今にも斬りかかろうとしていたウルブレードにとって、当然防御する暇はない。まともに擬似竜巻に突っ込み、荒れ狂う風圧によって、体の節々を切り刻まれる。
とっさに放ったために、威力は控えめであるが、それでも、ウルブレードにとってはかなりの痛手であった。先刻の大戦で、間近で疾風砲を目撃したブルドリラーは、一人身の毛がよだつ思いでいた。
刃を地面に指して、なんとか直立を保ったウルブレード。しかし、それは反撃できないことを相手に示しているも同じであった。
「切裂乱舞」
容赦なく、鞭の嵐が襲い来る。とっさに刃を引き抜くが、鞭の到達速度の方が上回っていた。
絶え間なく打ちつけられる鞭は、執拗なまでに腕を狙っていた。それにより、腕がしびれ、刃を持つだけでも精一杯だ。ウルブレードは激痛に耐えながらも、なんとか刃を握りしめていた。
「俺らの大将もバカだよな」
傍観していたエレファンマーが腕を組んであきれる。ブルドリラーは睨みつけたが、構わず続けた。
「ソニクジャクの得意技をまともに受けているのに、あそこまで武器に固執する必要があるとは思えないな。たとえば、武器を投げつけて奇襲するとか、そのまま捨てて身軽になって回避するとか、いくらでも方法はあるのによ」
言い草は癪に障るが、エレファンマーの説も一理あった。自在に振りまわしているので、一見軽そうなウルブレードの刃だが、実際はブルドリラーのドリル以上の重量がある。そのため、あの刃の一撃は、ブルドリラーのドリルの貫通攻撃をしのぐと言っても過言ではないのだ。
なので、あえて武器を捨てることで、ソニクジャクの猛攻から逃れるというのは、むしろ有効な一手となりうる。
だが、長年ウルブレードに仕えてきたブルドリラーは、なぜ武器を手放さないか分かり切っていた。実のところ、武器を手放せば、一気に勝負を決めることも可能なのである。しかし、ウルブレードはあえてその手段をとらない。
とはいえ、このままでは、ダメージが蓄積して形勢逆転不可になるのは必須であった。そんな獣刃大将軍の魂胆を見通しているかのように、ソニクジャクは更に鞭の勢いを強めた。