香港で1989年に起きた「五花大绑(ごかだいばく)殺人事件」と呼ばれる未解決事件が、発生から37年を経てついに解決しました。事件解決の立役者となったのは、かつてテレビ局TVBの女性キャスターとして活躍していた邬凯宁(ウー・カイニン)氏で、現在は香港警察の重大犯罪捜査班の幹部を務めています。ニュースキャスターから刑事へ転身し、長年の未解決事件を解決した経歴が大きな注目を集めています。


事件は1989年8月、レストランの男性従業員・雷育才(当時26歳)さんが香港・西貢の龍蝦湾の海岸に誘い出され、梅耀強ら4人の男に襲われたことから始まりました。雷さんはナイロンロープで縛られ、口をテープで塞がれ、頭に袋をかぶせられた状態で約20分間にわたり暴行を受け、最後は鉄製のシャベルで頭部を殴打され死亡しました。
遺体は砂浜に埋められ、翌日観光客が発見して事件が発覚しました。残忍な手口から「五花大绑殺人事件」と呼ばれましたが、当時はDNA鑑定技術が未発達で、被害者の顔も大きく損壊していたため、捜査は難航しました。
事件後、共犯者2人は逮捕され、もう1人の容疑者も2000年に中国本土で拘束され無期懲役判決を受けました。しかし主犯とされる梅耀強はタイへ逃亡し、名前を変えて工場やレストランを経営しながら家庭を築き、3人の子どもを育てるなど、身分証明書を取得せずに37年間身を隠していました。
転機となったのは2025年です。重案組を率いる邬氏は事件の古い紙の捜査資料をすべてデジタル化し、当時現場付近の車両から採取されたぼやけた指紋を三次元モデリング技術で解析しました。その結果、指紋の12の特徴点を抽出することに成功し、国際刑事警察機構(インターポール)のデータベースと照合。タイで不法滞在者として登録されていた人物の指紋と一致し、その人物が梅耀強であることが確認されました。
タイ警察は2026年2月2日、バンコクで梅耀強を逮捕し、同月5日に香港へ移送。香港警察は殺人容疑で正式に逮捕しました。
邬氏はかつて香港TVBテレビの記者としてキャリアを始め、スポーツ中継やニュース報道に携わった後、ニュースキャスターとして活動していました。2011年に香港警察に転身し、厳しい試験や体力試験を経て採用されました。その後はサイバー犯罪やマネーロンダリング事件などを担当し、2025年に東九龍地区の重大犯罪の捜査班幹部に就任しました。
今回の事件解決は香港社会でも大きな話題となり、SNSでは「香港ドラマが現実になった」と驚きの声が広がっています。また、女性刑事が少ない香港警察の中で活躍する象徴的な存在としても注目されています。専門家は、今回の事件が「古い証拠でも技術の進歩によって新たな証拠となり得る」ことを示した重要な事例だと指摘しています。