日本では数年前、金融庁が発表した報告書がきっかけで「老後2000万円問題」が大きく注目されました。老後、20年~30年間に最大で2000万円が不足するという試算で、日本社会に大きな衝撃を与えました。
一方、中国では著名な経済専門家が老後の備えについて「40歳から老後の備えを行うべき」との提言を発表しました。中国東北証券の首席経済アナリストの付鵬氏は、中国の少子高齢化が進んでいることや今後、縮小が予想される社会保障費などの状況から、個人での老後の備えが非常に重要であると説明しています。
中国の高齢化社会ですが、その現実は日本以上に厳しい予想となっています。中国では日本のように公営での高齢者施設は非常にわずかで、現状そのしわ寄せは労働現役世代にのしかかっています。儒教の教えの影響もあり、老後の親の介護は子供が見ることが一般的で実際に現在、介護が必要とされる高齢者の90%以上が自宅で子供や家族による介護を受けています。
政府としてもひっ迫する高齢者の社会保障費から、現在推し進めているのは訪問介護人材の育成で、基本的には高齢者は自宅で家族による介護を受けることが暗黙の了解となっています。しかし、79年から始まった一人っ子政策が長きに渡って続いた中国では一人の子供が両親、さらには4人の祖父母の面倒を見るという時代にすでに入っており、現役世代に依存した状況となっています。
こうした現状に加え、40歳からの老後の備えとして貯金・安定した仕事・住宅購入・資産運用を行うことを呼び掛ける提言に、中国のネット上では不満の声が多く寄せられています。今後、こうした中国の高齢者の社会保障の問題は国家運営にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。