引越しの荷物を引越し屋さんが次々とトラックに積み込む。


みるみる、部屋が空っぽになっていく。


行かなきゃならないのはわかってるけど、


だけど…


「ちょっちゃん準備できた?」



「うん…」


「心配?」


「だって、倒れちゃう位大変なのにコンクールだよ?


 それで、戻ってきたら手術だよ?


 心配に決まってる。」


「ちょっちゃんが何にもしなくても結果は変わらないよ?」


「そんなのわかってるよ。分かってるけど…


ママのバカ!!」



あたしだって分かってる。



子どものあたしがいてもいなくても、どうにもならないこと、


それに、もう、ここにあたしたちのいる場所はなくなる事ぐらい、


わがまま言って今日まで伸ばしてもらってたことも、


でも、でも、このままじゃ、心配で、心配で



「ふうっ」



ママがため息をついて、


「明日の夕方パパが迎えに来るって。だから、今日は好きにしなさい。



能勢くんのお母さんが、病院に入ったら連絡くれるって、


ママは引越し屋さんと行かなきゃだから、


一人でここで電話待てる?」



「ママっ!」



「しょうがないでしょ、もうっ


これが最後よ?これ以上はダメだからね?」



「うん♡ うん♡ ママありがとう!!」



「ちょっちゃんがそんなふうに、一途な子だとは思わなかった。」



「ごめん」



「ううん、ほんと言ってちょっと嬉しい。


 あんまり聞き分けよくて、お利口さんじゃつまらないもの。


さすがママの子よね~!」



「もぉっママったら。」