オペラ座。

 

好きなプロはたくさんあるけど、また見たいプロ、といったらいつもオペラ座だった。

ツイッターかyoutubeか忘れたけど、羽生氏が募集していたリクエストにも迷わず書いた。

 

だってそりゃあ、オペラ座が見たいに決まってるじゃない。

(偏見)

 

だからGIFT現地観戦中、マスカレイドとオペラ座がマッシュアップされた曲が流れたときは、

「え?オペラ座?マスカレイド?もしかしてオペラ座?(いやマスカレイドでも別にいいけどでもここはオペラ座でお願い)」

と超早口で祈ったもんだ。

そして、スクリーンにあの衣装が写ったとき、

「うおおおおお」

っと変な声で叫んでた。

ああ素晴らしきかな声出しOKの世界。

 

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サラッと書いたけど、マスカレイドとオペラ座のマッシュアップというアイデアが神すぎる。

最初はオルゴール音だったオペラ座が、いつのまにかハープ(生演奏?)になってるのとかも芸が細かい。

 

娘の一言感想も、「阿修羅ちゃんよかった」の次は

「マスカレイドとオペラ座の怪人が混ざってるの好き」

だった。

娘、当時小学生で、たいして興味もなさそうだったのに、ショーナンバーのマスカレイドまでしっかり覚えてるとは、もしかして沼なんだろうか。

 

ところで・・

冒頭の4回転ジャンプのとこを映像でごまか・・演出するの、私けっこう好きなんですよね。

特に前半でやってた「バラ1」の映像、良かったですよね、「お~っと衣装着陸上演技!なんであえて陸上!衣装着ても陸上!・・・片足でテテテきたああ・・ジャンプ!」

って脳内実況(ツッコミ)しながらおおいに楽しんだ。

 

プロローグでやっていた、過去の演技映像から出てくるのだって十分よかったのに、GIFTでは毎回いろんなアイデアがあって、ちょっと贅沢すぎないかと心配してる。

もうちょっとネタを小出しにしたっていいんだよ?

 

「オペラ座」は冒頭に本人が出てきて、大型モニターに正面から撮った映像が映されるの、羽生結弦が自分の需要をわかりすぎてて思わず笑いが出てしまう。

あの冒頭の振り付けは本人の演技で見たいもんね。

 

そして一旦羽生氏が引っ込み、シャンデリアがガッチャーンって粉々になって。

「ああ、これで無事に4回転回避ね」

「ここからはズッ友3A」

って我らが安心したのを見計らって、後半一発目に4T入れてくるのがマジ羽生結弦だなと思いましたw

 

19歳のときにできなかった「後半に4回転」のリベンジを28歳でやるのはまあいいとして、「3時間の単独公演の後半に4回転」ってのは、ちょっと時空の認識が歪んでるよ?

 

結局4Tは転倒してしまったけど、起き上がり方、プログラムへの溶け込ませ方(ごまかし方)が神業すぎて、それはそれで驚異的な何かを見た。

(褒めてる。これは断然褒めている)

 

そして配信を見てはじめてわかったんですけど。

最後のスピンが天井カメラアングルだった・・w

中国4000年の技、天井カメラ。

くっそ、撃ち落としたいぞ天井カメラ・・と思いながら見ていたあの頃を思い出す。

 

疑いなくネットの住人である羽生氏は、当時天井カメラがスケオタにボロクソ言われてたの知らないはずないと思うんですけど、彼自身は天井カメラのアングルが案外好きだったりするんだろうか。

 

そう言えばルッツは「散歩」しませんでしたね、今回は。

そして3A3連続から、ちょっとシェイキーな3lo、耐えた3lzまで、平昌の再現みたいだった。

 

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28歳のオペラ座は想像したよりずっと優美だった。

体は肉厚になったし男っぽい所作がサマにもなってるけど、力強さを増したというよりは、優美さの解像度を増したという感じ。

 

ファントムの強さや暗黒面ではなくて、その内側にある透き通った感情、ストーリーよりも音楽にこめられた内面を表現しようとした羽生オペラ座の感性は当時から変わってないんだなあ。

 

