『ぼくらの』のカコ編の解説(前編) | 胙豆

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傲慢さに屠られ、その肉を空虚に捧げられる。

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さて書いていくことにする。

 

本当は…普段書いているような漫画の解説以外の話を書きたいのだけれど、ここんとこマジに調子悪くて本なんて読めるコンディションではなかったから、書く内容がない。

 

最近だとアケメネス朝ペルシャのダレイオス1世の碑文の文章しか読んでない。

 

2月の終わりの方とか歩くことすら肉体が拒絶するほどに調子悪かった。

 

立ってらんなかったからね、しょうがないね。

 

さて『ぼくらの』の解説をしていく。

 

今回はカコ編。

 

(3巻p.5)

 

カコ編は自然学校では飄々としていたカコだけれど、学校では虐められている描写から始まる。

 

 

(3巻pp.6-7)

 

なんか妙に生々しいやり取りだけれど、鬼頭先生が虐められてた経験があるのかもしれない。

 

『GANTZ』の奥先生とかも虐められる描写が迫真だしな。

 

関係があるのかないのか微妙なところだけれど、不登校新聞なるところで鬼頭先生はインタビューを受けている。

 

https://futoko.publishers.fm/article/147/

 

僕はお金を払ってないので、有料コンテンツの部分に何が書いてあるのかは知らないのだけれど、もしかしたら実体験が書いてあったりなかったりする…んですかね?(無責任)

 

んまぁ、そう、良く分かんなかったです。

 

ところで、このインタビューの内容を読んでて気づいたのだけれど、鬼頭先生は滑走キの記述内容を読んでいるらしい。(参考)

 

インタビューで「自分の存在価値に悩んでいればいるほど「命は地球より重い」とか「かけがえのない命」という言説に~」って言っているけれど、"かけがえのない命"の方は『なるたる』の方で言及があるのだけれど、一方で「命は地球より重い」って方は『なるたる』の方に言及がなくて、滑走キのこの記事に言及がある。(参考)

 

偶然同じ言説がそれぞれの人物の間で採用されたという可能性もあるのだけれど、そもそもとして、滑走キの中の人と鬼頭先生自身は関わりがある。

 

まぁ、年賀状貰ってるし。

 

僕は年賀状を貰うことになった経緯について、以前、ファンレターを滑走キの中の人が送ったのではないか、という言及をしたけれど、もしかしたら原稿の受け取りに関係があったのかもしれない。

 

『なるたる』の同人誌が存在していて、『むくたまオフライン』という名前で2~3冊出ているのだけれど、鬼頭先生はその"2"の方にイラストを寄稿しているらしい。

 

で、滑走キの中の人は『むくたまオフライン』に寄稿していたらしくて、その同人誌を制作した際に、鬼頭先生のイラストを受け取るために住所を明かした結果、年賀状が届くようになったという可能性がある。

 

まぁ良く分からないし、実際のところ興味もないのだけれど。

 

けれども、鬼頭先生とあのサイトの製作者さんの関係性を考えるに、鬼頭先生が「命は地球より重い」云々言っているのは、普通に滑走キからのミーム伝播だと思う。

 

あくまで仮説的な話であって、確証はないし、恐らくそうなのだろうという話だけれど。

 

カコ編の話に戻る。

 

カコは虐められていて、同じようにキリエも虐められていて、それが故にキリエはカコを学校に連れてこいだなんて言われている。

 

そもそもとして、自然学校は一人では参加する勇気もないカコが、キリエを誘ったという経緯があるわけであって、キリエがジアースのパイロットになったのはカコのせいとも言えて、文句の一つもキリエは言っていいと思う。

 

(3巻p.79)

 

これはカコが戦闘直前に見た夢の内容だけれど、ここに自然学校にキリエを誘ったという話がある。

 

キリエからしたらとばっちりも良いところなんだよな。

 

僕は文句の一つでも言っても良いとは思うのだけれど、キリエはそんなことは言えない。

 

(3巻p.8-10)

 

キリエはそんなことは言えないし、言わないような子だから虐められている。

 

カコの方は次のパイロットに選ばれたから、かなり精神的に追い詰められている御様子。

 

(3巻pp.11-13)

 

迫真の追い詰めれっぷりですね…。

 

表情が悪い意味で生き生きとしている。

 

ところで、コエムシはキリエとチズが連絡を取り合っていると言っている。

 

(3巻p.13)

 

