中国の空母試験航行
抑止へ日米連携カギ 防衛省・自衛隊
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110812/plc11081200510004-n1.htm
防衛省・自衛隊は、ワリヤーグの試験航行を冷静に受け止めており、むしろ現在建造中の中国初の国産空母を「真の脅威」としてその動向を注視する。2015年ごろをメドに第1列島線(九州-台湾-フィリピン)内の制海権確保を狙う中国は、国産空母をその海洋戦略の中核に位置付けているからだ。
「国産空母は早ければ14年ごろ就航するはずだ」
海自幹部はこう打ち明ける。ワリヤーグは米軍の警戒網が薄い南シナ海と黄海で試験航行を続けるとみられるが、国産空母は就航直後から遠洋に出す公算が大きい。その時点でワリヤーグも作戦用に改め、空母2隻態勢で第1列島線内を「中国の海」とし、米空母戦闘群の「接近阻止」をもくろんでいるとされる。
遠洋訓練も空母を中心にした陣形となる見通しだ。空母周辺の上空で航空優勢を確保するため、地上配備の戦闘機が支援する必要があり、中国空軍はレーダーに捕捉されにくい最新鋭ステルス機を17年に実戦配備する予定だ。
この時期までに日米はどんな態勢を構築できるか。
まずは空母を中国沿岸部に封じ込める上でカギを握るのは潜水艦となる。海自は現行の16隻から20隻台に増強する方針だが、いかに日米の潜水艦作戦能力を向上させるかがカギとなる。
中国空母のスキージャンプ台方式の欠点を突くことも重要となる。この形状の空母はE2Cのような早期警戒機を艦載できず、遠洋での上空監視能力が低下するからだ。超低高度で接近する戦闘機の対艦ミサイルによる攻撃には脆弱(ぜいじゃく)だとされ、航空自衛隊の攻撃能力のさらなる向上が喫緊の課題となる。
中国の接近阻止に対し、米軍は海・空戦力を一体運用する「統合エアシーバトル」で対抗する構え。米空軍はグアムの戦略拠点化を進め、ステルス戦闘機のF22、F35を配備するとみられる。嘉手納基地(沖縄)にF22、三沢基地(青森)にF35の配備も想定する。空自は空中給油能力をさらに充実させ、米空軍の作戦支援機能を高めることが必要となる。
だが、空自の次期主力戦闘機(FX)は17年3月までの完成機納入を予定しながら、いまだに選定が進んでいない。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題も先送りされたまま。これら政治案件が膠着(こうちゃく)したままでは、対中抑止に大きな穴が開きかねない。
(半沢尚久)
