帰りに用もないのに書店へ立ち寄る。
ふと目をやると、小平邦彦『ボクは算数しかできなかった』(岩波現代文庫、2002年)という本が積み上げられている。購入する御仁があとを絶たないのだろう。
このタイトルを見た瞬間、「ボクは算数もできなかった」という過去を思い出した。
算数どころか、国語もダメ、理科もダメ、体育、音楽、図工もだめ。
唯一、暗記科目である社会が自分の味方であった。
どうしようもない小学生である。
この先、中学、高校へ行くとどうなるのか、不安感がつのる毎日であった。
そんな少年がやがて青年となり、諸般の事情により精神疾患を負うこととなる。
青年は50歳まで生きている自分がイメージできずにいる。
この先、どう生きるのやら。
そもそも生きているのか。
処理しようのない不安感に襲われる。
不安にさせた本は当然、購入していない。