これについてなのだけれど、僕はこの解説を書き始める前まで…というかこの文章を書く直前まで、コエムシが嘘をついてカコのことを虐めているだけだと考えていた。

 

まぁ、別に嘘をついても良いわけだし、嘘をついて虐める動機はコエムシにはある。

 

なのだけれど、解説を書くにあたって検討した結果、実際、キリエとチズは連絡を取り合っていたらしいということが分かった。

 

キリエはチズと連絡を取り合っていない限り知り得ない情報を知っているからになる。

 

(6巻p.8)

 

このムービーで脅したという出来事について、このことはチズ以外の子供たちは知らない情報になる。

 

(3巻p.169)

 

読者はこのシーンを読んでいるから知っているのだけれど、パイロットの子供たちは知らないことになる。

 

普通に考えて、こんなことを事情を知った国防軍の大人たちが逐一丁寧に子供たちに説明するとは思えないし、本編中にチズがそのことを伝達している描写はない。

 

チズが復讐を決意するに至る回想の最中にコクピットでどうして復讐をするかを語った可能性はあるのだけれど、描写からそのことは話されていないということが分かる。

 

(3巻p.169)

 

復讐を始めようとするチズがこれから何をしようとしているのか、田中一尉はこのシーンで理解していない以上、チズは黙って殺し始めたということが分かる。

 

キリエを含めた子供たちは、本来的にチズに何が起きて復讐したのかを理解出来ないはずになる。

 

でも、キリエはムービーで脅されたことまで知っていた。

 

そして、チズが復讐を始める直前にこんなシーンがある。

 

(3巻p.188)

 

ここで、何かを心に秘めたチズをキリエは見て、何かを察している。

 

そして、実際にチズが復讐を始めた時に、キリエは真っ先に反応している。

 

 

(3巻p.181)

 

加えて、チズは最後にキリエにナイフを渡すわけであって、どうやらチズはキリエに起こったことの全てを話していたらしいということが分かる。

 

(4巻p.37)

 

このナイフについて言えば、キリエとチズの間で畑飼を殺害のためにナイフを買ったということを伝達する会話が取りなされたということを示すそれがある。

 

(3巻p.177)

 

ここでキリエは「ナイフ… まだ持ってたんだ…」と言っているけれど、まだということは持っていたということを知っていたということであって、普通に考えるなら、自分を売り飛ばした教師を殺害するためにナイフをチズが買ったという話をキリエが知っているということになる。

 

キリエとチズとの間で十分な情報のやり取りがなければ、このような会話はあり得ない以上、チズはキリエにそういうことを話したと判断するのが妥当だと思う。

 

実際に連絡を取り合っていただけではなくて、チズはキリエに畑飼によって売られた上に孕まされたし、セカンドレイプするぞと脅されたことまで話していたらしい。…まぁ当時はセカンドレイプなんて言葉は存在していなかったのだけれど。

 

とにかく、キリエがチズがムービーで脅されていたということを知っているということは、そのことをチズから聞いたとしか『ぼくらの』の描写からは判断できない。

 

僕は今これを書きながら、「よくそんなこと言えるな」ってスッゲー心の中で呟いている。

 

普通、そんなこと言えるのか…?

 

僕は普通言えないと思うから、普通にチズとキリエは連絡を取り合っていたわけではないと考えていたけれど、描写から連絡を取り合っていたし、チズは包み隠さず全部キリエに伝えていたと判断するのが妥当だと思う。

 

チズは誰でも良いから誰かに言いたかったからキリエに話したのか、キリエだったから話したのか、色々想像することは出来るけれど、本編に描写がない以上、判断できないから、僕は沈黙する。

 

分からないことは分からないと素直に言う。

 

まぁどっちかと言うと、鬼頭先生の都合だと思う。

 

キリエがこの世界を存続させるかさせないかという二者択一の悩みを抱いたときに、クソみてぇな人間を目の当たりにして、この地球を捨てる決心をするに際して、キリエが畑飼に会いに行くエピソードの都合上、チズはキリエに包み隠さず話したということになったというのが一番近い答えだと思う。

 

…。

 

一応、カコ編の解説なので、本編の解説に戻る。

 

コエムシがカコを虐めたシーンのあと、コエムシとマチが会話するシーンに移行する。

 

 

(3巻p.14-15)

 

「てめーこそ地球に帰れ」という言及がある。

 

ここで「てめーこそ自分の地球に帰れ」と言わないのは、並行世界同士で戦っていると推測されないための配慮で、地球とだけ言うと色々な可能性が出てくる。

 

