っていても、お財布が気になるんです。」
「だから私達が造るお酒は20代の私達が飲みたかった品質を、当時の私達でも買っても飲んでもお財布に負担のかからないモノを作ろうと思ったんです。辿り着いたのが精米歩合45%の純米吟醸でした。」
一定の軸が定まり、純米吟醸に集中すれば…確かに製造コストも安定するのかもしれない…それもコンスタントに造り続けることで商品は常にフレッシュローテーション。
Mr.Summer Timeも、実は何本も作っているのも知りました。今年はおりがらみも四ヶ月販売できました。
「季節商品のありかたですが、やはり季節の中に品切れさせてはお客様に申し訳ないので、夏の思い出のお供にというコンセプトと、通年商品とは異なる仕込みで造って、販売期間も長くとってお客様に楽しんで欲しくて造りました。」
岩崎さん達は大学を卒業してからすぐに蔵に入ったのが2007年で、東日本大震災も乗り越えて、大改革を実現させた。
日本酒の激戦区・東北、厳しい環境が人を育て、強くする。厳しさの中にある愛情や優しさが、宮寒梅の美味さを更に昇華させていくのでしょう。
心に春をよぶお酒、宮寒梅。
これからも大事に味わっていきます。
岩崎さん、ありがとうございました!