相対することでしか、我々は生きられない。
「美しい」
という言葉がある。
だが、この美しいという言葉は、
「美しくない」
がなければ存在できない。
この世界のすべてが美しければ、と人は希望を持つ。
しかし、
全てが美しくなってしまったなら、
「美しい」
という言葉は消滅する。
意味を無くしてしまう。
美しくないものがあるからこそ、
「美しい」
は存在できる。
意味を持つ。
弱者と強者もそうだ。
全員が豊かな強者であったなら、世界は幸せだ。
こう、人は考える。
そこを目指すべきだと。
二極化を無くせと。
しかし、
全員が強者になった世界を想像してみよう。
多くの善人な人が望んでいる世界を。
そこには、
「強者」
という言葉は消滅している。
強者という言葉が、意味を持たなくなる。
つまり、
強者は、弱者の存在があってこそ、なのである。
弱者がいなければ、強者は存在できなくなる。
強者は弱者に依存している。
それが、
言葉に支配されている我々の世界の事実である。
そのことに、
ほとんどの人は気付いてもいない。
そして、
何も気付かないまま、終わっていくだけなのである。
それが、
私たちの生きている世界である。