彼らの母星も地球という名前という可能性や…。

 

…。

 

それくらいしかないっすね…。

 

ただまぁ、自分の地球と言ってしまうと、自分のものではない地球の存在が想定出来てしまうのであって、そうすると並行世界という可能性に感づかれてしまうからそうは書けなかったという事情から、そういう言及になっているのだと思う。

 

会話の相手はマチなのだけれど、マチのどんな言葉にコエムシはそう返しているのか、考えてみた。

 

ただまぁ、「こうかもね」程度なので、あんまり真剣に受け取らないでください。

 

アンダーラインの方が本編の文章で、何にもない方が僕がした補いです。

 

マチ「お兄ちゃん 流石にアレはやりすぎだよ。」

コエムシ「ああん?やりすぎ?おれ様が?良いじゃねーか。おれ様はやつらが鼻水たらして泣き叫ぶ姿が見てーんだよ。」

マチ「最低。」

コエムシ「なんとでも言え。先刻のは最高だったぜ。精神がまともなのは加古と古茂田くらいだからよー。ああ あとは徃住か。あいつは虐めがいがありそーだぜ。ほかのやつらはどっか頭の螺子が飛んでやがる。」

マチ「どっちの頭の螺子が飛んでるんだか。」

コエムシ「へっ。てめーこそとっとと地球へ戻れ。てめーの役割は済んだろ?」

マチ「私はまだ残る。」

コエムシ「ああん?おれ様のこと心配してんの?」

マチ「私はお兄ちゃんのお目付け役だよ。」

コエムシ「ああ?ああ、そう。お目付け役。すみませんね こんなおれ様で。」

マチ「それに みんなのことも心配だから。」

コエムシ「なんだ?深情けか?」

マチ「…。」

コエムシ「へっ。でも 何も 変わらないぜ。どの道やつらは死ぬ。」

 

マチはコエムシのことをお兄ちゃんと呼んでいる。

 

(9巻p.18)

 

これでいつも"あんた"とか呼んでいたとしたならば、コエムシの言及が「あんたとか言うな。2人の時はお兄ちゃんって呼べって言ってるだろ」となるのが自然なのであって、この時のあんた呼びは突発的なそれだろうと僕は想定している。

 

ところで、精神がまともなのはカコとコモ、加えてアンコだけだという言及がある。

 

(3巻p.14)

 

これは…おそらく、連載を続けていくうちに、設定が変更されたのだと思う。

 

コモとアンコがパイロットになった時に、カコのように精神的に不安定になる描写は存在していない。

 

存在していないから引用も出来ないほどに存在していない。

 

けれども、コモの方はと言うと、実際、戦闘の前の段階だと精神的に追い詰められている描写が存在する。

 

(4巻p.93)

 

これはモジ編の時だけれど、このシーンだけではなくて、モジ編に出てくるコモの頬はこけている。

 

このこけた頬なのだけれど、僕はクソ真面目にモジ編、マキ編、キリエ編、そしてコモ編に登場するコモの顔面を検証してみた。

 

検証の結果、コモ編の冒頭までは頬がこけているということが分かった。

 

(6巻p.104)

 

このシーンまでぎりぎり頬に影があると判断出来て、その次のページから頬の影がなくなっている。

 

(6巻p.105)

 

このページ以降のコモの顔にこけは存在していない。

 

一方で、直前のキリエ編の時はちゃんと頬はこけている。

 

(6巻p.81)

 

コモ編の冒頭までコモの顔はこけていて、けれども、実際にコモ編が始まってみると、コモの顔は生気に満ちた顔になっている。

 

(6巻p.133)

 

これ読んでてどういうことなの…って思うかもしれないけれど、僕は鬼頭先生がコモの気持ちを理解出来なくなったという事態が、こういう描写に繋がっていると考えている。

 

僕によるねっとりとした調査の結果、鬼頭先生は『ヴァンデミエールの翼』『なるたる』を描いていた時は精神的に病んでいて、実際、抗うつ剤を服用していたらしいということまでわかっている。(参考)

 

そして諸々の描写から、僕は『ぼくらの』の物語の中盤でそういったものが比較的良くなったのではないか?と考えている。(参考)

 

病的だった物語が、『ぼくらの』の途中から何処か救いのあるそれに変わってきているし、その後に鬼頭先生が描いた漫画の中で、鬱的な漫画は一つも存在していない。

 

