労働保険担当職員Iです。
なんとか第3回までたどり着きましたが、ここからちょっと難しくなります。
まずは例によって前回のおさらいから。
前回は
たとえ1日でも、1時間でも賃金を受け取って働いたら、その人は労働者として労働保険の被保険者となる
というお話でした。
今回は労災保険のお話。
労災(ろうさい)って言葉は略称として浸透しすぎて元の言葉が忘れられがちです。元は労働者災害補償保険法や労働安全衛生法などで定められた労災保険や労災事故を指します。
さて、労災保険の加入は事業主の義務です。労働者が居る場合、事業主はその事業所ごとに必ず労災保険に加入しなくてはいけません。
労働者とは?は前回しましたね?
たとえ1日でも、1時間でも賃金を受け取って働いたら、その人は労働者として労働保険の被保険者となる
パートだから、アルバイトだから、あの人は週一日来てもらっている「お手伝い」だから…
こういう理由で労災保険に加入しないままになってませんか?
「おう!ワシんとこはちゃぁんと入っとるで!現場は危ないからな!」と思った社長さん、本当に大丈夫ですか?
先ほどの一文を再掲します。今度は強調するところを変えますよー。
労災保険の加入は事業主の義務です。労働者が居る場合、事業主はその事業所ごとに必ず労災保険に加入しなくてはいけません。
ところで事業所ってなんなんでしょう?正しくは「労働保険適用事業所」といいます。労災保険だけを指す場合には「労災保険適用事業所」雇用保険だけを指す場合には「雇用保険適用事業所」と呼びます。うーんややこしい。今回は労災保険の話なので「労災保険適用事業所」ですね。長いのでこの先の縮めて単に「事業所」と呼びますね。
さて、事業所とは大まかにいえば
「事業をしている場所」
「労働者が働いている場所」
のことです。「事業所の所在地=会社の所在地」の場合が多いですが、必ずそうとは限りません。
当組合に加盟する建設業の皆さんの場合は、工事現場で働く職人さんが多く勤めています。このように工事現場で働く人の事業所は会社の所在地ではなく実際の工事現場となります。このように、会社の場所以外にも事業所がある場合もあるわけです。
ところで、工事現場での労災保険に入っていないという建設業の社長さんは居ないと思います。所謂「現場労災」と呼ばれるものなのですが、この現場労災は、工事にかかわる労災だけが対象となります。
では、建設業で会社の事務所で働いている方は居ませんか?事務員さんや設計や営業の方は居ませんか?そういう方が居る場合は、現場労災ではカバーできませんので、事務所・倉庫のための労災に加入しなくてはいけません。よくあるのはパートの事務員さんがいるケースです。この場合、雇用保険の対象にならない働き方をしていることが多いので、こちら(労働保険事務組合)では把握できません。
しかし思い出してください。
- たとえ1日でも、1時間でも賃金を受け取って働いたら、その人は労働者
- 労働者が居る場合、事業主はその事業所ごとに必ず労災保険に加入
- 現場労災は、工事にかかわる労災だけが対象
なんです。つまり、パートの事務員さんを雇ったら、雇用保険の対象ではない場合でも事務所の労災保険には加入しなくてはいけないのです。
もちろん、建設工事現場に比べて事務所で労災事故が発生する可能性はずっと低いですが、毎年一定数の転倒事故が事務所で発生しています。また、通勤災害の危険は現場であろうと事務所であろうと変わりません。
いざ事故が起きた際に労災保険未加入となれば、大なり小なり労基の指導はありますし、労働者に支払われた保険金(医療費も含む)を労災保険ではなく事業主が負担することになりかねません。
事務所の労災保険の保険料は、現場労災に比べて低額ですし、事務所労災には忘れず加入しましょう。
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