そういえば巨大羽生(と謎の手)の演出も、ちょっと美しすぎてまぶしすぎて、なんだか目のやり場に困ったわね・・w

ファントムが美しいって罪深い。

 

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ちょっと話は変わるけど、オケの東フィルさんといえば、テレ東12月31日のジルベスターコンサートが楽しみで毎年見てますよ。

カウントダウンに音ハメして曲を終わらせるという世界一どうでもいい挑戦に、やたら本気で合わせてくる指揮者もいればガン無視してくる指揮者もいれば、ナチュラルに合わない指揮者もいて、一周回ってクラッシックって自由だなと思える番組。

(※ポップスはカウントで合わせちゃうからこの醍醐味はない)

 

先月、友人が東フィルの演奏会に行ったというので内容を聞いたら

「山本耕史が歌ったの」

というのでぶっとびましたけどw、ミュージカルやオペラ、JPOPなどなどあらゆるシチュエーションでの演奏ノウハウを持つ職人集団、プロ中のプロですよね。

ジルベスターも、紅白も、ニュイヤーオペラコンサートも東フィル。

きっとどんな難しい注文にも応えられるオケなんだろうなと想像する。

 

で、今回、CD音源と生オケとを混ぜていくという難しそうな演奏スタイルだったわけですけど、最後に羽生氏が

「とうきょう、フィルハーモニー、こうきょうがくだん」

と噛みそうになりながら紹介した瞬間、

「まじっすか」

ってなりましたね・・会場もどよめいてたし。

なるほど、こんな神業、東フィルにしかできん、と納得する一方で、羽生氏、よくもまあここまでガチのプロ集団をひき連れてきたなと感動した。

 

っていうかさ、彼が紅白の審査員席に座ってるとき、我らファンたちは

 

「きっと自分の東京ドーム公演のヒントになるものを吸収してるよね」

 

ってみんな呑気に言ってたけど、今思えばとんでもない話じゃない?

日曜の夜にユーミンやらパフュームやらミセスやらを観客席に座らせて、東フィルと武部さん、そしてMIKIKOさんを連ねて、なんなら紅白だろうがレコード大賞だろうがアカデミー賞だろうが、彼が個人的に開催できちゃうんじゃないかすらある。

 

つまり、我々が考えてるのとスケールが全然違った・・w

 

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もう話が取っ散らかっちゃってすみません。

オペラ座の話。

 

オケの演奏、チューバがすごく良かったんですよ・・

 

競技で使ってた音源は、どっちかというと弦とかトランペットとかの高音楽器が華々しい印象だった。

でも今回はチューバをオルガンの通奏低音みたいに効かせて重みを出してるんですよね。

もちろん今回オルガンがないという事実も踏まえてだと思うけど、大きな会場、大きなリンクのスケール感を出すために低音のウェイトを上げてるんじゃないかなあ。

それが28歳になった羽生氏の重みとあいまって、とってもいい。

 

金管楽器が効いてる競技プロは「オペラ座」から「天と地と」まで全くなかったから、世間一般には羽生結弦=金管楽器っていうイメージはあんまりないと思うんですけど「天と地と」の頃にここで語りまくったとおり、彼は金管楽器がほんとうに似合うんですよね。

だから今回は「火の鳥」「オペラ座」と重低音が堪能できたのほんとにうれしい。

後半のワルツのところでチューバが鳴ってるのとかもすごくいいと思うんですよ、ワルツの軽い拍子感じゃなくて、もっと民族的な、溜めのあるグルーヴ感が羽生氏らしくて。

 

ピアノ習ってたりすると、ことあるごとに「拍子感が違う」って注意されて、毎回頭かかえるじゃないですか。

でも羽生結弦は、ワルツだからワルツらしいリズムを取るということを絶対しない。

当時はどうしてなんだろうって思いましたよ。

これほど音楽表現に秀でたアーティストが、なぜ頑なに西洋的拍子感や舞踊のテイストを出そうとしないのか。

これから世界選手権やオリンピックをふたたび取っていこうという若手が、日本のポップカルチャー的テイストを貫いてていいんだろうかって。

ジャッジが見ている音楽表現は「芸術性」ではなくて、しょせん「音楽のキャラクター」なのにな・・って。

 

