空の青み(河出文庫):ジョルジュ・バタイユ | 夜の旅と朝の夢

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空の青み (河出文庫)/ジョルジュ・バタイユ

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以前紹介した『眼球譚』の作者ジョルジュ・バタイユ(1897~1962)の小説です。二見書房からの出版されている「ジョルジュ・バタイユ著作集」の『死者/空の青み』から『空の青み』だけを文庫本化したものです。本作は、翻訳者は別ですが、晶文社から『青空』というタイトルでも出版されていて、多分いまでも容易に手に入ると思います。

『眼球譚』ではグロテスクな描写が多かったのですが、本書にはそういった描写は影を潜めているので、『眼球譚』よりは万人受けするものだと思います。しかし、根底に流れる黒い魂みたいなのは似ています。暴力や性的な描写が隠れている分、かえって不気味とも言えるかもしれません。

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美人妻と別れた男が下降線をたどりながら彷徨う。どこか非現実的な女性達が彼のもとに現れては去っていく。彼女たちは死とエロスの象徴なのか? 人を引きつけるようなストーリーは特にない。主人公は終始混乱していて、それを反映するかのように、混乱した構成だ。二部構成だが、一部は2頁程度で、二部は200頁程度、一部の前についた序章は15頁程度。この不均一な構成は明らかに意図したものだ。

『ばからしかった。叫びだしたいぐらいばからしかった。だが、そのばからしさには敵意があった(160頁)』

見てくれの秩序に対する呪詛が響く。