装甲騎兵ボトムズ40周年記念第14話
むせ返るような熱さと湿気、そして熱病と死を運ぶ虫共、緑に塗り込められてはいるが、ここは地獄に違いない・・・・・・。
だが、ウドを離れてまる三ヶ月というもの、追跡者の目から死にものぐるいで逃げ回ってきた俺にとって、この内乱のクメン王国は、天国といってよかった・・・・・・・。
ウドが崩壊して、デライダ高地を離れて3ヶ月、キリコ・キュービィーは、メルキア南方の動乱に揺れるクメン王国に来ていました。
クメン政府軍の募集する政府軍傭兵となり、反政府勢力であるビーラーゲリラとの戦いが続く国の戦いに巻き込まれていき、その様子は、メルキア情報部のロッチナ大尉も掴んでいました。
バッテンタイン「とんだ事になったな、ロッチナ・・・・・・・。」
ロッチナ「はっ!監視システムのトラブルにより、12時間キリコの所在が掴めませんでした。回復した時には既に・・・・・・。」
バッテンタイン「クメン王国へ逃げ込んだ後か・・・・・・・クメン王国は完全自治権を主張し、我が連邦政府と敵対関係にある。どうするつもりだ?」
ロッチナ「手の打ちようがありません・・・・・・・しかし、クメンの政情は非常に不安定です。キリコの滞在も、そう長くは無いかと・・・・・・・。」
バッテンタイン「ただ待て、というのか?」
ロッチナ「はっ!今のところは・・・・・・・。」
ロッチナに監視されている事に未だに気づかないキリコは、配属された前線基地、「アッセンブルEX-10」で、指揮官のカン・ユー大尉と、司令官のゴン・ヌー将軍の訓示を、一緒に入った傭兵達と共に受けていました。
カン・ユー「今度、お前達の面倒を見ることとなるカン・ユー大尉だ!不満、要望があれば、自分が相談に応じる!これよりゴン・ヌー将軍閣下から訓示がある!!」
ゴン・ヌー「金で傭われたお前達に、傭兵の心得を説く必要はあるまい!だが、一言だけ言っておく。毎週2%の兵員が生きて還らない!その2%に入るかはいらないかは、各自の心がけ次第だ!ここが、地獄だと云う事を忘れるな!!」
そして、入隊検査で隊員No.23のキリコから見つかったものが・・・・・。
基地内を彷徨くキリコは、思いがけない人物と再会しました。
ゴウト「キリコ!?・・・・・・・キリコだろ・・・・・・?」
キリコ「ゴウト!?」
ゴウト「はははははっ!間違いねえや!何処から来た?ザクイか?おおかた、イーギオ辺りで、ここの兵隊集めに引っかかったんだろうが!」
キリコ「・・・・・・まあ、そんなところだ。」
互いに再会を喜び合う二人でしたが、ゴウトが何故此処にいるのか気になりましたが、ゴウトから、此処に配属されている高性能ATのATH-06WPのダイビングビートルを仕入れた事を聞かされました。。
キリコ「随分羽振りが良さそうだな?」
ゴウト「良さそう?今じゃ、クメンの未来を占う大ブルジョワよ!後生大事の闇ルートが、やっと役に立つ時がきたんだ。こいつは水中で二時間活動出来る新型だ。どうだ?お前の専用機にせんか?」
キリコ「いや、使い慣れているのがいい、改装してくれ。」
しかし、突然キリコは逮捕され、カン・ユー大尉の元へ連れて行かれます。そこで初めてメルキア軍の衛星監視用ビーコンが埋め込まれていた事を知らされ、カン・ユーから拷問を受けますが、そこへゴウトが頼んだゴン・ヌー将軍によって事は収まります。
そこでキリコはゴン・ヌーとカン・ユーに、自分がパーフェクトソルジャーに関わったがために、メルキア軍から追われる身となった事を話します。
カン・ユー「ピッ、ピーエスだとお・・・・・・貴様!いい加減なことを・・・・・・」
ゴン・ヌー「カン・ユー、もういい。メルキアは、PSを完成させたのか?」
キリコ「俺が見たのは、一体だけだが・・・・・・。」
カン・ユー「閣下、PSとは一体?」
ゴン・ヌー「パーフェクトソルジャーの事だ!」
カン・ユー「と、いいますと・・・・・・?」
ゴン・ヌー「知らんのか!」
キリコ「脳を再処理して、強化した一種のスーパーマンだ。」
カン・ユー「そっ、それを何故云わなかった!!」
キリコ「判る相手になら、話していたさ。」
陰湿なカン・ユーを尻目に、ゴン・ヌーからの質問は続きます。
ゴン・ヌー「キリコ、PSについて知っている限りの事を話せ。」