だから僕は『ぼくらの』の途中で鬼頭先生の状態に変化があったと考えていて、コモのことも同じような俎上に載せて考えると、おそらく、設定段階ではコモは精神的に追い詰められまくって、カコのような振る舞いをする予定であって、その伏線としてコモはストレスでやせ細っていってしまっているという描写があったのだけれど、いざコモ編を描き始めてみて、鬼頭先生自身がコモの心理描写を上手く描けなかったからその要素がスポイルされたのではないか?という想定が出来る。

 

根拠にあたる部分を提出することは難しいのだけれど、コモの本編が始まって急になくなる頬のこけを文脈化するにあたって、他の説明を僕は何一つ思いつかない。

 

昔の鬼頭先生はコモの気持ちが分かったのだけれど、コモ編を描いている最中の鬼頭先生にはもう分からなくなってしまったのだろうと僕は思う。

 

構想の時点では精神的に追い詰められて、部屋の隅でガタガタ震えるようなそれを想定していたのだけれど、実際描くにあたって、健全化した精神はコモの感情を描写するに能わなかったというのが僕のこの事柄についての理解になる。

 

ただ、結局証明することも、事実として確定することもできない話だから、あくまで僕はそう判断しているという話であって、読んだところで真剣に受け取らないでください。

 

…。

 

カコ編の解説なのに、殆どカコの話してねぇなぁ…。

 

まぁいいや。

 

カコはコエムシに煽られて、チズの家に行くことにする。

 

(3巻p.16)

 

目的はチズとセックスすることだけれど、チキンなくせに変なところで度胸があるなぁ。

 

(3巻p.17)

 

そんなカコの腹積もりを知らないチズはカコを自室へと案内するのだけれど、二コマ目でお姉ちゃんはデート中という言及がある。

 

これは畑飼とデート中ってことですね。

 

ところで、日本人で畑飼という苗字の人は存在していないらしい。

 

"畑飼"とググっても『ぼくらの』関係しか引っ掛からない。

 

まぁ鬼頭先生自身、人間の屑を漫画に出すに際して、色々配慮したのだと思う。

 

聞いたところによると、ジャイアンの妹のジャイ子や、『DEATH NOTE』の夜神月も、アレなキャラクターだから変な名前を選んだというのだから、畑飼についてはそういう話だと思う。

 

人間の屑を漫画で出して、それによって実際の子供が虐められたら洒落にならないから、そういう配慮をする場合があって、畑飼という非実在の苗字を選択したのは、そういう理由だろうという話になる。

 

このことから、少なくとも鬼頭先生は畑飼のことを良くは考えていないということが分かる。

 

彼の思想が道理に適っているものであると考えているならば、そういう配慮をしようという発想には至らないのであって、鬼頭先生的にも彼は人間の屑らしい。

 

話を戻すと、姉のデートを言及しているのと同じページで、チズがカコの家が遠いということを知っているという描写がある。

 

(同上)

 

四コマ目ね。

 

これについてなのだけれど、チズはキリエとの電話のやり取りでキリエの家の場所について聞いていて、カコはキリエと同じ中学だからということでそういう発言に繋がっているのだと思う。

 

さもなければチズがカコの家を知っている道理がない。

 

その次のコマでチズは紅茶を持ってこようとする。

 

…アイスティーかな?

 

まぁいい。

 

カコはそんなことよりも性欲の解消の方が重要なようで、チズを襲おうとする。

 

もっとも、性欲が故というよりも、自暴自棄になったが故の行動という方がより正確だろうとは思うけれど。

 

(3巻pp.18-20)

 

カコはチズのことを、お前のことが好きだったんだよ!と言わんばかりに行為に及ぼうとする。

 

けれども、チズはナイフを取り出す。

 

(3巻p.21)

 

これは畑飼殺害用のナイフですね。

 

(3巻p.71)

 

このような飛び出し式ナイフについてなのだけれど、確か…『ぼくらの』連載当時は中学生でも買えたんだよな。

 

当時でもバタフライナイフは買えなかったと思うのだけれど、まだ飛び出しナイフは買えたと思う。

 

映画の『バトルロワイヤル』ではバタフライナイフで教師を刺すシーンはあるのだけれど、それから事件が沢山起こって、色々なものが規制されまくって今に至っている。

 

バタフライナイフは所持すら出来ないんじゃなかったっけ。

 

昔は結構強力なガスガンが所持できたのだけれど、車に向かって撃ちまくる事件が起きて、そこにも規制がかかって今は売買できないし、普通にナイフにしたって未成年者は買えはしない。

 

