【ママさんバレーガイドライン2025「VENUS」 誕生!】
花冷えの奈良市に、全国のママさんバレーボーラー有志が集った。全国大会の日程や運営方式を話し合う、普及委員会、この日はもう一つ大きなテーマがあった。会場の会議室の壁面のモニターに映し出されたのは、「VENUS」の文字。
提案されたのは、新しい時代のバレーボールの形だった。中西壽子会長は言う。「コロナが絆の大切さを逆に教えてくれた。私たち連盟の存在意義はバレーボールを通してその大切さを確認し発信することにある。新しいガイドラインで、心あわせをしましょう」
21世紀も4分の1が過ぎ、日本は少子高齢化社会から少子高齢社会に移った。あと25年で、日本の総人口は1億人を割り込む。出生率の推移は予想を下回り、人口減はさらに加速する見込みだ。半世紀もの間、すべての女性に門戸を開きつつ、年齢別大会の創設などで高まるシニア層のニーズにも応えてきたママさんバレーボール界も、そのトレンドにあっては旧来の取り組みでは十分とは言えない。競技人口の大幅な減少に備えて、数年前から全国連盟は新しい時代にマッチするプランを練ってきた。
それは、近年高まる「チームに人数が集まらない」という各地からの不安の声に応えることでもある。名誉総裁の高円宮妃久子殿下のアドバイスもあり、この日、提案の運びになったのは、ママさんバレーボールの新しい指針「ガイドライン2025」。その愛称が「VENUS」。女神を意味するこのガイドラインでは、1チーム9人で行う現行の試合方式に加え、5人で行う競技方式が解説されている。1チームは5人、サーブは1本、1セット15点、監督やコーチもコートに立てる――と選手数減に直面する現場の声を汲みとった方式が盛り込まれた。
人口減に追い打ちをかけたコロナ禍を経て解散に追い込まれたチームも少なくなく、「待ったなし」とも言える情勢に応える新しい仕組みだが、これは、2010年に完成したガイドラインを否定するものではなく、選択肢が増えたという理解がふさわしい。
たとえば現状、1チーム9人ぎりぎりで活動しなければならないチームの場合、一人加えるだけで紅白戦ができる。また15点制の採用によってゲームがスピードアップして、大会における1日あたりの消化試合数も増える理屈だ。サッカーやラグビーなど選手数が多いチームスポーツも、人数減に舵を切りつつある現状もふまえ、高円宮妃久子殿下の賛同も得ての提案になった。「選手数を減らすことで、競技人口を増やすのが狙い。日本固有のママさんバレーボールという文化を大切に維持することを考えた結果」と中西香専務理事は話す。
ママさんバレーボールは既婚・未婚や子どもの有無を問わず、18歳以上のすべての女性が参加できるスポーツとして、時代に即して変化してきた。しかしバレーボールを通じて人と人の絆をはぐくみ、そこからリーダーシップを備えた人材を生み出すという精神は変わらない。2つのガイドラインは、ママさんバレーボーラー一人ひとりが作り出して大切に守るべき憲法というべきもの。この日の理事会を受けて最終調整された新憲法にある競技方式は、8月の全国大会でデモンストレーションをお披露目の予定だ。「VENUS誕生」が楽しみだ。
取材・文/伊東武彦


