中国不動産大手の万科企業(バンカ)トップが行方不明に 当局が拘束か | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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中国不動産大手の万科企業(バンカ)で、長年トップを務めた郁亮(ユー・リャン)氏が、今月8日の役職辞任を境に消息不明となっていることが分かりました。業界を代表するスター経営者の「失踪」は、同社が直面する深刻な債務危機と、事実上の国有化に向けた激しい内部再編を象徴しています。



郁氏は1月8日、「定年」を理由に取締役および執行副総裁を退任しました。しかし、36年間会社を支えた功労者への謝辞が公式発表に含まれないという異例の事態に加え、翌日から本人のSNS更新が完全にストップしています。関係者の間では、辞任直後に当局へ連行され、過去の不透明な資金運用や、すでに逮捕されている祝九勝前総裁に絡む不正について調査を受けているとの見方が強まっています。

郁氏が去った後の万科の経営状態は、まさに崩壊の瀬戸際にあります。現在、同社は極めて深刻なキャッシュフロー不足に陥っており、今月15日にも総額57億元(約1,200億円)に上る社債の支払猶予を債権者に提案したばかりです。

一時期は不動産業界の「優等生」と呼ばれた同社ですが、現在は自力での再建が不可能な状態です。筆頭株主である国有企業の深セン地下鉄による巨額の資金注入や、当局による社債返済期限の延長措置によって、かろうじてデフォルトを回避している「自転車操業」の状態が続いています。

郁氏の失踪と時を同じくして、万科の経営陣からは旧来の「生え抜き組」が次々と姿を消しています。代わって実権を握っているのは、深セン市当局が送り込んだ専門家チームです。

今回の郁氏の排除は、過去の無理な拡大路線や不透明な会計処理の責任を旧経営陣に押し付け、政府主導による「クリーンな国有企業」へと生まれ変わらせるための強制的な膿出しであると市場は見なしています。かつて「生き残れ」と叫んだ郁氏自身が、その「生き残り」のための粛清対象となった皮肉な幕引きに、中国経済の厳しい現状が浮き彫りとなっています。