譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上であるか否かを判定するに当たり、判定の単位は次の通りです。帳簿価額を確認するより先に、その資産を判定する際の区分を検討しなければなりません。

1.金銭債権
 一の債務者ごとに区分します。

2.減価償却資産
 (1)建物
  一棟ごとに区分します。区分所有建物においては、その区分所有する建物の部分ごとに区分します。
 (2)機械装置
  一の生産設備又は一台若しくは一基ごとに区分します。通常一組又は一式をもって取引の単位とされるものにおいては、その一組又は一式ごとに区分します。
 (3)その他
  建物、機械装置に準じて区分します。

3.土地等
 土地等を一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等においては、その一団の土地等)ごとに
区分します。

4.有価証券
 その銘柄の異なるごとに区分します。

5.その他の資産
 通常の取引単位を基準として区分します。
Q,被相続人田中一郎さんの相続人等の状況は、以下の通りとなる。

相続人:長男 住所等:東京に在住。 取得財産:日本の財産、アメリカの不動産。
相続人:次男 住所等:ニューヨークに在住。アメリカ国籍取得(日本国籍なし) 取得財産:日本の財産、イタリアの不動産。
相続人:三男 住所等:イギリスに居住、日本国籍あり 取得財産:日本の財産、イギリスの不動産。

 この3人の相続税の納税義務はどうなるか?説明してください。

<解答>
 相続人の住所と国籍が日本にあるか、海外にあるか、また、相続により取得した財産が日本国内にあるか海外にあるかで変わってくる。

<解説>
1、 納税義務者の種類
 非居住無制限納税義務者、居住無制限納税義務者、制限納税義務者(特定納税義務者を除く)の3種類が存在している。どの納税義務者のタイプとなるかは、相続人の住所、国籍、相続した財産が国内にあるか(国内財産)、国外にあるか(国外財産)によって、判定されることになる。具体的に、以下で見てみよう。

(1) 三男の住所がイギリスにあって、日本国籍がある場合
(一) 取得した財産が日本にある財産である場合
 この場合、日本にある財産(国内財産)を取得したため、非居住無制限納税義務者あるいは制限納税義務者として納税義務が発生することになる。

(2) 次男の住所がアメリカにあって、アメリカに国籍がある場合
(一) 取得した財産が日本にある財産である場合
  この場合、日本にある財産(国内財産)を取得したため、制限納税義務者として納税義務が発生することになる。
(二) 取得した財産が海外の不動産である場合
  この場合、海外にある財産(国外財産)を取得したため、納税義務はないと考えられる。

(3) 長男の住所が日本にある場合
 この場合は、財産が日本国内にあろうが国外にあろうが、どの財産を取得しても、居住無制限納税義務者として相続税の納税義務が発生することになる。国籍は関係ないと考えられる。

(二) 取得した財産が海外の不動産の場合
 この場合、海外にある財産(国外財産)を取得したため非居住無制限納税義務者として納税義務が発生する。なお、三男が昔から海外に住所を有していた場合(被相続人・相続人ともに相続開始前から5年以上日本に住所を有していない場合)には、納税義務はないと考えられる。

2、 国内財産と国外財産
 財産が国内にあるか国外にあるかは相続開始時にその財産がどこにあるかで判定しますが、以下のものについては、留意しなければならない。

(1) 株式は、その株式を発行している法人の本社が国内にあるか国外にあるかによって判定することになる。例えば、日本の証券会社に預けてある外国株式などは国外財産となる。
(2) 銀行の預金は預け入れている銀行の支店の場所が国内にあるか国外にあるかによって判定することになる。例えば、国内にあるスイス銀行の預金は国内財産になる。

3、 納税義務者のタイプが変るとどうなるか?
 居住無制限納税義務者の場合は相続税法上の全ての有利規定を受けることが可能となるが、非居住無制限納税義務者・制限納税義務者の場合については、次の規定の適用が受けることが不可能となってしまう。

(1) 制限納税義務者
・ 未成年者控除・障害者控除の適用がない。
・ 債務控除できる債務に一定の制限が加わるとともに、葬式費用は控除は不可能となる。
(2) 比居住無制限納税義務者
・ 障害者控除の適用はない。