彼にはたぶん、音楽は(スケートは)そこじゃない、っていう確信があったんでしょうね。

「音楽のキャラクター」「拍子感」などという西洋音楽的慣習は、日本人や、地球の人口の多くを占める非西洋人にはそれほど意味がないわけで。

そこにある音楽が「ワルツである」っていう事実より重要な感情を語っているのなら、形式よりもそれを表現するのが音楽表現だろ?っていう確信。

そのためには借り物の形式ではなくて彼自身から出てくるリズムであり感情でなきゃいけない、っていう意地みたいなものがあったんだと思う。

だから、翌年、プログラムを「SEIMEI」にして、より自分のキャラクターに合ったテーマ、自分の拍子感に寄せた音楽を使って、音楽表現がどこまで評価しうるかを探ったのだと私は思ってるんですけど、考えすぎかな?

 

 

また話が逸れましたがw

終止の、最後の和音の演奏の仕方。

競技の音源では弦の高音がまずはっきり聞こえて、内声や低音は分散して入るから、天から手が差し伸べられて浄化されていくようなキラキラした動きを感じたんです。

でもGIFT版はチューバとトロンボーンとファゴット?ホルン?が作る低音にウェイトがあって、しかも低音から高音まで一斉に和音を演奏して、そのままじっと動かないですよね。

 

意図的にそういうふうに演奏したのか楽譜どおりなのかはわからないけど、私はこの終止に9年間の重みを感じたし、

「ああ終わった・・」

って思いました。

そうだよね、こういう世界はもう終わったよねって。

 

そんな万感の思いを彼自身がこめたかどうかはともかく、この物語における最後の競技プロとしてこのオペラ座を選んだのにはきっと意味があるし、これだけ凝った、一番大がかりな(手を含めてw)演出で見せてくれたのにも意味があっただろうと思う。

それにどんな意味であれ、私が羽生沼に落ちたシーズンのこのプロをこんなふうに美しく華々しく見られたことが純粋に嬉しかったです。

 

 

それにしてもまあ、どうやって半年で作ったんでしょうw

しかも今週末からノッテステラータですよ?

 

いちおう感想はこれで終わるんですけど、正直、書ききった感全然ないですw

それなのに12日には配信おわっちゃうなんて・・

 

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そうだ、最後にこれを書かなきゃ。

 

エンディングの「僕のこと」の構成が地味にヤバい件w

 

 

これ、すぐにYoutubeで公開されたの、帰りの電車で見てね、って意味ですよね。

帰り道の遠い私にはありがたかった。

 

しばらくしてメンシプでワンカメバージョンも公開されて、わかっちゃいるけど無編集だったんだなと、羽生結弦の凄さをまた見せつけられる。

 

 

ところで

今は修正されてるけど、最初の数時間、概要欄のジャンプ構成表に「3回転ループ」が入ってなかった。

たぶん、あまりに簡単に跳びすぎてて羽生氏自身も忘れてたんだと思うけど。(真顔)

 

あと、「オイラー」が「1回転ループ」なのもじわじわと面白い。

我々がハンガーを「衣紋掛け」、タートルネックを「とっくり」と言ってしまうのと同じだろうか。(違う)

 

 改めてこのプロについて気づいた特記事項を書き出してみると

 

○プログラムの長さは6分ほど。

○8ジャンプ

○コンビネーション3つ(一つは3連)

○クワド5つ。

○4Tが3回入ってるので競技としてはザヤックルールに抵触

○ステップはサーキュラーステップとサーペンタインステップ?

 

昔のフリーみたいに軌道の違うステップが2つありますね。

演技時間が長いのと4Tザヤってる以外は、もしかしたら2010年以前のルールで使える構成なのではないか、なんていうことも一瞬思いましたが、1ループを使った三連続ジャンプはもっと最近できたルールだったような??

 

でもまあ、私がこれを見て何を感じたかというと、どれも皆、たぶんフィギュア競技の歴史の中で「アリ」だった時代があった技なんだろうなってこと。

 

 各時代にルールがあって、時代ごとに違う評価基準で採点されて、そういう競技を15年以上、それぞれの時代、それぞれのカテゴリで常にトップクラスの評価で走り続けてきたってこと。

 

改めてすごい人だなって思いました。