けれども、昔は買えた。

 

あんまり覚えてないし、詳しく調べるつもりもないけれど、『ぼくらの』連載当時だったら中学生でもあんなナイフ買えたんじゃない?(適当)

 

チズが持っているような飛び出しナイフが買えなくなったのは、秋葉原通り魔事件からだったと思う。

 

それまでは刃渡りが15cm未満のナイフは普通に買えたような買えなかったような。

 

まぁ『ぼくらの』執筆時点ではそんな未来のことは分からないからタイムパラドックスはしょうがないね。

 

チズはおそらく、自分で畑飼を殺すためにナイフを購入したのだろうと僕は思う。

 

あのチズの家族がナイフなんて持っているとはとても思えない。

 

話を戻すと、カコに押し倒されたチズは、体は減らなくても心は減ると言って、カコの要求を断る。

 

(3巻p.22)

 

お前が言うと説得力があるけど重いな。

 

ただまぁ、チズは最初の方は楽しんでいたのであって、望まない相手とのセックスについて、心が減ると言っているのだと思う。

 

(3巻p.23)

 

三コマ目でチズが何を考えているのか分からない。

 

最後のコマは、言おうか言うまいかをちょっとだけ悩んでいるのだと思う。

 

次のページでチズはセックス経験があるという告白をする。

 

(3巻p.24)

 

当然、相手はキリエではなくて畑飼とかです。

 

その後、狼狽するカコを尻目に、佐々見一佐がインターホンを押してチズが応答する。

 

(3巻p.25)

 

ところで、Wikipediaあたりだと、鬼頭先生は思春期の子供たちの心理を良く理解しているだとか書かれているのだけれど、僕はそれについて偏見だと考えている。

 

何故というと、中学生が考えないような事柄を考えたり、中学生が選ばないような言葉を選んだりを鬼頭先生の漫画のキャラクターは良くするからになる。

 

「来客の多い日。」なんて言う中学生は居ねぇよ。

 

僕は中学生当時、『バトルロワイヤル』っていう中学生が殺し合いをする小説を読んで「こんな中学生居ねぇよ」と思ったし、高校生の時『ぼくらの』を読んだ時も、「こんな中学生居ねぇよ」って思った。

 

思考が大人過ぎるんだよな。

 

子供はもっと何にも考えてない。

 

『なるたる』にしたって、中学生ののり夫が「レトリックじゃないか」だなんて言うのだけれど、大学生の時、法政大学に通っている友人(当時二回生)にレトリックって言葉を使ったら普通に通じなかった。

 

(『なるたる』4巻p.199)

 

僕の友人の彼は人生の中でレトリックという言葉と出会ったことはその瞬間までなかったようだ。

 

僕は高校生の時に『なるたる』を読んで分からなかったから調べて知っていたけれど、『なるたる』を読んだ当時、レトリックなんて言葉は知らなかったのだから、中学生が知っているなんて出来事はどれ程ありふれているだろう。

 

中学生がレトリックなんて言葉を知っているとは思えないし、使いこなせる場合なんてほとんどないと思う。

 

「大人が描く子供」としてしか描写出来てなくて、実際の思春期の子供たちを理解できているわけじゃないと僕は思う。

 

見たことないから分からないけれど、プリキュアとかの方が良く描写出来てるんじゃない?(偏見)

 

話を戻すと、インターホンに応答すると、佐々見一佐と多手さん(階級不明)がチズの家に訪れていた。

 

(3巻p.26)

 

日本軍の大佐がこんな使い走りをするのかと素で思う。

 

木っ端の役人の仕事であって、一佐の仕事ではない。

 

これについてどう説明するか少し考えたけれど、普通に鬼頭先生がわざわざこのためにキャラクターの顔を考えるのが面倒だったから、後にサポートに回る軍人を寄越したというのが一番近い理解だと思う。

 

この後、佐々見一佐に連れられて、カコとチズは横田基地に行くことになる。

 

実際、東京に横田基地がある。

 

鬼頭先生は軍オタだからそういうの詳しいんだと思う。

 

僕は、『なるたる』の舞台を調べる時までそんな基地の存在をまるで知りませんでした。

 

クッソ激烈にどうでも良い話ではあるのだけれど、『ぼくらの』の世界では指紋認証で扉は開くものらしい。

 

(3巻p.29)

 

多手さんが指紋認証でドアを開けている。

 

指紋認証でセキュリティーをする未来は果たして来るのだろうか。

 

ただ、同じ時期の『メタルギアソリッド2』というゲームでは、目の網膜パターンで扉の鍵の開閉を行っていたから、そのようなものがハイテク技術として用いられるようになるというのが、『ぼくらの』執筆当時の近未来観だったのだと思う。

 

まぁ、実際、自衛隊がどんなセキュリティーをしているのかは知らないのだけれど。

 

指紋でやってたりするんですかね?

