先日、1997ヴィンテージのボウモアの案内をもらった。
英王室御用達のワイン&スピリッツ商、ベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)が詰めたボトラーズもので、フラッグシップであるエクセプショナルカスクでボトリングされているという。






カスクNo.89の樽から100本だけボトリングされていて、53%のカスクストレングスだ。
Whiskybaseによるとボトリングは2024年、熟成に使われた樽はButtだという。
つまり、熟成は26年超ということになる。
また、バットは大きな樽なのに100本という少なさは、どこかとシェアしたのだろうか。
最近BBRでは、英国本社の一角にスピリッツショップをオープンしたそうだ。
アイテムは増やしたいだろうから、推測だが一部は自社用にプールし、フルカスクでは出さないのかもしれない。

なお価格は税前で£821.5、今のレートで約157,000円と25年超かつフラッグシップシリーズとはいえ、かなり高額だ。
ボウモアもかなり遠くにいってしまった感がある。

1990年代に蒸溜されたボウモアは、私が好きなウイスキーの一つだ。
たくさん買ってたくさん飲んだが、一因として価格が安かったのもある。
特にBBRのものは安く、1994と1996ヴィンテージのものが多かったと思うが、安いと8,000円台で買えた。
おそらく1997のエクセプショナルは、Barで飲むと15mlのハーフショットで1万円近くはするだろう。
10年の月日が経ち熟成は延びているとはいえ、15mlがフルボトルより高いのは隔世の感がある。

もちろん以前のものは熟成は15年前後と短く、新しく出たものとはかなりの差はある。
とはいえ15年以上熟成していれば十分に個性は拾えるし、アイラモルトだけに熟成が長ければいいというものでもない。
さすがに購入は諦めたが、エクセプショナルとしてボトリングされた、スペシャルな97ボウモア。
どこかで飲んでみたいものだ。

そのリリースを聞いて、家にある近いヴィンテージのボウモアを飲んでみようと、この1996のボウモアを飲みきってみた。
これは、100mlの小瓶に入ったハートブラザーズ(HB)が詰めた1996ヴィンテージで、46%に加水されている。

今は、ウイスキーミュウというボトラーを立ち上げた方の結婚パーティーで頂いたものだ。
ハートブラザーズのプロパー品を小瓶に詰め替え、オリジナルラベルを貼ったものだと思われる。

ラベルには2013年11月13日の結婚記念となっている。
Whiskybaseを見ると、該当しそうなのは1996年2月蒸溜で2012年4月瓶詰めの16年熟成。
そして同じく1996年2月蒸溜で、2013年9月瓶詰めの17年熟成の2本だろう。
しかし、16年ものはカスクストレングスバージョンもあるが、17年ものはカスクストレングスはない。
しかも結婚を記念するなら、同じ年にボトリングされたものの方がしっくり来る。

おそらく結婚の2か月前にボトリングされたものを、代理店であるスコッチモルト販売が小瓶に詰め替え、作成したものだと思われる。

いつ開けたか覚えていないが、半分飲んでいて残り半分が残っていた。
そのウイスキーをテイスティングしてみた。

【テイスティング】
淡いパッションフルーツ、粘性のある洋梨の柔らかい果実味、麦芽の甘さ、バニラクリーム。
フローラルなスイカズラの花、ホワイトグレープフルーツの皮、ドライな麦芽感、微かにバイオレット、細かく挽いたホワイトペッパーの粉。
ピートの苦味、焼いたオークの炭感、カルダモン様のスパイス、スペアミント。
フルーティーで伸びのいい余韻。

おそらくバーボンホグスヘッドの熟成で、ピートは柔らかく加水のため優しい。
スクリューキャップとはいえ、100mlの小瓶に移しかえ10年以上が経っているためか、なだらかにピークアウトに向かい、少し枯れ感が出ている。

最近流通しているプロパー品、例えば評判のよかった中国向けの12年などは、おそらく2010年代の蒸溜だろう。
それと比べると、90年代蒸溜のバーボンカスク系の果実の出方は明らかに異なる。
私にとってはボウモアの果実感といえばそちらのため、巷でフルーティーといわれるボウモアを飲んで、肩透かしを喰らう事が多い。

このボトルにも、90年代蒸溜のバーボンカスクのボウモアのフルーティーさが、よく現れている。
当時突き抜けているとは思わなかったし、今飲んでもスペシャルとはいえないと思う。
しかし染みじみとうまいし、ミディアム・ピートのフルーティーなアイラモルトという唯一無二のボウモアの個性が綺麗に出ている。

ボウモアは、私の中では2001年ぐらいからちょっとベクトルが変わって、少し苦手な方向にシフトした。
しかし、ハンドフィルを飲む限りでは2000年代の終わりから、品質が持ち直した印象がある。
今後はそれらが主力として、15~18年ぐらいの熟成として出てくるのだろう。
それだけに、今後のボウモアには大いに期待したい。
問題は価格だけだが、普通にBarで飲めるぐらいの価格では流通して欲しいものだ。

今後はさらに遠くなるであろう、90年代蒸溜のボウモア。
このボウモアは、それが偉大なる日常酒だった頃を思い出す、ノスタルジックなボウモアだ。

【Verygood!!!】