制作費6万円・再生回数5億回のAI短編ドラマ 虚偽だった | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
公式ホームページ:http://zhoulaiyou.jp

中国のAI短編ドラマをめぐり、「わずか3000元(約6万円)で制作し、海外で5億回再生を達成した」とされる作品が大きな話題となったものの、実際には誇張や誤解が含まれていたことが判明し、中国国内で議論を呼んでいます。問題となっているのはAI短編ドラマ『霍去病(かく・きょへい)』です。



この作品は当初、「3人のチームが48時間で制作し、制作費はわずか3000元」「海外で5億回再生」といった情報がSNS上で拡散され、中国版Xともいわれる微博(Weibo)のトレンドにもたびたび登場しました。AIによる映像制作の効率の高さを示す象徴的な事例として注目され、「AI映像制作の工業化の始まり」といった評価まで出るほどでした。

ところが間もなく、業界関係者から「実際には80話の作品は存在しない」「海外5億回再生という数字の根拠が確認できない」などの指摘が相次ぎ、データの信ぴょう性に疑問が呈されました。

こうした中、3月7日になって『霍去病』の監督である楊涵涵氏が動画投稿サイトで説明を行い、ネット上で広まった情報の多くが事実ではないと認めました。楊氏によると、3000元という金額はAI生成に必要な計算コストのみを指しており、人件費などは含まれていないといいます。また制作チームも実際には約20人規模で、ネット上で広まった「3人」という情報とは異なると説明しました。

さらに「80話の短編ドラマ」という情報も事実ではなく、現時点で完成しているのは4分と6分の2本の短い映像だけだとしています。問題となった「5億回再生」についても、他のメディアの報道を引用したもので、自身では厳密な統計を取っていなかったと釈明しました。

実際のデータを見ると、この作品の動画は中国版TikTokの抖音(Douyin)では最多でも約2700件の「いいね」、微博での再生数は約27万回程度にとどまっています。

今回の騒動の背景には、AI映像制作の実態がまだ十分理解されていない状況があります。業界関係者によれば、AI短編ドラマの制作には脚本作成、キャラクターや背景の画像生成、動画生成、編集作業など多くの工程が必要で、少なくとも4人以上のスタッフが関わるのが一般的だといいます。またAI生成は失敗や修正も多く、計算コストも想定より大きくなるケースが少なくありません。

こうした事情から、映画やドラマ制作に携わるクリエイターの間では「AIなら低コストで簡単に作品が作れる」という誤解が広がることへの懸念も出ています。今回の『霍去病』騒動は、AIコンテンツブームの中で誇張された情報が拡散しやすい現状と、AI制作の現実とのギャップを象徴する出来事となりました。