ギジルルルリッ!ギジルルルリッ!



いつもの三角錐型の目覚まし時計が

奇怪な音を立て、

小刻みに揺れてはボクの頭に落ちて来た。



イテテテテ。。。。。

最悪。。



まだ朝の5時46分じゃないか。



身に覚えのないタイマーに

イラつきながら頭を掻き毟る。




今日は日曜日。




昔は、1万人の音楽隊のパレードが

織りなす交響曲の中心人物のように

軽快な音を鳴らしていた

ボクの目覚まし時計だったが、



1日にその壮大な音楽を何度も

演奏させられ続けたせいで、

今ではただ、

地下を掘り続ける掘削機のような

雑音を部屋に鳴り響かせている。




今日は日曜日。





ディグール王国の朝は早い。




外では既に

新聞配達のおじさんが

カルパッドに跨がり、

手慣れた様子で新聞を配りまわっている。



庭に植えてあるフィスの木は

最盛期を迎え、

赤銀色の花を咲かし、

にび色の実を肥やしている。



その実を啄もうと

たくさんのニルタールが木に宿り、

ジョンジョンせわしく鳴いている。



それを窓から飼い猫のイブが

蹴伸びをしながら眺めていた。





今日は日曜日。





少し早いが、

このままだと昼過ぎまで

また寝てしまいそうなので、

重たい体を起こし、

ボクは出かける準備をした。





緑で統一された部屋を出て、廊下を歩く。

途中、姉のモーネの鼾が廊下まで

聞こえてきたが、

足を止めずに洗面台まで来た。



手慣れた順序で歯ブラシを取り出し、

水をつけて歯を磨く。

歯磨き粉は、つけないタイプだ。





今日は日曜日。





歯ブラシを一定感覚で左右にしならせながら今日の予定を考える。





今日は日曜日。




今日はディルスルー通りにある

行きつけのブティック、

トム・トーレで

服でも買おうか。



ちょうど肌寒くなってきたので、

薄手のカーディガンが

欲しかったところだ。



トム・トーレの店主、

トム・ダイムさんは

巻きひげの世界選手権があれば

優勝する程の

立派な巻きひげの持ち主だ。



そのひげを際立たせるためかいつも

白色のシャツを

黒色のスキニーの中へ入れている。

ベルトはしていない。



これがダイムスタイルだと

言わんばかりに

毎日履き慣らし続けた革靴から

醸し出される上級な品のある黒色は

ダイムさんの巻きヒゲをより一層

際立たせている。





今日は日曜日。





今日はマーロ通りにある花屋

パンタカルナでバラでも買おうか。




最近働いている

赤髪の女の子の名前はわからないが、

その気さくさと、

どの花にも負けない美しい笑顔で

店は疚しい考えを持った男たちで

ごった返している。



切り揃えられた花が

まるで死刑を順番待ちしている

裸の囚人みたいに思えて

嫌っていたボクも

買いに行きたくなるほど

その女の子は美しい。





今日は日曜日。





今日はギングス通りの純喫茶ハルで

コーヒーでもたしなもうか。



喫茶ハルは一見さんお断りの喫茶店で、

エプロンをしていなければ

大きなカバとも見て取れる程のマスター

バンダンドおじさんの

自慢の店だ。



店内では常連のお客さんが

いつも決まったテーブルで

コーヒーを嗜んでいる。



バンダンドおじさんは気さく且つ

マスターに相応しいほど饒舌で、 

その昔、洋ナシの木を

両手で引っこ抜いた話は

何度聞いても笑ってしまう。



『ハル』という名前の由来は

どうやら初恋の人らしい。



コーヒーの味が良く分からないボクは、

その洗練されたブラックコーヒーを

飲みに行くというよりは、

バンダンドおじさんに

会いに行っているようなものだ。



ボク以外にも

同じ目的でお店に来ている人は

たくさんいるのではないだろうか。

それくらいハルは居心地が良い。




今日は日曜日。




歯磨きを終えて顔を洗い終えると、

整髪料で髪を整え、ヒゲを剃った。




今日は日曜日。





時間は朝の6時11分。



今日はやっぱり『いつも通り』

でキミのところへ行こう。



キミの寝顔にキスをして、

『いつも通り』を着飾ろう。

『いつも通り』に花を咲かそう。

『いつも通り』を満喫しよう。



その通り。その通り。





ズィーヤ★