キリコ「外見は普通の人間とかわらない、性別は女、それだけだ。」
カン・ユー「本当にそれだけか!!」
ゴン・ヌー「よかろう、とにかくメルキアのスパイの疑いは晴れた。」
カン・ユー「しかし、閣下!こいつはまだ何か隠しています!!」
ゴン・ヌー「いずれ聞かせて貰えるだろう。こいつは逃げはせん、フフフフ・・・・・・。」
どうにか釈放され、キリコはゴウトに連れられて行きました。
ゴウト「どうだ?あの大将、なかなかの人物だろうが。」
キリコ「奴はパーフェクトソルジャーについて、ある程度は知っているようだ・・・・・・・。」
ゴウト「そうか・・・・・・だが、気をつけなきゃならんのは、あのカン・ユーの方だ。奴は、蛭のようにしつこい奴だからな。」
キリコ「ところで・・・・・・・何処へ向かっている?」
ゴウト「兵士の休息と云えば、酒と女だ!他に何がある?ホラ見ろ、お仲間だ!」
キリコ「・・・・・・・興味ないな。」
ゴウト「そう云うと思ったぜ。お前に、是非見せたいものがあるんだ・・・・・・。」
ゴウトに連れられてきた所は、ニイタンの外れにある「ファンタムクラブ」という名の酒場でした。
そこで、キリコはウドで別れていた二人とも再会します。
バニラ「よう、とっつぁん!今日はやけに早いじゃないか・・・・・・キリコ・・・・・?キリコちゃんじゃない!!」
キリコ「バニラ!?」
バニラ「ハハハハハハッ!!やっぱりキリコだあ!幽霊じゃねえだろうなあ・・・・・・。」
キリコ「相変わらずだな・・・・・・・。」
バニラ「お~いココナ!ココナ~!!」
キリコ「ココナも居るのか?」
ココナ「えっ?うわああ!キリコ~!!・・・・・・ホントにキリコだ・・・・・・・。」
キリコ「綺麗になったなあ・・・・・・。」
ココナ「えっ?本当嬉しい!!」
バニラ「こら、あまりベタベタするな!」
ゴウト「ははははは、着いたばかりなんだ。」
ココナ「ねえ、何飲む?酒ならなんでもあるよ!」
キリコ「コーヒーでいい・・・・・・。」
ココナ「変わんねえの!」
バニラ「洒落た店だろう?オーナーはこの俺だ。」
ゴウト「金は俺が出した。」
バニラ「まあ、共同経営って形だな。」
キリコ「・・・・・・・名前が気に入らないな。」
バニラ「そう云うなよ、お前に判りやすいようにと思ってよお。」
そんな再会を喜び合う中で、またもカン・ユーの邪魔が入りました。キリコはカン・ユーの指揮する部隊に編入される事になったのを聞かされた直後、突然、轟音を砲声が轟きました。ビーラーゲリラの夜襲でした。
キリコも傭兵である以上、出撃しない訳には行かず、「またな」の一言で、戦地に赴きます。
EX-10のダイビングビートルの部隊に混じって、キリコもマーシィドッグで出動しますが、カン・ユーによって、一人で敵陣に向かうよう命令されます。
案の定、ビーラーゲリラの操るスタンディングタートル部隊の攻撃にキリコは晒され、懸命に応戦します。
キリコが必死に戦っているのにも関わらず、キリコを目の敵にするカン・ユーは全く助けようとはしませんでした。しかし、そんなカン・ユーの部隊も攻撃を受けます。
突然のビーラーゲリラの攻撃で、カン・ユーの部隊は大混乱に陥ります。
そんな中、ビーラーゲリラの青いATが、恐ろしい強さを見せていました。
ブルーATと呼ばれるスナッピングタートルの攻撃は、敵を撃破して戻ったキリコにも襲いかかり、その動きはキリコが忘れられないものでした。
敵の猛攻に押されながらも、アームパンチで相手の火器を潰したキリコは、思わずハッチを開けて身を乗り出します。
キリコ「止めろ!俺だ!!」
だが、ブルーATは関係無く、キリコのATを叩き壊しましたが、爆風から逃れながらも、キリコは相手が誰なのか感じていました。
その瞬間、俺は確信していた。
この反応速度、ただの人間では決して無い!
相手は間違いなく彼女だ!
ウドで別れたきりの、俺のフィアナだ・・・・・・。
遙かな宇宙の闇を走り、破壊の町に曲折し、動乱の泥濘にもまれても、なおきらりと光る一筋の糸。
だが、この糸は何のために?
手繰り手繰られ、合い寄る運命(さだめ)。
だが、この運命は何のために?
炎熱のクメンに、第二幕が開く。
次回「疑惑」
まだ、黒子は姿を見せない。