【Campus新聞】
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110816/plc11081613130008-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110816/plc11081613190009-n1.htm
昨年9月、沖縄県・尖閣諸島海域での海上保安庁巡視船への中国漁船衝突事件は、日本が領土的な野心を抱く国々に囲まれている危うい現状を浮き彫りにした。日本はこのままで大丈夫なのか。誰が日本の領土を守るのか。危機感を抱く全日本学生文化会議の学生記者たちが、尖閣事件の最前線、石垣島に飛んだ。彼らは現地で何を学んだのか。今週のテーマは「東シナ海 波高シ」とした。
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□今週のリポーター 全日本学生文化会議 学生記者
≪「領土・国民を守る」国の姿勢が必要≫
昨年(2010(平成22)年)9月7日に尖閣諸島海域で起きた海上保安庁巡視船への中国漁船衝突事件以来、「尖閣を守れ!」とのわが国の世論は高まっている。そうした世論の高まりを受けて、石垣市は1月14日を「尖閣諸島開拓の日」とする条例を制定した。尖閣諸島を守る意志を国際社会にアピールするためだ。
尖閣狙う「華人保釣連盟」
高まる日本の世論に対抗して今年(2011(平成23)年)1月2日、尖閣奪取を主張する中国人活動家らが香港で「世界華人保釣連盟」を結成。この連盟は日米沖縄返還協定が結ばれた6月17日を「釣魚島の日」と定め、香港の雑誌において1000隻の船団で尖閣に押し寄せる計画を発表した。
中国政府もフェリー並みの巨大な漁業監視船を尖閣海域に派遣し、中国海軍の軍艦や潜水艦までが沖縄周辺に出没するようになってきている。
こうした日中間の緊張の高まりを石垣市民は、どのように見ているのか。私たちは、尖閣諸島に近い石垣市に赴き、調査を行った。
1229軒を戸別訪問
私たち学生4人は6月15日から17日までの3日間、午前10時から午後5時頃まで、32度前後の炎天下の石垣島を歩き回って戸別訪問した。その数1229軒。平日の日中のため8割が不在だったが、それでも250人近い方からお話を聞けた。
訪問して驚いたのは「中国が1000隻の船団で尖閣に押し寄せる」「沖縄本島と宮古島の間を中国海軍が通過した」などといった情報を、多くの石垣市民が知らないことだった。強い危機感を抱いているに違いないと思っていた私たちは驚いたが、気を取り直して昨今の中国の動きを伝えると、「怖いわね~」「国には頑張ってもらわないと」といった声が返ってきたが、ぴんときている感じではなかった。
もちろん、危機感を示す方もいた。大東亜戦争を戦ったという92歳の男性は、「尖閣諸島を守るのは当たり前じゃないか」とかくしゃくと話された。また、40代の女性は「行政関係者らは中国から圧力がかかっているとの話も聞きます。それに屈してはいけないと思い、私たちも尖閣を守るための呼びかけを行っている」と話された。
尖閣諸島と同じ「登野城」という住所に住んでいる50代の漁師は「中国の漁船が尖閣海域に来ているので、怖くて安全に漁ができない」と語った。また尖閣諸島沖で遭難したことがある60代の漁師からは「尖閣海域の波は荒く、高さ5メートルに上ることもある。安心して操業するためにも避難港や灯台を整備してほしい」と切実に訴えた。
政府への不安と諦め
このように石垣市民約250人と話した結果、尖閣問題についての反応は大別して3つのグループに分かれた。
大半は、そもそも尖閣諸島をめぐって日中間の緊張が高まっていることをよく知らなかった。地元の中山義隆市長が尖閣上陸に意欲を燃やし、石垣市議会が「尖閣諸島開拓の日」を定めるなど、石垣市の行政や議会が活発に動いているだけに、これは意外だった。
第2のグループは、尖閣問題をある程度知っている人たちで、尖閣海域で漁をする漁業関係者が多かった。中国漁船の違法操業を取り締まらない日本政府に対して「きちんと取り締まって、日本の漁船が安心して操業できるようにしてほしい」と願っている人たちだ。
第3のグループは、尖閣問題について知ってはいるが、あまり騒ぐべきではないという人たちであった。
例えば50代の女性は「中国は怖い。抗議してミサイルでも飛ばされたら困るから、冷静にしている」と言い、60代の男性も「漁師の友人がいる。漁ができず困っているが、中国を刺激すると何をされるかわからない。だから尖閣問題については慎重に発言すべきだ」と話していた。こうした発言の奥には、「どうせ政府は自分たちを守ってくれない」という不安や諦めが潜んでいるように感じた。
「われわれは見捨てられているのではないか」という不安を抱えている石垣の人々と会い、私たちは「いざとなれば、絶対に国は自分たちを守ってくれる」という安心感を抱かせるような日本にしなければとの思いを強くさせられた。
≪「米軍基地撤去=平和」ではない現実≫
私は現在、沖縄国際大学に通っている。福岡出身で、大学入学と同時に沖縄に住むようになったのだが、そもそも沖縄に対しては「観光地」というイメージしかなかった。しかし、大学で安全保障や沖縄の歴史を勉強するようになり、また地元の新聞を読む中で考えさせられることがあった。
■地元の主張に違和感
