『タワーリング・インフェルノ』
(1974年・アメリカ)
〈ジャンル〉パニック/ドラマ
★★★★☆
・史上最悪のビル火災を描いた伝説のパニック映画。
・超高層ビルの乱立で失われてきた安全。
・スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンの奇跡の共演!
(オススメ値の基準)
★1つ…一度は見たい
★2つ…良作だと思う
★3つ…ぜひ人にオススメしたい
★4つ…かなりオススメ!
★5つ…人生の一本、殿堂入り
〜オススメ対象外は月毎の「ざっと書き」にて紹介
〈〈以下、ネタバレ注意!!〉〉
《あらすじ》
『138階建てのグラスビルが完成した。砂漠から帰国したビルの設計者・ロバーツをオーナーのダンカンは迎え入れる。その夜は135階でビルの落成記念パーティーが開かれる予定だった。だが、電気配線の規格が設計したものと異なり、ロバーツは怒って建設責任者であるダンカンの娘婿ロジャーの元へ向かう。ロジャーはピンハネ目的で規格外の配線を使用していた。ロバーツの不安は的中し、落成式の最中に81階の倉庫の配線から出火。発見が遅れ、火は瞬く間に燃え広がっていく。消防隊のオハラハン隊長が通報を受け現場へ駆けつけると、火が勢いを増す中で135階のパーティは続行中であることに愕然とする。』
《監督》ジョン・ギラーミン
(「ブルー・マックス」「キングコング」「ナイル殺人事件」)
《脚本》スターリング・シリファント
(「夜の大捜査線」「まごころを君に」「黒いジャガー/アフリカ作戦」)
《出演》スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、ほか
【豪華の枠を超えた超豪華パニック映画】
面白い!!
ビル火災を描き、パニック映画の伝説ともなった本作。火災現場が138階建ての超高層ビルであるため、とてもスリルが増す。
例えば引火爆発した勢いで非常階段が吹っ飛んだり、エレベーターは途中で止まってビルの外へ向かって傾いたり、135階では何百人もの来賓者たちが出口に押し寄せていたりと、ただの火災映画に収まらない規模である。
何より!
CGがまだ発展していなかった1974年。火災も本物の炎が迫り来るので、緊迫感が違う。
役者たちの汗やすすの汚れは、単にメイクの力ではないように思われる。迫り来る火の熱さが、画面を通して伝わってくるではないか。
もちろん、そんな大規模映画であれば予算が桁違いとなることは容易に分かる。そこで、制作費が膨大となることから、「ワーナー・ブラザーズ」と「20世紀フォックス」が共同製作したという点も素晴らしい。
さらにさらに、スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンが貴重な共演を果たしている。
さすが当時を代表する超主役級スターである。この映画において、主演は確実に2人いるように感じるのだ。設計者のロバーツも、消防隊長のオハラハンも同等に活躍し、同等にカッコいい。
まったく優劣なく、2人とも揃ってこの映画においてヒーローなのだ。
どんなヒーロー作品であっても、主役は頑張ったら結局一人に絞り込めるものだと思うが、この映画においてはそれができない。どんなに頑張って考えても、ロバーツもオハラハンも、どちらもヒーローなのだ。
【「大きな嘘」を棲みつかせ、安心を売る】
今回の火災事故の原因を大きく分けて3つにまとめてみた。
①下請け担当者が仕様と違う配線を使用した。
……最大の原因にして、最悪の手抜き工事と言わざるをえない。138階建ての超高層ビルで設計と異なる熱に耐えられない配線を使用した建設責任者のロジャーに、しっかり説明していただきたい。
ロジャーは無責任なオーナーの娘婿だった。
火事が起きれば責任逃れをしようとし、浴びるほど酒を飲んで現実逃避し、挙げ句の果てには妻を置いて一人で逃げようとするクズっぷりを発揮する。
最後は一人ずつカゴをピストン輸送して隣のビルに避難していた中で、順番抜かしをして逃げ出そうとして、カゴもろとも転落死する。
避難手段を一つ完全に絶ってから死ぬという、最後の最後まで迷惑以外の何も生み出さないキャラクターだった。
②火事発生の報告を受けた社長が避難指示を出さなかった。
……135階で市長や議員ら要人を招いて開かれた落成記念パーティー。81階でボヤが起こったという報告が起きたところで、オーナー・ダンカンはまるで動じなかった。
なんとか鎮火できるだろう、と問題意識も持たなかった。もはや設計者であるロバーツの声はダンカンには届かない。
オハラハン隊長は現場に到着し、未だにパーティ客が避難していないことに唖然とする。ロバーツの代わりにダンカンに避難命令を出しに赴くオハラハン。消防隊長の声でようやく避難指示を出したオハラハンだったが、135階にいる何百人がエレベーターで避難するには、あまりにも時間がかかった。
だから、エネルギーがある男や若者は非常階段で避難すればそこまで重大事故にもならなかったのだが……
③閉じ込められた招待客たちがパニックを起こした。
……建設責任者はあのロジャーである。
どこまで杜撰な管理だったことか。なんと火事が起きていない方の南口の非常扉が開かなくなっていた。
非常階段が途中で爆発し、下へ降りられなくなった住人が居住階から135階に上がる形で避難した時に、その原因が明らかとなる。
工事後に放置されたセメントがばら撒かれて固まり、扉を固定してしまっていたのだ。消防隊員がセメントを爆破させるものの、すでにその扉から通じる非常階段は下へ降りられなくなっている。エレベーターも火事で使えなくなった。
まだ百人を超して残された招待客たちは右往左往するばかり。
なんとか屋上からヘリで脱出しようと試みるも、パニックを起こした避難客のせいでヘリが風に煽られ、屋上に墜落。爆発して屋上も使えなくなってしまう……。
その結果、隣のビルへカゴに乗って避難する方法に切り替えるのだが、先ほども述べたようにロジャーが人生最後の大迷惑を起こして退路は絶たれる。
苦渋の決断で導き出された最後の方法が、最上階の貯水タンクを爆破してビルの火を消すという方法だった。
135階は津波が襲うように水と鉄骨が流れ込むが、その手段しか道はない。オハラハン隊長とロバーツは貯水タンクに爆弾をセットして、大量の水をビル全体に撒き散らした。
流れ込む激流と鉄骨で市長を含めた何人かは犠牲となったが、何人かは生き残った。
こうして、超高層ビルの火災は鎮火されたのである。
オハラハン隊長を演じたスティーブ・マックイーンは映画の最後で、死力を尽くして疲労困憊のポール・ニューマンに言い残す。
「運がいい。死者は200人以下だ。今にこんなビルで1万人を超す死者が出るぞ」
1970年代。競い合うように高いだけの超高層ビルを建てていた時代への警鐘のようにも聞こえる。
この火災事故は高さだけを誇りにした結果、安全や安心を二の次にしてしまった災禍なのだ。
耐震偽装や、くい打ち偽造問題……あれから40年近く経った今でも人々の命と生活を守る安全であるはずの建物で「大きな嘘」が棲みついている。
現代を生きる私たちは、スティーブ・マックイーンのこの言葉にしっかり耳を傾けているだろうか。




