駅から歩いて15分。

途中でスーパーに寄る。

そして住宅街にあるアパートが僕の城。


1DKの木造20年は経っている。

塗装が剥げたりエアコンが効きづらかったり。

それでも僕の城。


お前…姫は今までいたんだけど、

愛情と飽きと優しさとワガママを悪魔がごっちゃにしてしまって。


喧嘩と別れを引き出してもういない。


残ったのは2人分の少し大きめのソファー、テーブル等。

他の軽い物は姫の新居に送った。


20:30。今日も疲れた。

秋刀魚がスーパーで安かったので買った。

ネクタイを外して、ラフな格好にしてから、

フライパンにアルミホイルを乗せ、焼く。


と、同時に6缶パックになっている発泡酒を袋から取り出す。


プシッと缶を開け喉に流し込む。

「秋味」と書かれたラベルを選んだ。

確かにコクがある気もする。


秋…か。

一年、もたなかったな。

鈴虫が鳴いている。

侘しさが増すので、TVをつけて音量を大きめにした。


二缶目。に突入する前に秋刀魚が焼けた。

僕はちょっと飲んでから皿にそれを盛り付けた。


惣菜で買ったきんぴらごぼうと、レンジでチンするご飯を用意して、さあ、晩餐。


…なんか足んねえな。そうだ、乾杯する相手だ。


いやいやいや。そんなこと思っちゃだめだ。酒が不味くなる。ピッチを上げ二缶目を飲んだ。秋刀魚に少し手をつけて、三缶目は一気に飲んだ。


ゲフゥーっという寂しげな魂ダダ漏れのゲップをした。


君の笑顔が浮かぶ。

少し酔ってきたな。


おい。なんでいないんだよ。秋刀魚、お前も好きだったろう?一緒に酔っ払って、くだんないことで大笑いして。楽しかったじゃないか。


四缶目に行く前に寒気を感じ、ブランケットを肩からかけた。もうお前の匂いはしない。

やっぱ半分くらい一気に飲んでしまった。


「もうお互いのこと思い合える関係じゃないと思うの。少なくとも私はそう。」八月、夏、ある日の夜お前はそう言った。


ムシ暑さだけが部屋に広がって、沈黙が続いて。

「そっか。お前がいうならそうかもしれないな

」僕はそう答え。全てのおわりが始まった。


五缶目に達した。

トイレにふらついた足で行く。

「ちくしょ〜」とムシャクシャした気分で呟きながら。


もっと情けなくてよかった。本音を言えばよかった。カッコつけなきゃよかった。


「おれはそうは思わない!至らないとこがあったら直すよ!だから考え直してくれよ!」


…そんくらいにすがればよかった。


六缶…に突入する前に酒が足りなくなりそうだったのでチャリでスーパーまで行った。明日は土曜、休みだ。2日酔ってもいいから。そう思いながら。


永遠にクダを巻きそうだ。

それでも、一缶、一缶、君を、君との思い出を頭のてっぺんから爪先までいっぱいにして。


そうして、夏が終わる。季節は2日酔いのように台風に惑わされ、それを超えて秋になる。


僕もそんなふうになれるように。

1人、乾杯。