新聞には、沖縄戦で家族を失った方の悲しみの声や悲惨な体験談が毎日のように掲載されている。「二度と戦争の犠牲になりたくない」という叫びは、私の胸に突き刺さった。
沖縄の方々が再び犠牲にならないためにどうすればいいのか。沖縄の大学に通う者として考えたいと思うようになった。だが、学べば学ぶほど地元の主張には違和感を覚えた。
大学で出会った沖縄出身の友人たちは、戦艦大和や特攻隊が沖縄を守るために編成されたことを知らなかった。また沖縄戦については「日本兵が沖縄県民を苦しめた戦い」だと思い込んでいた。さらに地元の新聞や大学では「沖縄が戦争に巻き込まれないためには基地を撤去すべきだ」との主張ばかりが唱えられている。
では尖閣諸島問題をめぐって日中間の緊張が高まりつつある中、普天間基地を撤去すれば、中国艦隊は沖縄本島と宮古島の間を通過するような示威行動をやめるのだろうか。尖閣諸島沖で漁をする漁師が安心して操業できるようになるのだろうか。そんな疑問が出てきた。
■きちんとした議論を
沖縄国際大学は2004(平成16)年、米軍ヘリ墜落事故の現場となったこともあって、「基地を撤廃すれば、沖縄の安全が守られる」との主張が横行しているように見える。「学問の府である大学でこそ、きちんとした議論がなされるべきだ」-そう思い、友人や後輩とともに「沖縄の安全保障を考える学生の集い」を(2011(平成23)年)6月14日、沖縄国際大学で開催した。
集いでは、あえて米軍基地撤廃論に反対の立場をとる沖縄出身の安全保障の専門家で、沖縄国際大学客員教授の惠(めぐみ)●(=隆の生の上に一)之介氏に講演をお願いした。地元メディアの論調に違和感を持っていたのは私だけではなかったようで、当日は約70人の参加者が集まった。
惠氏の講演では、3つの「事実」が印象に残った。
第1に1990年、フィリピンのスービックから米軍が撤退したことで、中国海軍が南シナ海に進出してきたことだ。
■「米国に守られてきた」
第2に、昭和天皇の話だ。当初アメリカは沖縄を永久統治するつもりでいた。そのアメリカに対し昭和天皇は「ソ連や中国が沖縄の領有権を主張してくるだろうが、敗戦日本に沖縄を守る力はない。ソ連や中国から守るためにも、一時的にアメリカの占領下に置いてほしい」と、沖縄に対するわが国の潜在主権を残す形での統治を要請されたのだという。
第3は、戦前46歳だった平均寿命が、復帰後には80歳にまで伸びた話だ。この背景にはスーパーナースの存在があるという。これはアメリカの占領中に、沖縄の女性たちが米軍の看護教育を受けたことで、沖縄の医療レベルが飛躍的に向上したためだ。
「二度と戦争の犠牲になりたくない」。その沖縄県民の声に応えるには、これら地元メディアが取り上げない事実を発掘しつつ、いかにすれば自分たちの手で日本の安全を守ることができるのかを、国家の最高学府である大学で、議論していくことだと、私は思っている。(今週のリポーター:全日本学生文化会議 学生記者(沖縄国際大学4年) 田尾憲司/SANKEI EXPRESS)
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【編集後記】
■石垣の人が安心して暮らせる日本に
★昨年9月、留学先のアメリカで尖閣事件を知った。中国人船長の釈放に「これで日本の権威は失墜してしまう」との危惧を抱いた。夏季休業を利用して石垣調査に参加したが、一軒一軒を訪問する中で島民の切実な思いに触れた。アメリカに戻ったら、石垣での体験を友人にも話したい。(全日本学生文化会議 学生記者(米タフツ大学2年) 敷島葵)
★普段はインターネットで情報を得ている私にとって、自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の耳で聞くことの大切さを実感した。特に漁師さんのお話は新鮮だった。テレビやネットでは得られない生の声を聞くことができ貴重な体験となった。(全日本学生文化会議 学生記者(愛知学院大学2年) 小池悠祐)
★日照りが強い炎天下の石垣島を一日中歩き回るのは、本当に根気の要る活動だった。しかし石垣島の人々に励まされて取り組むことができた。この石垣の人々が安心して暮らせるような日本にしていきたい。(全日本学生文化会議 学生記者(同志社大学3年) 齊藤史浩)
★私は奄美大島出身のため、石垣島が直面する危機をひとごとと思うことができない。戸別訪問を通して耳にした「政府は守ってくれるのか」との不安に共感するところがあった。(全日本学生文化会議 学生記者(長崎大学3年) 田原一樹)
SANKEI_EXPRESS__2011(平成23)年8月16日付EX(11面)
【Campus新聞】中国漁船が衝突した巡視船「よなくに」をバックに「尖閣は日本のもの」
とアピール(全日本学生文化会議撮影)
【Campus新聞】ユーチューブに投稿された中国漁船衝突事件の映像
【Campus新聞】石垣市に立つ「古賀辰四郎尖閣列島開拓之碑」
=2011(平成23)年6月16日、沖縄県石垣市(全日本学生文化会議_学生記者撮影)
【Campus新聞】沖縄県・尖閣諸島の魚釣島=2011(平成23)年6月19日、共同通信社ヘリから(共同)
【Campus新聞】石垣島(沖縄県石垣市)、尖閣諸島(※尖閣諸島は日本_沖縄県石垣市登野城2392)
=全日本学生文化会議_学生記者





