本日の 「読売 歌壇」 に 掲載された 短歌のご紹介です。

 

◇ 栗木 京子 選

 

大縄の 端っこだから 高く跳ぶ

なんて豊かな 決意の子らは

 

名古屋市 山本 望

 

【評】

大縄跳び。

 

両端に近いパートの人は 縄に 引っ掛からないよう 高く 跳ばねばならない。

 

しかし 真ん中の人ほどは 目立たない。

それでも 頑張る子らの姿が 輝いて見える。

 

 

「大縄跳び」 とは これまた 懐かしい(笑)

 

筆者も 小学生の頃、学校の体育館で よくやりました。

 

それで 縄を回す人は、端っこで跳んでいる人の足が引っかからないように、大きく 回すんですね。

 

肩を中心に、腕で できるだけ大きな輪を 描くように。

 

それで、回っている縄に 子供たちが 次々と 入っていくのも、ちょっとした コツが必要でした。

 

北九州に お住いの 川柳作家、お鶴さんに こんな 気の利いた一句があります。

 

高速と 縄跳び うまく 入れない

 

次の歌です。

 

相席の 男は卓に古ぼけた

原書を置いて 新蕎麦食えり

 

三原市 上脇 立哉

 

「原書」 と いうからには、横文字の本なのでしょう。

 

果たして この男性、「粋」 と 言うべきか 「キザ」 と 言うべきか(笑)

 

「何も そば屋で、新そばを 食いながら 読まなくても」 と 思う筆者は ヒネクレ者なのでしょうか(笑)

 

 

◇  俵 万智 選

 

長ねぎを 落とした人を追いかけて

リレーのバトンみたいに渡す

 

船橋市 田中 澄子

 

【評】

描写が とても的確で、情景が くっきり浮かぶ。

 

リレーのバトンという比喩も、リアルでありつつ、どこか ユーモラス。

 

サザエさんの世界を思わせて 楽しい。

 

 

スーパーなどで買った長ネギを、路上に 落としてしまう ―― 筆者も 一度、目撃したことがあります。

 

ママチャリに 乗った ご婦人が、買い物かごから 長ネギの束を パサッ と 落としたのです。

 

筆者は すぐさま 駆け寄って 「奥さん。落としましたよ」 と 手渡そうかと思ったのですが、照れくさいので止めました(笑)

 

「まさか、筆者の気を引くために、わざと 落としたのかな」 とは、さすがに 思わなかったですけども(笑)

 

 

◇ 黒瀬 珂瀾 選

 

職退きて 遠くなりゆくネクタイを

忘れさせぬと 葬 (とむら) いの来る

 

相模原市 荒井 篤

 

【評】

作者にとって ネクタイは 社会とのつながりを示す物なのだろう。

 

たまの葬儀が、かつての 人との関係を呼び覚ます。

 

今後は、ネクタイの無い日々を 楽しんでください。

 

 

この一首、共感します。

 

確かに 退職後は、ネクタイを 締めるのは 冠婚葬祭の時 くらいなのでしょう。

 

もっとも近年は 「クール ビズ」 と 称して、夏場は ノーネクタイとするのが 当たり前になりましたが。

 

それにしても、久しぶりのネクタイ。

 

その結び方は 指が 覚えているようです。

 

毎日、毎日、締めていたからですね(笑)

 

〔 了 〕