 

普通に、他のところと同じで首からカードキーぶら下げてる感じだと思うけれど。

 

本編に話を戻すと、横田基地に着いたチズとカコは、他の子供たちと合流する。

 

(3巻p.30)

 

子供たちは何も知らされていない御様子。

 

いや、説明しろよ。(素)

 

まぁ説明していないのは話の都合であって、漫画として読者にいっぺんに知らせるためなのだけれど。

 

この後、コモが出てきて、コモの父親が軍の関係者であるということが分かる。

 

(3巻p.31-32)

 

ここでコモの父親が日本軍の関係者だということが初めて明らかになる。

 

マキが「あ…」って言っているのは、コモと親友であるという設定があって、コモの父親のこともマキは知っているからになる。

 

コモの父親は海軍将校で、階級は一佐(大佐)らしい。

 

海軍将校とか普通に『ワンピース』みたいでかっこいいと思う。(小学生並みの感想)

 

コモの方は精神的に追い詰められて、耐えきれなくなって父親にSOSを出した御様子。

 

頬こけてるしな。

 

だから、コモの精神的に脆弱であるという設定は完全に無駄だったということはないのだけれど、どの道、コモ編が始まってから頬のコケがなくなるということ、コモ編本編でコモは別に精神的に追い詰められていないことから、設定の変更はあったと思う。

 

この後、子供たちを軍が保護して、ジアースを管轄するという話と、子供たちを身体検査するという話が続く。

 

そんな中でこんなちょっとしたコマがある。

 

(3巻p.33-34)

 

佐々見一佐がジアースを動かすなと言い、それを聞いたカコが助かるの?という。

 

そのやり取りを傍で聞いているモジは何とも言えない表情をしている。

 

モジはナギの謀殺についてのことを考えている。

 

自分が死ぬのだったらナギを謀殺しても仕方がないから謀殺しないという話で良いのだけれど、自分が助かるとなったら、ナギの存在が頭をもたげてくる。

 

古茂田一佐が何を考えているのかは不明。

 

身体検査についてチズとアンコが難色を示しているのは、チズの方は妊娠の件で、アンコの方は普通に嫌だからだと思う。

 

そのことを伝達する佐々見一佐は嫌な奴っぽく描かれているけれど、この描写が小説版の佐々見一佐の性格に繋がっている。

 

とは言っても、僕は一巻しか読んでないから詳しくないのだけれど。

 

その後、コモも身体検査を受けるように古茂田一佐は言う。

 

(3巻p.35)

 

厳格な軍人として、子であろうと平等に扱うという描写なのだけれど、特に三コマ目の表情においては、コモ編で見る優しさが欠片もない。

 

設定として、コモは父親に嫌われているのではないかと怯えているそれがあるのだけれど、別にそれは拾われていない。

 

(6巻p.120)

 

特にこのことについてはコモ編では効果は発揮しておらず、コモに身体検査を命じる古茂田一佐の目は、コモ編で見る愛情深い父親のそれではなくて、あまりに冷徹な軍人のそれであるのであって、もしかしたら、本来的にコモ編での彼は、冷徹に振舞う予定だったのかもしれない。

 

まぁ、実際のところは良く分からないけれど。

 

同じページでアンコの顔が描かれている。

 

(同上)

 

このことは、父親にあまり愛される時間がなかったアンコが愛を示さないコモの父親を見て、なにがしかを思った描写だと思う。

 

この後は、防衛医大卒であろうお医者さんに子供たちがケツの穴に指を突っ込まれたりするのだけれど、こんなシーンがあるのは普通に鬼頭先生がロリコンだからだと思う。

 

他になんかあんの?

 

ないでしょ。

 

ここで、カコ編の一話が終わる。

 

…。

 

ちょっと記事が長くなったので、分割する。

 

色々しょうがないね。

 

本当は、後編まで書いた後に公開したかったけれど、体調が未だにあんまりよくないし、パソコンもファンがぶっ壊れて長時間使うと電源が落ちるようになったから、とりあえず前編だけ上げることにする。

 

結局、一話分しか解説してないんだよなぁ。

 

続きはここ

 

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