白ワインは様々な品種のブドウで作られる。
土着の品種でつくるものもたくさんあるが、国際品種のビッグ3といえばシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、そしてリースリングだ。
リースリングはドイツが原産といわれ、ドイツが総栽培面積の60%を占めるという。
確かにリースリング=ドイツ、というイメージが強い。
そしてドイツとの国境に接するフランスのアルザスでもまた、広く栽培されている。
石油のようなペトロール香が特徴といわれ、しっかりした酸があり辛口のワインにも甘口のワインにも使われる。
ペトロール香の強いものが苦手な私は、それが強めのアルザスのものより、控えめなドイツのリースリングを好む傾向がある。
まだドイツやアルザス以外でも、オーストリアのものも知られている。
今まで私が飲んだ中で一番うまいと思ったリースリングは、実はオーストリアのものだ。
FXピヒラーという作り手のウンエントリッヒというキュヴェで、なかなか入手することが難しい高級ワインだ。
しかしそこまで高級ではなくても、アルザスやドイツのもので価格を考えると、いいと思えるものは結構ある。
だがなかなか家飲みの定番にしづらく、繰り返し飲むキュヴェや作り手が定まらない。
しかし、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランの白とは、会わせる食事も変わってくるため、多くは飲まないが常備はしたい。
安くていいリースリングはないものだろうか?
このワインはそんなリースリングの中で、定番にしてもいいと思えるクオリティと価格のワインだ。
ベリー・ブラザーズ&ラッド(BBR)の試飲会で、並みいる銘醸地のワインの中にあっても、強烈な存在感を放っていた。
しかも税込でも3,000円ぐらいという価格も相まって、とりあえず3本購入した。
作り手はローリー・ガスマンという、17世紀まで歴史を遡れる老舗だ。
BBRの自社ラベルではなく、マスター・オブ・ワイン・セレクションとして展開されている。
ちなみにマスター・オブ・ワインとはワイン資格の最高峰で、世界に400人強しかいない。
BBRにはそのうちの3人が籍を置いていて、そのうちの誰かがこのワインを選んでいるのだろう。
このドメーヌは甘口のワインもつくっていて、2005ヴィンテージの甘口がセラーで眠っている。
しかし、このワインは辛口のリースリングで、ヴィンテージは2019年だ。
辛口とはいえ他のワインと比較すると甘さは強いため、食中に合わせるにはある程度食事を選ぶ。
このワインを家で開栓し、改めてテイスティングしてみた。
なお、グラスはシュトルツル・ラウジッツのギブリ、14ozを使用した。
【テイスティング】
オイリーなテクスチャー、ぺトロール香、アプリコット、砂糖がけのグレープフルーツ。
パイナップル、シロップ漬けの黄桃、藁、トロピカルフレーバー。
松葉、グリース、酸味のある半生レーズン、遅摘みの果実の甘味。
酸味の中に熟した果実や貴腐ワインのような甘さがある、ドイツ寄りの味わいのリースリング。
個人的には強すぎると苦手なペトロール香も抑えられていて、値段を考えると言う事がないクオリティだ。
BBRのワインは低価格のものでも、確固たるいい酒像を満たしている。
丁寧に作られているものをしっかりと選んでいるのだろう。
このワインもその典型だと言える。
アイリッシュやベンネヴィスが好きなウイスキーファンにも、刺さる味わいだと思う。
家で飲んでもやっぱりうまいし、ハーブソルトを添えた豚肉のグリルや肉じゃがともマッチした。
追加で買おうと思い、BBRのネットショップを見ると既に売り切れていた。
しまった、もう少し買っておくべきだったか。